中越地震から一年 ‐積極的研究活動‐
平成16年10月の中越地震は、地震計による観測が始まって以来初めて記録した震度7をはじめ6強など激烈な地震が連続して発生し、約3,800個所で崩壊土砂量の合計約1億立方メートルといわれる斜面崩壊が瞬時に発生しました。多発した斜面災害のうちでも特に地すべり災害は、1年間の日本中で発生する全個所に匹敵する131箇所で発生し、大規模な地すべり土塊の滑動により、集落直撃、アクセス道路及びライフラインの寸断、河道閉塞などが多発し、今でも9千人近くが未だ避難中であるように長期にわたる集落孤立化は、中山間地の存続に関わるなど深刻な影響をもたらしています。
当センターは発生直後から「土砂災害緊急支援チーム」など災害実態の把握に参加し、長岡市からの造成地や避難解除等の個別要請に技術的指導を行いました。次いで芋川河道閉塞緊急対策工事への技術的支援とともに、雪崩対策施設等の被災状況調査を積雪時まで実施しました。その後は航空写真の判読など机上調査を続け、平成17年は中越地震による地すべり被災の実態把握及び融雪期以後の地すべり災害の拡大状況を把握するために、積極的に取り組んでいます。特に、地震に伴って急激に再滑動する地すべりはないと言う定説に反し発生した大規模な地すべり土塊の再滑動に対し、研究テーマとして「地震に伴う地すべり土塊の強度低下特性に関する研究」を開始しています。融雪期以後、詳細な現地調査を精力的に行い地すべりブロック区分及び滑動状況把握を実施しています。また、災害関連緊急対策地すべり対策事業では内部地質の貴重な情報が得られ、地質構造など地すべり発生場の条件解明や地震によるすべり面形成位置の把握のために、大学や関係各機関の専門家との合同による調査ボーリングのコア観察会を実施しました。また地すべり観測データによる地震時における地すべり地の地下水位など誘因の状況把握をしています。 この他、地すべり土塊の地震時における強度変化を解明するために、当センター所有のリングせん断試験機の改良を行いました。それらと並行して、長岡市濁沢地区など市町村への個別技術指導を行っています。
今後は、中越地震を事例とする地震に伴う再滑動型地すべり危険箇所予測手法の構築に繋げて行く予定です。

現地調査状況 |

改良したリングせん断試験機 |
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