実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 河川生物の生態は、どうすれば効果的に
伝えることができるのでしょうか?



A 河川特有の事象を整理して、
必要な素材や手法を組み合わせることが必要です。


● 背景と目的

 河川には縦横方向のつながりや、水面下における生物の行動など、フィールドで捉えにくい自然現象が数多くあります。これらの事象を広く一般の人が理解し、河川環境を考えるきっかけを作るには、情報を分かりやすく整理して伝えることが重要です。ここでは魚道を題材とし、映像を使ってこれらの現象を効果的に伝達する方法について検討しました。

● 題材の特徴

 魚道とはダムや堰などの河川横断構造物によって生物の移動が妨げられないように設置される構造物です。サケ、アユ等の回遊魚を始め、河川に生息する生物にとって上流〜河口のつながりは重要ですが、その分断化の現状や魚道の存在は一般にはあまり知られていません。そこで今回は@「魚道の構造と機能」、A「魚道内の流れに対する生物の反応」を効果的に伝えるための2種の映像を開発しました。

● 映像の開発

 映像@、Aに必要な要素を、河川の時間的・空間的事象から表1のように整理しました。@「魚道の構造と機能」で伝えるべき空間的要素は、空撮や河川の縦断面など複数のアングルを組み合わせることで説明できます。また時間的要素としては、魚道が実際に利用される場面に加え、季節による魚種の変化を伝えることも重要です。そこで映像@では河川における魚道の所在、魚道施設、魚類の利用状況の順に解説を付けて構成し(扉写真左列)、同じパネル内で3箇所の魚道施設を比較できるように映像を組み込みました(写真1)。
 一方A「魚道内の流れに対する生物の反応」を伝えるには、遡上行動を最もよく表すアングルを選び、遡上前後の行動や水流についての詳細を観察できる構成(扉写真右列)と環境を作ることが重要です。実際に近い状況を作り出すため、遡上を横から観察する疑似観察窓を実物大で表示する映像システムを開発しました(写真2)。


● まとめ

 映像の利用者らは、「魚道の存在や意義を知った」、「魚にとって魚道が必要なことが分かった」、「遡上時の魚の行動が分かった」等の新たな気づきを得ていました。本事例のように河川環境に関する情報を整理し適切な方法で分かりやすく提示することは、より多くの人が環境への意識を高めていく上で、今後ますます重要になると考えられます。

担当:渡辺 友美
表1 映像@、Aに必要な河川事象の時間的・空間的要素
写真1 映像@「魚道の構造と機能」
図2 写真2 映像A「魚道内の流れに対する生物の反応」 


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