実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 河川環境を定量的に
評価するツールはありますか?


A 流況計算ソフト(iRIC)と連携した
生物の生息場を評価できるツールがあります。


● 背景と目的

 川の地形変化やそれに対応する生物の応答など、学術分野における知見の集積は進んでいますが、これを河道計画や設計に取り込むツールの開発や仕組みづくりは遅れています。ここでは、河道計画・設計段階での活用を視野に入れ、簡便に生物の生息場の評価を行うツールを開発しましたので紹介します。

● 評価ツールの概要

 開発したツールでは、流れの計算が可能なソフトウ工ア(iRICver2.3)を活用しました。このツールでは、主に平常時の流量に対して、流れの計算で得られる水深や流速といった物理指標を用いて、生物生息環境の評価が行えます(図1)。また、算定された結果は、画面上で視覚的に図示することが可能です。これにより、河川改修等における地形変更に対する生物の生息場の変化を評価することができます。現況の評価ツールには、魚類の生息環境の評価に加えて維持管理で問題となる陸生植物の生育可否の判定ツールも搭載されています。魚類の生息環境評価では、対象種に対する生息場の適正値<0(不適)から1(最適)>を流速・水深などから評価することができます。また、陸生植物の生育可能性は、水深によって判別を行うことが可能です。

● 結果と考察

 本ツールの適用事例として、川幅が約20mのモデル(現況(B))、川幅を2倍に拡げたモデル(拡幅(2B))と川幅を半分に狭めたモデル(減幅(1/2B))を作成しました。ここでは、単純な比較検討としたいため、いずれのモデルも河床の著しい凹凸を少なくし滑らかな断面にすると共に、平常時の流況では河床の変化も少ないので固定床としました。結果の一例として、水深での結果(図2)をみると、オイカワについては、成長段階に係わらず川幅変化に比例して、生息適地が増加しています。一方、カワムツについては、オイカワよりも適地が少ないことや、川幅が2倍になると成魚・産卵期の生息適地が減少していることが分かります。これらの結果は、オイカワが水深の浅い瀬を好むのに対して、力ワムツが水深の深い淵を好むと言われるように、両魚種の生態的な特性を表した結果といえるでしょう。また、陸生植物の生育可否(図3)については、平常時の水深が拡幅(2B)で現況(B)、減幅(1/2B)に比較し小さくなるため、植物によって河道が覆われる可能性が高くなることが分かります。本検討では、固定床として計算を行いましたが、河床変動を踏まえた評価を行うことも可能です。本ツールを活用すれば、生物に配慮した川づくりや維持管理を容易にする川づくりの検討も可能となるでしょう。

担当:大石 哲也
       
図1 評価モデルの計算フロー
図2 水深による評価結果
図3 植物生育可否に関する評価


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