雪崩・地すべり研究センターたより

【中越地震により発生した地すべりの発生機構−塩谷神沢川地すべりを例に−】


 当センターでは、中越地震によって発生した地すべりの発生機構を精力的に研究しています。ここで、塩谷神沢川地すべりを例として紹介します。
 小千谷市塩谷地区に位置する塩谷神沢川地すべりは、長さ650m、幅450m、最大深度80mに及び、中越地震で発生した地すべりの中で最大級のものです。


写真1 地すべり全景

図1 地震前の地すべりと地震時の地すべり運動方向


写真2 ボーリングコア観察会

 地すべり斜面では明瞭な滑落崖、後方回転運動、陥没帯など変状が観察されます(写真1)。地震前後の空中写真における地すべり斜面の養鯉池や水田の移動状況から、本地すべりの移動方向は南東方向で、水平移動が最大約100mと推定されます。この移動方向は、滑落崖付近で見られるすべり面の擦痕から推定される運動方向と一致し、図1に示したように、旧地形から推定される地震前の地すべりの運動方向の東南東方向と異なります。
 ボーリング調査の結果から、地すべりブロックの中部のBV-4孔では深度79m付近に鏡肌や擦痕(写真2)があり、地震時の地すべり面は従前より30m深いところで発生したことを示しています。
 上述のとおり、本地すべりは既存の地すべり地形を呈していた斜面内で発生しましたが既存すべり面の再滑動ではなく深部の層理面付近で新たなすべり面を形成して発生したものと考えられます。

 

【中越地震ボーリングコア観察会】

 8月26日及び10月28日に、新潟県土木部砂防課及びコンサルタントの協力を得て、中越地震で滑動した地すべり地の調査ボーリングコア観察会を行いました。新潟県による災害関連緊急事業実施箇所のうち17地区を対象に、新潟大丸井教授、農工大中村教授など研究者並びに県、北陸地整と土研の地すべりチーム及び当センターが合同で行ったものです。ボーリング調査に基づく見解はよく検討されており、中越地震に伴う地すべりの発生機構の解明に貴重な情報を提供し、今回のように研究関係者など一同に会し、コア観察しながら意見交換することは、さらに意味深いものでした。

 

【2005年研究センター3大ニュース】

1.

  昭和35年発足以来親しまれてきた「新潟試験所」が4月から「雪崩・地すべり研究センター」に改称、6月に国交本省の亀江課長臨席のもと、看板披露の会を開催。
2.   1月末からの19年ぶりの大雪により各地で雪崩災害が発生。2月妙高村燕で発生した雪崩に対し、県の要請により翌朝から現地調査。
3.   中越地震による地すべり滑動機構をセンター一体となり研究し、交流研究員ハスバートル氏現地調査を精力的に実施。

 

【編集後記】

今冬は12月初旬から豪雪に見舞われ、センター構内でも1月12日で2m68cmの積雪を記録し、正月早々に庁舎の屋根雪下ろしを作業員10名により行いました。

BACK

News Top