新潟試験所ニュース

【研究ノート】

1 地下水排除施設の機能低下状況に関する調査

図−1 集水パイプ洗浄前後集水量変化図
図−1 集水パイプ洗浄前後集水量変化図

(1)はじめに
 地下水排除工の横ボーリング工や集水井工等は、地すべりの原因となっている地下水を集水ボーリングにより集水排除するもので、一番多く採用されている工法です。
近年、これらの地下水排除施設が機能低下を生じ、地下水を集水排除できなくなっているものが数多く見掛けられるようになり大きな問題となっています。
 そこで、新潟試験所ではこの問題を解決するために、地下水排除工の機能低下防止に関する試験調査として研究を行っています。
 その成果の一部は、学会,新潟試験所ニュース第2号で紹介しましたが、今回は、地下水排除施設の機能低下の実態調査として、新潟県上越地方の6地すべり地における集水パイプ洗浄前後集水量の観測と、横ボーリング集水パイプ内の観察を行った結果の概要について紹介します。

(2)集水パイプ洗浄前後集水量の観測
 現在、目詰まりした集水パイプの機能回復は高圧水による集水パイプ内の洗浄等で行われています。そこで、集水パイプの機能低下の確認と洗浄作業の効果を調査するために、機能低下が生じていると思われる集水パイプ50本について洗浄前後3〜4回の集水量観測を行いました。
 図−1には、洗浄前後集水量の変化を示しました。なお、この図から以下のことが分かります。

(1)

洗浄前及び後の集水量は、毎分0.5リットル未満のものが多く、洗浄前で全体の76%,後で54%を占める。

(2)

洗浄後の集水量は、洗浄前と比べて毎分0.5リットル未満のものが減少し毎分0.5リットル以上のものが増加しており洗浄の効果が認められ、全体として平均値で毎分0.7リットルの改善が図られた。

図−2 集水パイプ洗浄前集水量と洗浄後の増加集水量との関係
図−2 集水パイプ洗浄前集水量と洗浄後の増加集水量との関係

 図−2には、洗浄による集水量の増加を示しました。
集水量が洗浄により増加したものは、毎分1.0リットル以上のものが全体の約15%であり、少しでも増加したものを合わせると全体の約65%になることが分かります。なお、洗浄による集水量の増加が無かったものについては、もともと集水量が無かったことも考えられますので、その点については今後の検討課題とします。

(3)集水パイプ内の観察
 機能低下を起こしたと思われる集水パイプ内の観察は、小型カメラを洗浄前のパイプ内に挿入し行いました。なお、集水パイプは一般的には長さ50mのものを用いますが、カメラは集水パイプの詰まりやパイプの破損等により0.5〜22m程度しか挿入できませんでした。
 集水パイプ50本について観察した結果では、以下のことが分かりました。

(1)

パイプを詰まらせている物質として、草や木の根及び赤褐色の粘質物(スライム)が認められた。

(2)

孔口にスライムの付着の多いものは内部でも付着が認められたが、特に付着の多いのは深度3mまでであった。

(3)

孔口にスライムの付着の少ないものは、内部でも付着が少なかった。

(4)おわりに
 今回は、洗浄前後の集水量変化と集水パイプ内の状況観察結果について紹介しました。今後は、両者との関係及び施設設置後の経過年数,地質等の地すべり地の要因との関係等について分析するとともに、全国の機能低下の実態把握、スライムの付着原因の解明とスライム付着の防止法等について検討していく予定です。

(文責:高橋)
   
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