実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 維持管理が容易となる
中小河川の工夫を教えてください。



A 人を川へ近づけ、
利用し易い川とすることも1つの方法です。


● 背景と目的

 日本の河川延長のうち半分以上は、都道府県が管理する中小河川です。中小河川の多くは、土地制約の問題から両岸の護岸角度が急で川に近づけない場合や川幅いっぱいに水が流れている場合など、河道として単調になりがちです。また、改修後しばらくすると河道全体に草が覆ったり、河床低下に伴い護岸の延長(根継ぎ)の必要性に迫られたりするため、維持管理費の増大に繋がっています。このことから、今後は治水安全性の向上、環境への配慮に加えて、維持管理の容易さも目指し、総合的な観点からの川づくりが求められています。本研究では、手始めとして、中小河川を複数のタイプに分け、どのような河道タイプが維持管理の容易さ(主に草刈り・土砂除去など数ヶ月〜1年程度の難易度が低い管理)に繋がるかについて明らかにすることを目的としました。

● 方法

 まず、岐阜県下の31河川(63箇所)の現地調査から(図1)、河道の地形形状の観点から河道タイプの分類を行い、GISや流出解析モデルなどを用いて、調査地点の標高、勾配、ピーク流量等を計算・整理しました。次に、河川管理に関して、河川管理者に客観的情報(草刈り頻度、行政による草刈りの有無、土砂除去の回数)と主観的情報(利用頻度、管理の容易さ)についてアンケートを実施し、統計的手法(主成分分析)により結果を整理しました。

● 結果と考察

 河道タイプは図2のように6つのタイプに分類されました。この中で自然河道に見られず、中小河川の特徴的なタイプは、平岩川型と拘束バー型があげられます。両者は、いずれも川幅が狭く、勾配の強い箇所に位置することが多いため、河床にかかる力(摩擦速度)が増大し、被災危険性(河床低下にともなう護岸被災など)が高い傾向にあります。とくに、平岩川型は、摩擦速度が河床面に直接かかるため、改修後の河床よりも河床低下が著しく進行していました。
  また、図3から維持管理のし易さと草刈り頻度,住民利用の多さに高い相関がありました。とくにテラス型やバー型のタイプで維持管理が容易であると感じられているようです。この結果は、人が利用できる川づくりをすると、維持管理が容易になることを示す可能性があります。今後は、さらに河道タイプと流域特性の関連性を調べ、被災危険性を減少させる川づくり、維持管理の容易さなどに配慮した川づくりについて提案して行きたいと考えています。


担当:大石 哲也、 高岡広樹
図1 調査地点一覧図
図2 河道タイプ
図3 全調査項目に関する主成分分析 


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