雪崩・地すべり研究センターたより

【研究ノート】

新潟試験所における、道路雪害研究の軌跡

 当道路雪害部門は、1962(昭和37)年5月に設置され、平成17年3月で新潟試験所内での研究は終了し、4月以降はつくばの土研本所の舗装チームへ移管することになりました。
 43年間の新潟試験所での研究は、その時代の冬期道路における行政ニーズを的確に判断し、様々なテーマに取り組んできました。以下のように主な調査・研究課題と成果を総括され、積雪寒冷地の道路管理に活用されています。

1.道路気象に関する研究

@ 積雪時の交通と住民意識調査 (1971年〜1972年)
A 凍結・圧雪の検知・予知手法に関する調査 (1974年〜1980年)
B 積雪が地域経済に与える影響調査 (1975年〜1977年)
C 降雪予測に関する研究 (1975年〜1980年)
D 道路気象情報処理に関する研究 (1980年〜1985年)
E 気象情報機器の開発 (1982年〜1985年)
F 道路気象情報の利用技術に関する研究 (1986年〜1989年)
G 降雪予測情報の体系化に関する試験調査 (1990年〜1993年)

 特にAでは、凍結・圧雪路面の検知手法の開発として、判別関数法により検知手法に関する検討を行い、その結果、判別効率は72%〜85%の的中率となり、高い精度で凍結・圧雪路面の検知が可能となりました。Gでは、降雪の中長期および短期予測情報を総合的かつ容易に利用するシステムの構築を目指し、当試験所が開発した2群判別による降雪予測手法は、現在、北陸地整(高田河国)で運用されている手法の基礎となったものです。


予測結果の表示例

 

2.融雪に関する試験研究

@ 温水融雪工法に関する実験 (1970年〜1972年)
A 温水循環方式による橋面融雪の実験 (1972年〜1973年)
B 自然エネルギーを用いた道路融雪に関する試験調査 (1993年〜1996年)

 Bでは、海水熱を利用した融雪調査を行い海水を路面に流下させることによる融雪システムを検討した。その結果2.0〜2.5cm/hの降雪強度まで融雪能力があることが判明しました。また、舗装帯に塩化物が残留し、凍結防止または凍結遅延の効果があることもわかりました。


流量と採熱量・海水温度の関係

 

3.凍結・圧雪に関する研究

@ 凍圧雪道路のすべり摩擦特性に関する試験調査 (1969年〜1975年)
A 雪寒対策調査 (1974年〜1976年)
B 凍圧雪の発生機構に関する調査 (1975年〜1980年)
C 凍結・圧雪の発生特性に関する研究 (1980年〜1989年)
D タイヤの発進時すべり摩擦に関する実験 (1976年〜1980年)
E 各種タイヤのすべり摩擦に関する実験 (1980年〜1989年)
F 凍結防止剤散布実態に関する試験調査 (1987年〜1989年)
G 凍結・圧雪の検知・予知手法に関する研究 (1974年〜1980年)
H 冬期道路管理技術の高度化に関する試験調査 (1995年〜1997年)
I 降雪時における路面凍結等の対策に関する試験調査 (1998年〜2001年)

 @では、凍結・圧雪路面のすべり摩擦特性の解明として、(1)凍結路面におけるタイヤ種別のすべり摩擦抵抗値はスパイクタイヤ、スノータイヤ、リブチェーンの順に低くなる。(2)氷板路面では0℃より温度が下がる程摩擦係数が高くなる傾向が見られました。Dでは、凍結・圧雪路面を自動車で発進する場合は、無雪時の道路に比べて2倍以上の時間をかけ発進することが最適発進方法であることがわかりました。Eでは、トラックおよびバス用など大型タイヤのすべり摩擦特性を把握し、(1)大型タイヤ、普通タイヤの圧雪面上のピーク値は共に0.3程度で、積載重量の違いによるすべり摩擦係数の変化はない。(2)タイヤの種類別によるすべり摩擦係数(ピーク値)は、氷板面上ではスノータイヤに比べてスパイクタイヤが高い値を示し、圧雪面上ではほとんど違いが見られない。また、スタッドレスタイヤはスノータイヤとスパイクタイヤの間の摩擦係数値を示す。Iでは、効果的・効率的な雪氷路面対策に資するため、環境に優しく持続性のある非塩化物型凍結防止剤の現地実証試験、熱エネルギー収支に基づく路面状態予測手法を検討し、その結果、(1)非塩化物型凍結防止剤の事前散布による酢酸化合物の有効性が確認された。(2)熱エネルギー収支に基づく路面状態予測手法の検討として、福井大学と共同で大気と地盤との熱エネルギー収支に着目した定点観測局データを基に気象変化に伴う乾燥・湿潤・積雪路面における熱的挙動を把握しました。

(文責:小林)
次号に続く

新潟県における平成17年冬期(平成17年1月〜17年3月まで)の大雪について


図−1 観測地点位置図

 平成16年10月23日に発生した「新潟県中越地震」によって甚大な被害を受けた中越地方では、平成17年の冬期、「61豪雪」以来19年ぶりの大雪となり、震災後の生活再建を目指す多くの被災者に大きな影響を与えたことがTV・新聞等で報じられました。本稿では、新潟県内で気象庁が積雪深を観測している16地点のうち、図−1に示す上越地方2地点、中越地方2地点について、過去25年間の年最大積雪深の推移(図−2)及び平成16年12月から17年4月にかけての積雪深の推移(図−3)により、平成17年冬期の降雪状況を見てみることにします。
 図−2から、中越地方における平成17年冬期の最大積雪深はここ数年で多く、しかも昭和61年の豪雪に匹敵するものであったことが分かります。上越地方では、標高の高い関山の平成17年冬期の最大積雪深は昭和61年に匹敵するほどですが、平地の高田では平成17年冬期の最大積雪深はここ数年と同じ程度であり、昭和62年以降の少雪傾向が続いたことが分かります。
 また、図−3から、特に中越地方で1月31日から2月1日にかけて降った大雪がよく見て取れます。
 近年、我が国では地球温暖化の影響により小雪化の傾向にあると言われてますが、平成17年冬期のように年によっては豪雪となることが今後もあると考えられます。引き続き着実な雪崩対策が必要であると言えます。

図−2 年最大積雪深の推移 (昭和56年〜平成17年)
 なお、図中の白抜きのマークは、気象庁により年最大積雪深が観測されなかったため、近傍の国土交通省長岡国道事務所、妙高市による観測値で補完した値
図−3 積雪深の推移(平成16年12月〜17年4月)
(文責:金子)

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