実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 護岸表面のテクスチャーは、
どのように評価すればよいのでしょうか?



A 護岸表面の細かいギザギザや大きなデコボコなどの
物理特性を用いて評価できそうです。


● 背景と目的

 護岸が露出する場合の景観上の条件として、「低明度であること」、「適度に粗く、凹凸(陰影)のあるテクスチャーを付加すること」が求められています。しかし、具体的な数値目標が設定されている明度に対して、テクスチャー(素材の持つ質感、肌理)は概念的な目標にとどまっており、既存の護岸ブロックの評価方法や新しい護岸ブロックを開発する上で課題となっています。そこで、既存の護岸ブロックに使用されている代表的なテクスチャーについて、印象の把握と詳細な物理形状の測定を行い、テクスチャーの特性に関する分析を行いました。そして、人が受ける印象と物理特性の関連性を調べることにより、テクスチャーを具体的に評価するための方法を提案します。

● 方法

 既存の護岸ブロックとして主に用いられているテクスチャー8種について供試体を作成しました(写真1)。次に、人が感覚的にテクスチャーをどう捉えているのかを調べるために、被験者を対象に“触った感じ”と“見た感じ”について「ざらつき」、「凹凸」、「粗さ」の3つの評価尺度に関する印象調査を行いました。ここで、3つの評価尺度の間にどのような傾向があるか、テクスチャーの間で回答の傾向に違いがあるかについて解析を行いました。また、供試体表面の物理形状を1mmピッチで測定し、各テクスチャーの物理特性を調べて、3つの評価尺度との関連性を分析しました。

● 結果と考察

 テクスチャーの評価に用いた印象に関する3つの尺度は、評価軸として異なる特性を示し、それらの違いに基づいてテクスチャーの種類が分類される傾向が見られました(図1)。例えば各テクスチャーの中で半割は一番粗い印象を持たれ、砂面は一番ざらついている印象をもたれているといった結果でした。
 また、印象に関する凹凸の有無の評価尺度はテクスチャーの物理特性と関連していることが分かりました。「ざらつき」という印象は、細かいギザギザした凹凸の有無と関連があり、「凹凸」は、高低差の大きいデコボコした凹凸の有無と関連がありました。そして、「粗さ」は、その両方と関連があることが示唆されました(図2)。
 以上より、細かいギザギザした凹凸の有無と高低差の大きいデコボコした凹凸の有無という2つの物理特性を測定することでテクスチャーを評価できると考えられます。今後は、細かくギザギザした凹凸と大きくデコボコした凹凸の高低差に注目して、様々な凹凸を持つ模型(ベンチマーク)を作製し、現場にてこれらの模型と護岸ブロックのテクスチャーを比較することで護岸ブロックが有するテクスチャーを評価していく予定です。


担当:尾崎 正樹、 大石 哲也、 森 照貴
写真1 調査に用いた供試体
図1 主成分分析結果の平均値及び標準誤差
    
矢印がそれぞれの方向に向かうほど、テクスチャーが
     ざらついている、凸凹の高低差が大きい、粗い印象であることを
     表しています。また、点線で囲った各テクスチャーが
     近い印象を持たれている事を示しています。
図2 評価尺度と物理特性の関連性 


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