ARRCNEWS

石の上の付着藻類量を現場で簡単に知る方法はありますか?

石の上の付着藻類量を現場で簡単に知る方法はありますか?

携帯式の藻類計測機器を用いることで、現場ですばやく測ることができます。

背景と目的

 付着藻類は魚や水生昆虫の餌として利用される大切な資源であり、その量を表すクロロフィルa量(Chl.a量)を知ることは、川の環境を評価する上で重要といえます。しかし、Chl.a量を測る従来の方法は、石から付着藻類をはぎ取って持ち帰り、付着藻類に含まれるChl.aを抽出して分光光度計で測定するもので(以下、従来法)、時間と手間がかかります。 これに対し、付着藻類のChl.a量を現地で測定可能な携帯式の藻類計測機器(以下、本機器、図1)を使用することで、短時間の測定が可能です。測定方法は、先端部(図1)を川底の石に20秒程度あてるだけです。ただし、このような機器の測定精度が従来法と比較してどの程度かを現場の川で確認した事例はほとんどありません。そこで、同じ石で、本機器での測定値と従来法での測定値を比較することで精度を検証しました。

方法

 矢作川水系の巴川の瀬において、川底の石に本機器をあて、Chl.a量を測定しました。次に同じ石を川底から取り出し、本機器をあてた箇所の表面にある付着藻類をブラシで擦りとり、持ち帰った後に、Chl.a量を分光光度計で測定しました。そして、2つの方法で測定したChl.a量を比較しました。 また、本機器を用いて個々の石のChl.a量を測定した上で、石の大きさ(中径)とその表面のChl.a量を測定し、両者の関係を解析しました。

結果と考察

 本機器で測定したChl.a量は、従来法で測定したChl.a量に対し、完全には一致しなかったものの、比例関係にあることが示されました(図2)。このため、Chl.a量の大小関係を比較する目的で,従来法と同様に本機器を使用することができると考えられます。 また、本機器で計測したChl.a量は石の大きさに対して比例関係にあることが示されました(図3)。この理由として、石が大きいほど流れに対して動きにくく、転石して付着藻類が剥離する可能性が低くなるためと考えられます。ただし、Chl.a量は流速等にも影響され、同じ大きさの石でもChl.a量にばらつきが生じます。このように、本機器を使用することで、測定時間の短縮および手順が簡略化できるため、現場での付着藻類の調査を省力化できることが期待されます。

■図1 今回使用した携帯式の藻類計測機器の全体および先端部
■図2 同じ石における分光光度計によるChl.a量と携帯式の
藻類計測機器によるChl.a量の比較のための散布図
(点線は回帰直線を表す)
■図3 河床の石の中間径に対する携帯式の藻類計測機器による
Chl.a量の関係(点線は回帰直線を表す)