雪崩・地すべり研究センターたより

【トピックス】
2007.3.25 富士山スラッシュ雪崩

前号で被害状況を速報した3月25日に富士山で発生したスラッシュ雪崩(図-1)について、4月に実施した調査結果を報告します。
図−1 スラッシュ雪崩の発生位置図
図−1 スラッシュ雪崩の発生位置図

1.スラッシュ雪崩の流下・停止状況
4月1日撮影空中写真の判読(国際航業(株))により、スラッシュ雪崩の流下痕跡は、富士山南西斜面の17渓流で確認できました。発生地点は標高3,000〜2,800m付近で、大沢川では峡谷部に流入し標高1,530mの大滝下まで達していましたが、他は概ね標高2,000m付近までで停止していました(図-1参照)。富士山スカイラインに堆積した雪崩堆積物の総体積は5,000m3程度で、当初表面全体をスコリア等土砂が覆っていたため、流出土砂量は多いと想定されましたが、断面観察の結果、スコリアを主とする土砂堆積物は厚さ数cm程度で表面を覆っているだけであり、その下層は土砂を含まない雪崩堆積物でした(写真-1)。
写真−1 富士スカイラインを襲ったスラッシュ雪崩
写真−1 富士スカイラインを襲ったスラッシュ雪崩

2.スラッシュ雪崩の発生時期と気象状況
大沢川では、25日8時から3時間の間に数回のスラッシュ雪崩の流出状況を富士砂防事務所がビデオ撮影し、規模の大きな流出が8時46分に見られました。また、防災科研の設置したスカイライン3合目の地震計では、同時刻に強い振動が観測され、同付近での発生時刻が、大沢川と同様の8時46分頃である可能性は非常に高いと考えられました。さらに同時刻の気象状況は、山頂の気温が最高を記録し、御中道(標高2,350m)では夜半から降った雨が連続雨量106mmに達していました(図-2)。
図-2 スラッシュ雪崩発生時の気象状況と大沢川で撮影されたスラッシュ雪崩映像
図-2 スラッシュ雪崩発生時の気象状況と
大沢川で撮影されたスラッシュ雪崩映像

3.まとめと今後の予定
今回発生したスラッシュ雪崩は、数年に1度富士山で発生するものと比べ、流下距離及び流出土砂量は小規模なものといえます。しかしながら、スカイラインが直撃を受け、また初めて流出映像が撮影されるなど貴重なデータが多く得られたため、詳細に調査を行いました。今後は、スラッシュ雪崩の映像などを詳細に分析することで、より有効なスラッシュ雪崩対策の検討ができると考えています。

学会等における研究発表
 最近の主な研究成果の発表です。

○日本雪工学会上信越支部(8/7,長岡技大)
・新潟県中越沖地震における国道8号長岡市大積地区の地すべり(概要) (花岡)
・豪雪時の雪崩危険箇所点検および応急対策手法に関する研究(中野,花岡,伊藤,高杉)

○地すべり学会研究発表会(8/29-30,四日市)
・加熱式センサを用いた地下水検層法の現地試験(丸山,花岡,鈴木)
・中越地震で滑動した地すべり地における地震後の挙動(鈴木,花岡,丸山,村中)
・中越地震で発生した再滑動型地すべりに関する研究(村中,花岡,丸山,鈴木)


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