地震に対して強い道路盛土の技術開発に関する研究
令和6年能登半島地震では、最大震度7を記録した大きな揺れにより、輪島市内の火災や土砂崩れなどの大きな被害が発生したことは記憶に新しいと思います。
土を盛って締め固めて造った道路(道路盛土)でも、たくさんの被害が発生し、地震後の復興活動等にも大きな影響がありました。特に能登半島を南北に結ぶ能越自動車道のと里山海道と穴水道路では、28箇所の盛土が大きく崩壊しました(写真-1)。その一方で、地震直前の令和5年9月に開通した能越自動車道輪島道路では大きな被害は起こりませんでした。
盛土の構築方法を定めたルール(基準や指針など)は、多くの知見を積みかさねて、適宜改定されています。たくさんの被害が発生したのと里山海道が昭和57年、穴水道路が平成18年に開通しており、古いルールが適用されています。一方、大きな被害のなかった輪島道路の盛土は平成25年以降に造られており、最新のルールが適用されていたため、被害が少なかったと考えています。したがって古い盛土では、地震で壊れないかをしっかりと調査し、壊れにくい盛土となるよう対策することが大事です。
盛土の被害は、山間地を通る道路で、土で谷間を埋めて造った盛土(谷埋め盛土)に集中していました。谷間は山に降った雨や地下水などが集中して流れる場所で、そこに盛土を造ってしまうと多くの水を含んでしまい、盛土全体が柔らかくなることで、地震の揺れなどに耐えられなくなり、大きく壊れてしまうのです(図-1)。
古い盛土のこのような被害を防ぐには、盛土が水を含まないよう水を抜くことが大事です。土木研究所で行った実験でも、水を多く含んだ盛土が大きく壊れてしまったのに比べて、盛土の中に水が通りやすい部分を造って水を抜く排水対策を行った盛土は、あまり大きく壊れませんでした(写真-2)。ただし、盛土の規模が大きくなるほど、水を抜くことは難しくなりますので、水を抜く対策以外の方法で盛土の崩壊を抑える対策などの研究にも取り組んでいるところです。
[参考文献]
 1) 国土技術政策総合研究所,土木研究所:
    令和6年能登半島地震土木施設被害調査等報告,
    国総研資料第1320号,土研資料第4459号,2025年3月
 2)土木研究所:
    谷埋め高盛土の地震時変形に関する動的遠心模型実験,
    土研資料第4427号,2022年7月
(問い合わせ先 : 土木研究所 土質・振動チーム)
AIによる路面すべり推定を活用した冬期道路管理支援技術
冬期には降雪や気温低下による凍結で道路がすべりやすくなり(図-1)、車両挙動が不安定になりやすい状況が生じることがあります。安全・快適な冬期の道路交通環境を維持する上では、除雪や凍結防止剤散布などの冬期の道路維持作業を適切に行うことが重要であり、そのためには路面のすべりやすさを把握することが、適切な作業実施の有用な判断材料になります。
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このような背景から、寒地交通チームでは安価、簡易かつ精度良く路面すべりやすさを把握するために、カメラで撮影した画像から路面すべり摩擦係数(路面のすべりやすさを数値化したもの)を推定する路面すべり推定AIを開発しています。
本取り組みでは深層学習の一種である畳み込みニューラルネットワークを使用して本AIを開発しています。この技術は画像の特徴を見抜くのが得意であり、画像に何が映っているのか判断する手法に広く使われています。当チームでは冬期を中心に、走行中に連続して路面のすべりを測定することができる車両(図-2)により、実際の路面のすべりやすさを計測するとともに車両前方に取り付けられたカメラで路面の画像を撮影しています。これらのデータを本AIの学習用データとして用いることで、路面画像を入力すると画像中の路面すべり摩擦係数を推定するAI(図-3)を作成することができます。
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当チームでは、本AIを活用して、スマートフォンカメラや道路CCTVカメラ(道路状況を監視しているカメラ)で撮影された画像から国道の路面すべり摩擦係数を推定するシステムを開発しています(図-4)。このシステムは北海道内の国道各所に設置された道路CCTVカメラやスマートフォンアプリで撮影された画像を収集し、本AIで推定した路面すべり摩擦係数を道路管理者向けに情報提供するものです。また、Webサーバーと事務作業等に使用する一般的なPCだけで構成されているため、道路各所の路面すべり摩擦係数を把握するシステムを安価に導入することが可能です。
今後は本AIを活用して路面のすべりやすさを判別し凍結防止剤散布作業の自動制御を行う技術や、同AIで判別した路面の状態を基に融雪システムをより的確に制御する技術の開発などを行う予定です。
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(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地交通チーム)
UAV堤防画像を用いたオオイタドリの対策
河川堤防は、年に数回の草刈りが行われ、川の様子を監視できるようにしています。長年、北海道の河川管理者を悩ませているのは、河川堤防に根付くオオイタドリです(写真-1)。もともと北海道に生息している植物ですが、多年性で再生能力が高く、刈り取りを重ねてもすぐに茎葉を伸ばします。地下でも根茎を伸ばして範囲を広げ、夏には人の背よりも高く伸びることから、河川管理に支障が出ています。
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繁茂するオオイタドリに対して、刈取時期や回数を調整することで、刈取後の再成長抑制が確認されています(図-1)。効率的・効果的な刈り取り対策を行うには、まずは生えている範囲を知る必要があります。これまでは、人が地上で歩きながら範囲を記録する方法を取ってきました。これでは、多くの人手や時間が必要となります。そこで水環境保全チームでは、ドローン(UAV)で上空から撮影した画像を用いて、堤防上のオオイタドリの生えている範囲を把握するモデルの開発に取り組んでいます。従来の方法と比べ、広い範囲を効率よく確認できます。
このモデルは、空撮画像をメッシュ状に区切り、オオイタドリかどうかを、事前に学習させたAIによって自動的に見つけるというものです(図-2)。これにより、単なる写真記録ではなく、どこに生えているかを地図上で確認し、どれだけ生えているかを数値で調べることを可能とする仕組みづくりを目指しています。
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黄色線は地上調査による オオイタドリ分布 範囲の境界線、橙色はAI検知 範囲を示す |
このようなモデルが実用化されれば、地図上で確認できるので、堤防全体を毎回くまなく歩く必要がなくなります。また、数値で確認できるようになると、前の年と比べて増えているかどうかや、増える速さが他の場所と比べてどうかなどを確認できるようになります。その結果、草刈りなどの優先順位を決めやすくなり、現場での作業負担の軽減につながることが期待できます。現在、このモデルの現場試行と改良を進めており、今後、河川管理者の計画や優先順位を付ける際の補助ツールとして使われることを目指しています。
(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 水環境保全チーム)



