雪崩・地すべり研究センターたより

【研究ノート】
2005〜6冬期雪崩常時観測の結果


  当センターでは平成17年度、新潟県糸魚川市の柵口および寒谷地区、長野県北安曇郡白馬地区と飯山市信濃平地区の計4地点で雪崩の観測を行いました。
 全地点で雪崩の映像と気象データの収集を行っており、とくに柵口および白馬地区では雪崩によって引きおこされる地面の微小な振動を地震計で計測し、降雪時や夜間など視界が悪い時でも雪崩の発生を捕えられるようにしています。
 今冬は全観測地点とも12月から1月中旬にかけて積雪深が急激に増加したため、雪崩が多く観測されるものとみられました。しかし、悪天候が続いたり1月中旬以降は積雪深の増加がおさまるなど観測条件に恵まれず、雪崩の映像の記録に成功した数は柵口地区を除いて例年並みかそれ以下という結果でした。
 その中で、白馬及び柵口地区では比較的大規模な雪崩のデータを取得することができました。1月12日には白馬地区で雪煙りをあげながら水平距離にして約1.5kmを流下する大規模な雪崩の映像を得ることに6年ぶりに成功しました。このような雪崩は上層の雪煙りと下層の高密度な層の2層構造をもつ場合が多いですが、下層部は地形の凹凸や傾斜の変化に敏感なため途中で停止してしまう一方、上層の雪煙りだけが長距離を流下して被害をもたらすことがあります。下の写真は雪崩の流下状況ですが、屈曲部付近で停止した下層部より200mほど下流まで雪煙りが流れる様子が克明に捕えられ、雪崩の内部構造と流動状態がよくわかる貴重な映像が得られました。

写真−4 白馬における雪崩の流下状況
写真−4 白馬における雪崩の流下状況

 また、1月5日未明に柵口地区で発生した雪崩では、地面から高さ10mに取りつけた山麓の気象観測用機材が設置以来6冬期ではじめて破壊されてしまいました。このときは夜間の悪天候時で雪崩の映像は得られませんでしたが、図1(左)のような、雪崩が山麓の観測点に近づくにつれて徐々に振幅が増大する、特徴的な地面の振動が記録されていました。振動データの振幅の積分値からは雪崩の規模が、また図1(右)のような周波数解析によって求まる卓越周波数(約9Hz)からは発生点までの距離がそれぞれ推定でき、映像がない場合でも雪崩の動態情報が得られます。今後は今冬得られた映像・振動データをすべてチェックし、豪雪時にどの程度の雪崩が発生したかをまとめることで、雪崩の発生予測の研究につなげていく方針です。

図−1 雪崩振動データと周波数解析結果
図−1 雪崩振動データ(左)と周波数解析結果(右)

(文責:伊藤)

 

【転出者挨拶】


小嶋 顔写真主任研究員 小嶋伸一

(H14.4.1〜H18.7.1在籍)

 7月1日付で、土砂管理研究グループ地すべりチームへ異動になりました。雪崩・地すべり研究センターには、4年3ヶ月間お世話になり、地すべり防止施設の維持管理に関する研究や地下水調査法の研究等に取り組んできました。
 センターの周辺には地すべり地等の現場も多く、現地での調査を通じて有意義な研究活動が実施できました。今後はこれらの経験を生かし努力をしていきたいと思います。また、在職中には多くの方々お世話になり、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 

ハスバートル 顔写真交流研究員 ハスバートル
(H17.7.1〜H18.6.30在籍)

  一年間は私にとって短い期間でしたが、花岡所長をはじめ、皆様のおかげで充実した研究生活を送ることができました。皆様には大変お世話になったことを心より感謝申し上げます。交流研究員の期間中、主に中越地震により発生した地すべりを調査し、その発生機構を検討しました。これは、地震による地すべりの発生機構について考える貴重な機会でした。研究結果が、今後地震による地すべり発生の危険度判定につながると期待しております。現在、富山の三和ボーリング株式会社にもどり、土砂災害の軽減のために、地すべり調査などの業務に頑張っています。


【転入者紹介】


伊藤 顔写真任期付研究員 伊藤陽一

(H18.7.1〜H21.6.30予定)

 北海道大学低温科学研究所から赴任してまいりました。これまで北海道内と富山県の黒部峡谷を中心に、積雪や雪崩の研究を行ってきました。当センターでも積極的に雪崩観測を行う予定で、現在観測施設等について勉強中です。新潟県では長岡市付近をはじめ、妙高笹ヶ峰などでも積雪の観測をした経験がありますが、雪質などが北海道の雪とは大きく異なり、興味深いものでした。早く北信越の雪に慣れ、雪崩防災に寄与する研究を進めていきたいと思います。

 

【業務分担表】
  4月1日付の研究員の異動により業務分担及び今年度の研究課題は次のとおりとなります。

役職 氏名 研究テーマ
センター所長  花岡正明
(上席研究員・特命担当)
研究総括
総括主任研究員  丸山清輝 地震に伴う地すべり土壌の強度変化特性調査
激甚な地震後における融雪機の地すべり特性
地すべり地における地下水調査技術の高度化
大規模地震に起因した地すべりの危険度評価手法
交流研究員  鈴木 滋
(H18.4.1〜H20.3.31)
交流研究員  村中亮太
(H18.4.1〜H19.3.31)
主任研究員  金子正則 豪雪時における雪崩危険度判定手法
雪崩要因の標高依存性と発生予測
合理的な雪崩対策施設配置に関する調査
雪崩常時観測による雪崩の発生動態解析
研究員  伊藤陽一
(H18.7.1〜H21.6.30)
交流研究員  本間信一
(H18.4.1〜H18.9.30)
主査  佐藤宗吾 研究支援(情報管理及び広報、対外調整等)
主査  阿部 悦 総務、会計事務

 

【ニュートンのリンゴの木観察日記】

 5月号で例年になく、たくさんの開花の報告をしましたが、南側の枝に鈴なりに実がなり、6月中旬に摘果(約230個)を行いました。まだ摘果が少ない気がしますが、現在約3〜4cmになった実(約370個)が元気よく育っており秋の収穫が楽しみです。しかし、病気?カラス?スズメ?の被害が見られ落果が多く心配です。病虫害被害を防ごうと職員による袋かけも行っているところですが、このリンゴには茎がほとんど無いため袋かけは難しく苦労しています。

ニュートンのリンゴの木 リンゴの実

撮影 7月下旬



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