雪崩・地すべり研究センターたより

【中越地震関係】

地すべり土塊の動的リングせん断試験

図−1 動的リングせん断試験
図−1 動的リングせん断試験

 中越地震では、地震に伴って急激に再滑動する地すべりはないという定説に反して、数多くの大規模な地すべりが再滑動しました。そこで、当センターでは、これらの地すべりの発生機構を解明するために、詳細な現地調査、調査ボーリングデータの解析、リングせん断試験などを実施してきました。ここでは、動的リングせん断試験について紹介します。 試料は、土質と地震により再滑動した地すべりの発生条件との関係を解明するために、中越地震により発生した代表的な再滑動型地すべり13箇所のすべり面付近から採取しました。試験では、ドーナツ状に成型した供試体をせん断箱に入れ、供試体に地震力となる動的せん断力を与え、地すべり土塊が地震力を受けた場合の強度変化を調べました(図−1)。
 図−2、3は、砂質土及び粘質土の各試料の試験結果を示したものです。砂質土では変位発生後に土塊の強度を低下させる過剰間隙水圧が急激に大きくなっているのに対して、粘質土ではそのような変化は認められません。このことから、粘質土地すべりでは地震による過剰間隙水圧により土塊の強度低下を引き起こし、再滑動を起こし難いことが分かりました。

図−2 砂質土試験結果
図−2 砂質土試験結果
 
図−3 粘質土試験結果
図−3 粘質土試験結果

 本年度からは、この研究を重点プロジェクト研究として、中越地震を事例とする地震に伴う再滑動型地すべりの危険箇所予測手法の構築に繋げて行きます。


【トピックス】
【ゆきみらい2006in上越開催される】

 2月1日から4日間上越市内を中心に「ゆきみらい」が4会場に分かれて行われました。当センターでは、高田河川国道事務所の協力のもと、ブースの一角に雪崩の映像及び道路雪害の研究内容のポスターを展示しました。
 また、「平成16年新潟県中越地震による雪崩対策施設の被災状況について」研究発表を行いました。また1月26日には雪崩防災シンポジウム(長野県白馬村)が、2月3日には地すべり学会中部シンポジウム(長野市)が開催され各々当センターの研究についての発表を行いました。

 

【桜の二度咲き】
桜の二度咲き
5月2日撮影
  センター構内には、庁舎を取り囲むように樹齢40年前後の桜が約30本あり、毎年きれいな花を咲かせます。
 今冬は、例年になく大雪で雪消えも遅く、例年に比べ約10日ほど遅れて開花し、4月20日前後に満開になり28日頃散りました。ところが4月の末から5月初めにかけて、下枝から桜が咲き始め5月2日には満開の状態となりました。1m50〜2m30位の枝に花が咲いており、雪解けが遅かったので「二度咲き」になったと思われます。

 

【JICA研修生来所】
JICA研修生来所
  4月25〜26日に国際協力機構(JICA)の「火山学・総合土砂災害対策研修」の一環で、インドネシア・イラン・ベネズエラから政府機関の技術者4名が来所しました。当センターでは、研究紹介(花岡センター所長)、雪崩災害の実態・雪崩模型を使った雪崩の実験(金子主研)及び地すべり防止工事の講義と演習(丸山主研)を行いました。また上越市板倉区の地すべり資料館及び妙高市坪山の地すべり地を視察しました。この模様は新聞やケーブルテレビでも紹介され、研修生たちも喜んでいたようです。


【春の訪れを告げるはね馬の雪型】

春の訪れを告げるはね馬の雪型
5月10日撮影

 

【4月1日転出者挨拶】

主査 斎藤 昌平

主査 斎藤 昌平 このたび雪崩・地すべり研究センターから転出した斎藤です。在勤中は新潟県中越地震、豪雪による雪崩災害等の多発といった自然災害に加えて、新潟試験所から雪崩・地すべり研究センターへ組織が改変されるという大きな節目の年に立ち会わさせていただきました。
 研究のお手伝いをさせていただき、雪崩・地すべり研究センターでは私たちの生命・財産を守るため、非常に重要な研究を行っているということを実感しました。
 今回私は北陸地方整備局高田河川国道事務所用地第二課で道路の用地取得を担当することとなりました。研究センターの担っている使命とは大きく変わる業務に就くこととなりましたが、今後共御指導、御鞭撻を賜わりますようお願い申し上げます。


【転入者の紹介】

交流研究員 鈴木 滋交流研究員 鈴木 滋(しげる)

  4月からお世話になります鈴木と申します。入社16年目となりますが、東京→仙台→福岡→さいたま→東京で勤務し、地すべりに関する業務を中心に斜面全般の調査、解析、設計業務に携わってまいりました。特に専門分野を持っている訳ではありませんが、最近の技術として「地震時の地すべり安定度評価」「斜面対策でのリスクマネジメント技術」「貯水池周辺斜面の再評価」に関心をもっています。何分、現業・現場だけで経験を積んでまいりましたので、研究職としては新人です。皆さんのご指導を仰ぎ、これまでの経験を生かして研究に取り組んでまいります。2年間の交流期間ですが、どうぞよろしくお願いします。
*(株)エルコーエイに在籍。

交流研究員 本間 信一交流研究員 本間 信一(しんいち)

 4月から交流研究員としてお世話になります本間と申します。これまで会社では入社以来11年間、雪氷関連の調査をするセクションに在籍し、雪崩や積雪分布、吹雪、冬期道路管理などの調査に携わってまいりました。業務を行う上で心がけていたのは「学問と現場の橋渡し」です。今回このような機会を与えられたわけですから、少しでも現場に役立てていただける研究成果となるよう、そして雪崩による被害の軽減につながるよう、皆様のご指導を仰ぎながら努力してまいります。短い期間ではありますが、よろしくお願いいたします。
*国際航業(株)に在籍。

交流研究員 村中 亮太交流研究員 村中 亮太(りょうた)

 4月から1年間お世話になります村中と申します。会社入社して15年目となります。地すべりや崩壊の調査・解析・設計など、斜面防災に関わる仕事を中心に行ってきました。しかし、仕事では効率とコストが要求されるため、なかなか地すべり等の自然現象を深い部分まで掘り下げて検証することができませんでした。最近では技術者として、危機感を抱いていました。今回は、会社では経験できない集中して研究できるという貴重な機会をいただきました。皆様のご導を仰ぎながら、よりよい成果をあげられるよう努力するつもりです。個人的にも技術者としての資質を向上させるよい機会と考えています。どうぞよろしくお願いします。
*アジア航測(株)に在籍。


【ニュートンのリンゴの木観察日記】
ニュートンのリンゴの木
5月9日撮影
 今冬は、例年になく早い時期(12月初旬)からの積雪で大雪になり、リンゴの木も積雪に耐えきれず大きな枝が2本も折損するありさまでした。通常は4月下旬から咲き始める花も遅れ気味で、やっと連休明けから咲き出しました。花が南側に集中していることから今年は豊作になるのではと期待しています。ちなみに豊作だった16年は南側に集中して実がなりました。

 

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