● 背景と目的
多くの中小河川では、過去に行われた改修で、河床が平坦となり、生物にとって重要な瀬・淵構造の消失を始めとした環境の劣化が生じています。特に、市街地を流れる中小河川では、その後の改修においても川|幅の拡幅は困難な場合が多く、瀬・淵構造を創出する方法の開発が必要でした。
自然共生研究センターでは、河道の安定を確保するとともに、瀬・淵構造を創出することができる新しい河道安定工法について研究を進めています(写真1)。ここでは、実際の河川
(福岡県樋井川)に導入した早瀬工、瀬淵工について報告します。
● 方法
二級河川樋井川は、福岡市の市街地を流れる都市河川であり、平成21年の豪雨災害を契機に、改修事業が行われました。樋井川では、従来の帯工、護床工に代わって、早瀬工、瀬淵工を導入することにより、河道の安定だけでなく、瀬淵の復元が図られました。
早瀬工は、上流側の河床高を維持し、不連続な落差を生じさせず。早瀬状の流れを創出する構造物です。また、瀬淵工は、河床高を維持しながら縦断的な瀬・淵構造を形成する新しい河道安定工法であり、直線化した河道の安定を確保しつつ、瀬・淵を創出することを目的としています。早瀬工、瀬淵工については、石組と石張を組み合わせた構造としました。
● 結果と考察
早瀬工の状況を写真2に示します。早瀬工では早瀬状の流れが生じているととが分かります。また、下流側には淵が形成されています。写真3に瀬淵工の状況を示します。直線化した河道の中に、瀬淵が交互に形成されていることが分かります。早瀬工や瀬淵工により、良好な環境が創出されているととが分かります。今後は、早瀬工、瀬淵工周辺の流れの状況や河床変動について調査を行う予定です。
本事例は、河道の安定、河床高の維持だけでなく、瀬淵の保全と創出まで踏み込んだ事例であり、都市部の中小河川における多自然川づくりの一事例として、参考になるものと考えています。
担当:高岡 広樹 |
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■写真1 瀬淵工の大型模型実験 |
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■写真2 施工後の早瀬工の状況 |
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■写真3 瀬淵工の状況 |
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