新潟試験所ニュース

【研究ノート】

1 地すべり地における集水井の地下水排除効果

図−1 集水井設置に伴う地下水位の変化
図−1 集水井設置に伴う地下水位の変化

 数多くの地すべり地では、地すべり斜面内の地下水排除を行うことを目的として、暗渠や集水井等の地すべり防止施設が設置されています。また、これらの地すべり斜面における配置計画は、地下水調査及び各施設の地下水排除効果等をもとに決める必要があります。しかしながら、地下水排除施設の効果は、まだ明らかになっていないことから技術者の経験により決まられているのが現状です。
 そこで、新潟試験所では、地下水排除施設として最も数多く用いられている集水井の地下水排除効果を明らかにするために、新潟県内の新第三紀層地すべり地(13カ所)における地すべり観測データ(集水井18基)をもとに、集水井の効果について研究してきました。ここでは、その研究成果について紹介します。

(1) 集水井の地下水排除効果
 集水井工は、図−1に示すように直径3〜5mの井戸を掘削し、井戸の中から帯水層に向けて50m前後の集水ボーリングを施工し(平面的には扇形)地すべり斜面内の地下水を排除する工法です。地すべり斜面に集水井を設置することにより、地下水位はh1からh2に変化し△hだけ低下すると考えられます。

1) 地下水位の低下形状
 図−2には、集水井設置に伴う地下水位の低下形状を示しました。集水井設置後の地下水位h2は、概ね集水井の近くでは低く、集水井からの距離Lが長くなるにつれて高くなる傾向が認められます。これは、集水ボーリングが平面的には扇形に設置されるため、集水井の近くでは集水ボーリング設置密度が高く、遠くでは低くなることによる集水能力の差によると考えられます。
2) 地下水位の低下量と低下範囲
 図−3は、集水井設置前の地下水位h1と地下水位低下量△hとの関係を示したものです。なお、これらの地下水位の観測位置は、集水井からの距離Lで35〜45mです。地下水位の低下量は、集水井設置前の地下水位が高いほど大きいことが分かります。
 図−2、3から、集水井設置に伴う地下水位の低下量△hは、集水井からの距離Lと集水井設置前の地下水位h1の影響を受けることが分かります。このことをもとに、△hを求めるために重回帰分析により、次に示す簡便式を導くことができました。

△h(m)=−1.08−0.11L(m)+0.97h1(m)

 この他、集水井設置に伴う地下水位の低下範囲は、現地観測データによれば基本的には集水井の設置範囲内に限られることが分かりました。
 以上の研究成果は、地すべり(Vol.33、3、pp.13〜18)に”地すべり地における集水井の地下水排除効果に関する検討”として発表されています。



図−2 集水井設置に伴う地下水位の低下形状 図−3 集水井設置前の地下水位h1と地下水位低下量△hとの関係

図−2 集水井設置に伴う地下水位の低下形状

図−3 集水井設置前の地下水位h1と地下水位低下量△hとの関係

(文責:丸山)
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