実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 川底をたくさんの砂が覆うと
底生魚はどうなりますか?



A 底生魚は少なくなります。
川底のすきまの減少が一因と考えられます。

● 背景と目的

 ダム下流では土砂量が減少するため河床の状況が変化します。この状況を緩和するために、土砂を下流に仮置きし洪水時に流したり、バイパスによって土砂をダム下流に迂回させたりする方法が検討されています。土砂の供給により古い付着藻類が剥離される効果などが見られますが、人為的な土砂の供給は自然状態とは異なる点もあるため、生物への影響を評価しておく必要があります。ここでは、仮置きされる土砂が砂などの細粒成分に偏りやすい点に着目し、砂の供給の有無による魚類密度の変化を追跡調査し、その影響を評価することを目的としました。

● 方法

 矢作第二ダムから0.7km下流の地点で調査を行いました。調査地点に砂を供給する区間と供給しない区間を設置しました。それぞれの区間において、底生魚(主にヨシノボリ類)の密度と環境要因(流速、水深、土砂の粒径サイズ)について、砂を供給する前後で調査し、砂の供給による影響を評価しました。

● 結果と考察

 底生魚の密度は、砂を供給する前にはどちらの区間でも同じでしたが、供給後には砂を供給した区間で密度が0となりました(図1A)。環境要因については、砂を供給すると流速が増大し(図1B)、水深は減少し(図1C)、細粒土砂(〜2cm)の割合が高まる(図1D)という傾向が見られました。これらの結果は、河床表面にあった石を埋没させるほど多くの砂が堆積し、その表面を水が速く流れるようになったことを示しています。流速や水深などの影響については今後検討が必要ですが、底生魚が川底にある石の下のすきまを利用すること(写真1参照)を考えると、生息空間である川底のすきまの減少が底生魚の減少の一因と考えられます。
 この例のように、水深を浅くするほど大量の土砂が川底を覆うと、短期間であっても生物への影響が無視できなくなる可能性があります。今後、土砂がどの程度覆うと影響が見られるのか検討する必要があると考えられます。


担当:小野田 幸生
図1 砂を供給する前後における各変量の変化
     青は「砂の供給なし」、赤は「砂の供給あり」を示す
写真1 石の下に隠れるヨシノボリ(滋賀県安曇川にて撮影)


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