国立研究開発法人 土木研究所     河道保全研究グループ 水工チーム
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水工チームでは以下の調査・研究を行っています。

1.外力増大と多様な流況変化に伴う土砂流下増大による河川構造物の機能確保に関する研究

2.河川洗掘に対応した橋梁下部構造の予防保全型メンテナンスに関する研究

3.3次元測量データを用いた横断構造物の予防保全に関する研究

4.流水型ダム構造による河川環境変化の実態把握と連続性確保に向けた検討

5.模型実験と数値解析を併用したベストミックスによるダム水理設計に関する検討

6. 新たな展開に貢献できる既存ダム・貯水池の能力評価技術の開発

7. 現場事務所等からの受託研究および技術指導




1.外力増大と多様な流況変化に伴う土砂流下増大による河川構造物の機能確保に関する研究
  気候変動により洪水外力が増大することが懸念されています。また、既存ダムではダム再生による事前放流等による容量の有効活用や、土砂を積極的に流下させる施設の運用が期待されています。これらの事象又は取組は、河川構造物の土砂による損傷等を加速・増大させ、河道や施設機能の不安定化を招く恐れがあるため、迅速かつ低廉な補修方法などの予防保全型の管理手法の確立により長期的に機能を安定させることが重要となっています。
  そこで、本研究では河川構造物全般を対象に、土砂による損傷箇所や損傷量の予測、その迅速な計測手法、損傷箇所の補修対策手法の検討を行うことで、トータルコストを低減できる河川構造物の設計・運用・維持管理手法を提案します。


2. 河川洗掘に対応した橋梁下部構造の予防保全型メンテナンスに関する研究
  先の令和元年台風第19号や令和2年7月豪雨などにおいて、道路橋が洗掘被害を受け、長期間の道路の通行止めや集落の孤立が発生しました。国土交通省が掲げる災害に屈しない国土づくりや持続可能なインフラメンテナンスの実現、インフラ分野のDX推進の観点から、最新の測量技術などを活用しつつ、橋梁の洗掘被害を未然に防ぐ予防保全型の管理が求められています。
  本研究では、まずは、河川の河床低下や局所洗掘などの被災メカニズムの解明を行うとともに、最新の測量技術など点検方法の整理を行います。その後、予防保全的に対策するために、重要度などに応じた判断基準や点検・対策の組み合わせを提案します。


3. 3次元測量データを用いた横断構造物の予防保全に関する研究
  堰、床固め、落差工などの河川横断構造物が洗掘や河床低下等の土砂移動に起因して被災する事例は従来から発生してきました。今後、気候変動によって洪水外力が増加する状況においても被災することなく適切に機能発揮するためには、横断構造物及びその周辺河道を点検・状態把握し、洪水応答を理解した上で、適切な時期に措置を施す予防保全型の管理が重要です。
  本研究では、整備が進められている河川内の3次元測量データを利用して、河道や構造物の洪水応答や被災メカニズムを解明しつつ、大量の点群データを用いた河床変動計算条件の合理的設定法を提示し、予防保全型の具体的な管理手法を提案します。


4. 流水型ダム構造による河川環境変化の実態把握と連続性確保に向けた検討
  流水型ダムには、河川の連続性(土砂輸送、生物移動)の確保を目的として、堤体底部に河床部放流設備が設けられています。しかし、流水型ダムにおける流砂系や環境影響の実態がほとんど分からず、総合土砂管理への効果や適切な環境影響評価手法に関する情報が不足しています。
  本研究は、流域環境研究グループ 自然共生研究センターとの分担研究で、流水型ダム周辺環境への影響の実態を把握するとともに、堤体上下流の生物移動を現地等で検証します。そして、環境保全に効果的な流水型ダムの特性を提案します。
  水工チームでは、モニタリング等に基づき、流水型ダムにおける土砂輸送の実態の把握を目的とした研究を行う予定です(自然共生研究センターでは生物移動に関する研究を行う予定)。


5. 模型実験と数値解析を併用したベストミックスによるダム水理設計に関する検討
  近年の流域治水への転換の中で、ダムの再開発等が加速する必要性が高まっていますが、ダムの再開発では新規建設に比べ、地形・構造・運用面で現場制約条件が複雑です。そのため、洪水吐き(減勢工含む)配置が難しく、施工段階毎の形状を考える必要もあるなど、検討項目が多く、水理設計の技術的難易度がより高まっています。
  我が国では水理設計の際に原則水理模型実験が必須とされていますが、従来の実験を主とした水理設計では、再開発ダム等に対して検討が難しく、今後は時間・コスト面で効率的な手法を構築していくことが不可欠です。本研究では、ダムの設計効率化・最適化によるダム事業への貢献を目指して、実験と数値解析のベストミックスによるダム水理設計手法の効率化(時間・コスト)を図ります。


6. 新たな展開に貢献できる既存ダム・貯水池の能力評価技術の開発
  気候変動による水災害の激甚化・頻発化等を踏まえたダム、河川の適応策の検討が必要となってきています。流域治水においても流域全体でのあらゆる関係者が協同する総力戦が唱えられています。
  本研究では、気候変動の影響を踏まえ、アンサンブル予測等の近年飛躍的に進歩している技術を用いて、ダムへの流入波形と貯水池内水面形を考慮して、ダム・貯水池の能力限界評価や対策検討を行います。


7. 現場事務所等からの受託研究および技術指導
  河川構造物は、ほぼ自然状態の地盤の上に建設される場合が多く、日常的な流水の作用に加え、出水時には極端に大きな力を受けることとなります。特に、構造物周辺に生じた地形変化は、構造物に作用する力を極端に変化させることもあり、単純な解析のみでは妥当な結果を得られない場合があります。さらに、社会システムとのかかわりの中で維持・管理されてきた施設も多く、総合的な視点からその解決策を検討することが求められています。
  国土交通省が建設・管理するような大きなダムでは、計画・設計・施工時の合理化によるコスト縮減効果は大きくなります。放流設備においても実績のある標準的な設計形状に囚われずに、各ダム固有の条件下でより合理的な放流設備を、その効果と安全性を確認しながら計画・設計することが求められています。また、堆砂対策や放流音対策についても個別ダムにおいて検討が求められています。
  上記のような課題について、現場事務所等からの要請により受託研究および技術指導を実施しています。


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河道保全研究グループ 水工チーム

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