実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 中小河川の河床地形は何によって決まりますか?

A 改修時に設定した断面の川幅と
水深の比によって河床地形が異なります。

● 背景と目的

 中小河川では、河川断面を単断面とし、川幅を固定し、河床を堀下げ、両岸を立ち護岸とする改修が多く行われています。しかしながら、改修後に生じた出水によって極度に河床洗掘が生じる例も見られます。このような状況に鑑み、川幅を拡げ、洪水を安全に流下させるとともに、河床が洪水流から受ける力(せん断力)を下げる改修が基本方針の1つとなっています。
 そこで、本研究では、中小河川を対象に、洪水時に河床に働くせん断力と川幅、水深について整理し、河床に形成される地形との対応について検討しました。


● 方法

 まず、岐阜県と三重県の中小河川のうち82河川104地点について、現地調査を行い、川幅(B)を測定するとともに河川景観の写真撮影を行いました。次いで、標高データからGISを用いて調査地点の流域面積、勾配( I )などを算出し、1年確率のピーク流量を計算し、ピーク流量時の水深(H)やせん断力( *)について整理しました。最後に、BI0.2/H(ここでは、川幅水深比と呼ぶ)と河床地形との対応について考察しました。

● 結果と考察

 図1は、調査地点におけるせん断力と川幅水深比との関係を示しています。図中の実線は従来の研究成果による砂州の発生領域区分を表しています。調査地点の約6割は砂州非発生領域に位置していました。図2は、様々な川幅水深比における典型的な河川景観を示しており、1〜8の数字は、図1中の番号と対応しています。川幅水深比が5程度以下の河川の中で、せん断力が相対的に大きな河川は、殿川、明智川、妻木川にみられるように、河床に土砂や植物が少なく、瀬・淵もなく、水域が薄く広くなっている傾向が見られました。一方、せん断力が相対的に小さくなると、千旦林川のように、河床に土砂や植物が目立つ河川が多くなりました。
 川幅水深比が7以上になると単列砂州領域となり、辛沢川や藤川のような河床に砂州が発達し、瀬・淵の形成が見られるようになりました。川幅水深比が25以上になると、鳥井戸川、三滝川のように砂州の発達、瀬・淵の形成もみられますが、徐々に木本も見られる河川が多くなっていました。このように、洪水時に作用するせん断力と川幅水深比によって典型的な河床地形が異なることが分かりました。


担当:高岡 広樹、 大石 哲也、 原田 守啓
写真1 調査地点におけるせん断力と川幅水深比との関係
図2 川幅水深比と典型的な河川景観と河床地形


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