新潟試験所ニュース

【研究ノート】

新潟県中越地震による土砂災害

 中越地震により発生した土砂災害は、土石流21箇所、地すべり120箇所、がけ崩れ116箇所(国交省11月17日まとめ)に及んでいます。ここでは、新潟試験所が調査した災害現場の中から、長岡市内の宅地造成地と急傾斜地崩壊危険区域での斜面災害及び、山古志村で発生した河道閉塞について紹介します。

1.長岡市における土砂災害

 写真−1、2は、高町団地における亀裂及び斜面崩壊の発生状況です。この団地は、山を切土し周囲との比高差を平坦にするために一部外縁部を盛土することで造成されたものであり、500世帯余りが住んでいます。亀裂は団地周辺部で主に発生し、斜面崩壊は盛土部に発生しました。


写真−1 高町団地の亀裂発生状況

写真−2 高町団地の斜面崩壊

 写真−3、4には、鶴ヶ丘団地の亀裂及び斜面崩壊発生状況を示しました。この団地は、北部と南部の2つの斜面に造成されています。今回の地震により、団地北部では団地下部の斜面が崩壊するとともに宅地に段差や亀裂が生じました。また、団地南部には所々に亀裂が生じています。現地調査の結果では、団地北部被災箇所は盛土部でした。


写真−3 鶴ヶ丘団地北部の亀裂発生状況

写真−4 鶴ヶ丘団地北部の斜面崩壊

 写真−5は、滝谷北地区の寺に隣接した斜面における斜面崩壊の発生状況です。この斜面崩壊により、寺の住宅部分が損壊しました。


写真−5 滝谷北地区斜面崩壊

 

2.山古志村における土砂ダム

 中越地震では、山古志村から小千谷市を流れる芋川において地すべりによる土砂ダムの形成により大規模な河道閉塞が5箇所で発生しました。この中で、寺野と東竹沢の各地区で発生したものは、土砂ダムが河川水の越流により決壊した場合、下流に大きな被害を及ぼす恐れが出てきました。このため、河道閉塞対策は、国土交通省の直轄砂防事業として実施することになり、土木研究所地すべりチームと新潟試験所では、11月19日から12月28日までに延べ69人の研究者を派遣し強力な技術支援を行ってきました。ここでは、寺野地区と東竹沢地区で発生した2箇所の河道閉塞について紹介します。

 写真−6には、山古志村寺野地区で発生した河道閉塞の状況を示しました。この河道閉塞は、芋川左岸の既存地すべりが地震により再滑動し、滑動した土塊が右岸に達して、河川水による湛水域ができたため生じたものです。なお、再滑動した地すべりの規模は、幅約230m、長さ約360mであり、この河道閉塞の規模は、長さ約360m、高さ約26m、幅約230m、せき止め土量約11,000m3です。


写真−6 寺野地区で発生した河道閉塞
(11月10日湯沢砂防事務所撮影)

 写真−7は、山古志村東竹沢地区で発生した河道閉塞の状況です。この河道閉塞も、芋川左岸の既存地すべりが地震により再滑動し、滑動した土塊が右岸に達して、河川水による湛水域ができたため生じたものです。なお、再滑動した地すべりの規模は、幅約295m、長さ約350mであり、地すべり土塊は約100m移動して右岸に衝突し、地すべり末端部は隆起しました。この河道閉塞の規模は、長さ約350m、高さ約28m、幅295m、せき止め土量約1,270,300m3です。


写真−7 東竹沢地区で発生した河道閉塞
(11月7日湯沢砂防事務所撮影)

 これらの河道閉塞では、春先の融雪出水越流による決壊防止のための仮排水路の開削が、24時間体制で進められた工事により12月28日までに完了しています。

(文責:丸山)

【試験地の風景】その5 安曇村・乗鞍

 長野県安曇村乗鞍は松本市西方の長野県と岐阜県の県境に位置しています。この付近には、乗鞍岳、乗鞍高原、焼岳、上高地など自然豊かな景勝地や、スキー場、乗鞍高原温泉、白骨温泉などがあり、リゾート地ともなっています。当地は標高が1000mを超える地域で積雪も多く、2003年1月には雪崩災害が発生しています。 標高1700mの地点では、樹林の雪崩予防に関する現地観測を行っています。
 この試験地は、新潟試験所からもっとも遠い試験地で、車で往復約6時間かかります。


雪崩に巻き込まれた車輌(平成13年 安曇村役場撮影)

冬の白骨温泉

樹林内で発生した雪崩(平成15年1月)

 

(文責:秋山)

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