新潟試験所ニュース

研究ノート

雪氷路面におけるすべり摩擦係数の測定


1.はじめに

 冬期道路においては、安全で円滑な交通確保のために除雪等の作業が行われますが、気象状況や除雪出動のタイミング等により、圧雪等の雪氷路面が発生する場合があります。
 雪氷路面は、乾燥した路面に比べてすべり易く、効率的な除雪作業等の実施や安全な道路交通の確保のためには、雪氷路面のすべり易さを明らかにすることが重要です。
 そこで、新潟試験所では、雪氷路面におけるすべり摩擦係数の調査を実施してきましたので、平成10〜13年度の調査結果について紹介します。

2.調査の方法

 調査場所は、図−1に示す一般国道18号新潟県妙高高原町二俣地区及び長野県信濃町古間地区です。また、すべり摩擦係数は、写真−1に示すすべり抵抗測定車を用い、40km/hの速度でスタッドレスタイヤ (サイズ165/80R13、タイヤ空気圧167kPa) により、すべり抵抗測定車の外側車線走行位置に設置されているタイヤを1回当たり1〜3秒の間ロックさせて測定しました。
 なお、すべり摩擦係数は、「圧雪」や「氷板」「シャーベット」等の雪氷路面の状況により異なると考えられますので、測定結果は表−1をもとにして目視により雪氷路面を分類して整理しています。観測された主な雪氷路面の例を写真−2(a)〜(c)に示します。

図−1 調査地位置図
図−1 調査地位置図

写真−1 すべり摩擦係数測定状況
写真−1 すべり摩擦係数測定状況
表−1 目視による路面の分類1)(一部加筆)
表−1 目視による路面の分類1)(一部加筆)

写真−2(a) 写真−2(b) 写真−2(c)
写真−2(a) 圧雪(表面に光沢が無く白っぽいもの)1) 写真−2(b) つぶ雪(雪がザクザク、ぼそぼそした状態で、凍結防止剤の散布効果がよく現れている感じのもの)1) 写真−2(c) シャーベット (雪が融けてベタベタした状態のもの)1)
図−2 路面の分類別のすべり摩擦係数
図−2 路面の分類別のすべり摩擦係数

3.調査結果

 路面の分類とすべり摩擦係数の関係を図−2に示します。
 今回の調査で観測数の多かった路面分類におけるすべり摩擦係数の平均値は0.20〜0.35程度の範囲になっています。
 また、最大値と最小値の差はかなり大きく、 まれにすべり摩擦係数が0.15以下となる雪氷路面も認められます。
 しかしながら、今回の結果では、どの路面分類がすべり易いかについての判別はできませんでした。
 次に、どの程度路面がすべり易いかを、わかり易くするため、すべり摩擦係数と制動停止距離の関係を示します。
 制動停止距離は、運転者が危険を感じてからブレーキを踏み、実際にブレーキが効き始めるまでの間に車が走る距離(空走距離) と、ブレーキが効き始めてから車が停止するまでの距離(制動距離)の和であり、(1)式2) により求められます。

図−3 すべり摩擦係数と制動停止距離(速度40km/hの場合)
図−3 すべり摩擦係数と制動停止距離(速度40km/hの場合)

 図−3は、すべり摩擦係数と制動停止距離との関係を示したものです。なお、すべり摩擦係数は文献2),3)等を参考に、速度は40km/hに各々設定しました。もし、雪氷路面のすべり摩擦係数が0.1の場合には、制動停止距離が90m以上になり、乾燥路面の2倍以上になります。

4.おわりに

 新潟試験所では、今後も雪氷路面における除雪の効率向上と安全な道路交通確保のための調査研究を実施していきます。

(参考文献)
1)冬期道路管理マニュアル(案),北海道開 発局,平成9年11月
2)道路構造令の解説と運用,日本道路協会, 昭和58年2月
3)交通工学ハンドブック:社団法人交通工学 研究会編,技報堂出版,昭和61年1月

 (文責:小嶋)
   
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