新潟試験所ニュース

図-1 コイルから発生する磁束の様子
図-1 コイルから発生する磁束の様子

2 非接触式路面塩分測定技術開発の試み

 車載型で、線的に連続した路面塩分量を計測する技術の開発を目的とし、ループコイルを用いた塩分計測技術を取り上げ、予備試験を行ったのでその結果を紹介します。

(1)ループコイル式塩分計の原理
 図-1の様にコイルを交流で励振すると、コイルから磁束φが発生します。この時道路上に塩化物溶液が存在すると、塩化物イオンは一種の導体となり、鎖交磁束により表面に渦電流が生じます。
  この現象により磁束φ'が発生し、電流Iを打ち消す方向にI'が発生するインピーダンスの増加が起こります。今回、この性質を利用して路面塩分量を測定しようとするものです。


(2)試験方法
(1)試験1:

30cm角の木枠にビニル線を10巻きしたコイル上のアクリル板に、1〜10%濃度の塩化ナトリウム溶液に浸したペーパタオルを1〜5枚重ねて置き、周波数10, 50, 100, 300, 500, 600, 800Hzの電流を流し、損失を計測しました。

(2)試験2:

試験1と同仕様のコイル上に、濃度1〜6%の塩化ナトリウム溶液を2.5cmと5cmの深さで満たし、周波数500・600Hzの電流を流し損失を測定しました。

(3)試験3:

低温実験室において室内温度を5℃, 0℃, -5℃に設定し、外形30cm角, 50cm角、巻数5巻,10巻きした4種類のコイルを用いて、塩化ナトリウム,塩化カルシウム,酢酸カルシウムマグネシウムの3種類の溶液を、それぞれ濃度を1〜6%まで1%づつ変化させて試験を行い、損失を測定しました。


(3)試験結果
 図-2に、ペーパータオル枚数を濃度に換算した周波数別の濃度と損失変化率の関係を示します。図から、塩分濃度が高くなるにつれて、損失がほぼ正比例して大きくなっていることが分かります。

図-2 周波数別の塩分量と損失変化率
図-2 周波数別の塩分量と損失変化率
図-3 塩分量と抵抗変化率(試験2,600Hzデータ使用)
図-3 塩分量と抵抗変化率(試験2,600Hzデータ使用)

 周波数別に見ると、周波数が高いほど損失変化率が大きくなっていますが、500Hz以上の周波数で変化率が周波数の変化によらない値を示していることや、低濃度溶液に対して高い周波数で測定を行った場合、損失の変化が表れにくいことから、今回条件では、周波数500〜600Hzの電流を流しての測定が妥当といえます。
 図-3は試験2の結果であり、周波数600Hzの電流を流して測定したデータを用いて、溶液の深さが損失に与える影響について検討したもので、溶液の深さを塩分量に換算し、溶液深さ別の塩分量と抵抗変化率の関係を示しています。

図-4 試験3での溶液濃度と損失変化率
図-4 試験3での溶液濃度と損失変化率

 溶液の深さが損失に与える影響がないとすれば、理論上、2つのデータ(溶液深さ2.5cmと5.0cmに対する測定値)は同じ値を示すことになります。図-3をみると、両者が非常に接近した値であることから、損失変化率は、溶液中の塩化物量に大きく依存し、今回使用したループコイルの仕様で、溶液深さ5.0cm程度の場合、溶液の深さによる損失への影響は、非常に少ないことが分かりました。
 図-4に、試験3結果の一例を示します。使用したコイルは30cm角5巻、溶液は塩化ナトリウム溶液、試験室内温度-5℃の条件で行ったものです。
 試験3では、図-4に示した条件以外の測定においても、溶液や測定機の凍結等の問題から、データが非常にばらつき、薬剤種別の損失特性や、溶液温度が損失に与える影響を定量化出来ませんでした。

(4)まとめ
 最後に今回の試験結果から、ループコイルを用いて路面塩分量(液体時)を相対的に計測する技術の可能性を見いだすことが出来ましたが、現地導入を考えた場合、今回明らかに出来なかった薬剤種,温度による損失特性,車載型とした場合のコイルと塩化物間の距離等を明確にすることや、道路上の不純物や舗装体の影響等、検討が必要な問題が数多く残されている。

(文責:服部)

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