メニューバー
ホーム>土木地質学とは
コンテンツ
ホーム
トピックス
土木地質学とは
土木地質学とは
地質チームの活動
研究内容
研究成果
研究施設
スタッフ
表彰
沿革
サイトマップ

メールアドレス
土木地質学とは

人間は地球の上で生き、暮らしています。人間には人間としての普遍的な性質と人間個々の個性があるように、地球には地球としての普遍的な性質と地域毎の特性があります。
 地球の普遍的な性質や地域の特性を調べるのが地球科学(地質学)だとすれば、このような知見をもとにして、人間が地球の上で、またそれぞれの地域で、上手に生き、暮らしていく方法を提案していくのが、応用地質学 (Applied  Geology)の役割です。
 この応用地質学のうち、地下資源の利用などを除いた、土木および建築、地質災害とその防災、また地下水などの地盤環境保全等、いわゆる土地利用全般にかかわる応用地質学分野が土木地質学 (Engineering Geology)とよばれています。
 つまり、土木地質学は、土地利用学の一分野であり、暮らしのための学問なのです。

日本は地質が脆弱で気象条件も厳しいため、毎年いたるところで災害があります。市民が安心して快適に暮らせるように、土木地質学者や土木地質技術者という数千人以上の専門家集団が、道路・河川・ダム・砂防などの基盤整備や維持管理、防災、環境保全等のさまざまな現場において陰で支えていることを、皆さんはご存じでしょうか。
 土木研究所地質チームは、土木地質学の研究・開発、体系化や標準化、技術指導、技術普及等によりこの専門家集団を支援し、時には代表して、市民の暮らしを守っていきます。

なお、主な辞書等には、土木地質学は次のように説明されています。

新版 地学事典(平凡社).地学団体研究会 編(1996)

「土 木構造物の一選定・設計・施工・保守などの主に土木建設方面に貢献する地質学。岩盤力学・土質力学と近縁関係にあるが、これに解消されるものではなく、対象地域の自然環境条件や地史的背景なども忘れてはならない。特に工学的色彩が強い場合、地質工学ともいう。広義には水文地質学や災害地質学なども含め、応用地質学とほとんど同義に使われることもある。 [岩松暉]

土木用語大辞典(技報堂出版).土木学会 編(1999)

「地質学の立場から、建設、防災、環境保全等の計画、設計、施工についての問題点の提示、考察・評価、提言等を行う学問分野。基本的には(1)対象地区の地質 (構造)、形成過程、性質、(2)地質の形態と現在起こっている現象との関係、(3)人間が働きかけることにより、どのように変化するか、の課題に答える のが土木地質学である。これらの課題に対しては地質的なものの見方、すなわち(1)ものをあるまとまり(単元)としてとらえ、階層性を明確にすること、(2)ものごとを歴史的・発展的にみること、が重要である。このことから将来に対する予測(予察)がある程度可能になる。
 1950年代までは、応用地質学(applied geology)は鉱床地質学と同義であったが、近年では土木地質学、環境地質学など広い分野をも含むようになった。その中でも土木地質学は応用地質学の主体をなすものである。」

地質工学用語事典(オーム社).S.H. Somerville and M.A. Paul著 畠山直隆 訳(1986), 原著はDictionary of Geotechnics  (1983)

「地質工学上の問題を解くための、地質学上の理論や手法の応用。特に、土木地質学は、大規模かつ技術的な仕事において、地質構造の影響を考慮し、また、現地調査を補助して、土木地質図をつくる準備のために、地質上のデータの使用法を考えるものである。学究的な分野としては、土木地質学は、土質工学や岩盤工学とは性質が異なる」

応用地質用語集.日本応用地質学会(2004)

「土木関連の仕事を計画し,進めていく過程で地盤に関する諸問題を地質学の立場から総合的に解釈,検討する学問」

以上のように、土木地質学は、主に地質学を応用して地盤を理工学的な視点で調査・評価することを通じて土木分野を支援するエンジニアリングの一分野です。また、重要なのは、単に地質学の知識だけでは不十分であり、必要に応じて地理学・地形学・測地学・地球物理学・地震学・火山学・土壌学・地下水学などの地球 科学分野、ならびに地盤工学・斜面工学・物理探査工学といった地球工学分野などの学際的な視点と高度な経験を援用して、土木分野の様々な課題を解決するための支援を行っていることです。これは、土木技術者の不足しがちな知識を補うという意味もあります。この点で土木地質学は総合技術といってもよいでしょう。

 土木地質学はこれまで、建設行政・国土交通行政などにおいて、ダムや道路などの基盤整備の分野で重要な役割を果たしてきており、その重要性は今後も変わりません。

しかし、近年の厳しい財政事情から、地盤の基本的な調査・設計においてもコスト縮減が求められています。このような情勢の中で、地質調査不足や不適切な調査・評価による工事のトラブル、設計変更、予期せぬ変状や災害、またこれらによる工事費や維持管理費の増大が生じないように、地質調査および評価技術の、いっそうの合理化・高度化・体系化を積極的に推し進める必要があります。

また、環境保全・防災・維持管理といった今日的で多様な行政ニーズに対しても、土木地質分野はこれまでにもまして貢献していく必要があります。

このためには、地盤の調査・評価技術の向上とともに、例えば、土木地質図・各種の地盤環境特性図・ハザードマップ・地盤データベース等の標準化・整備・活用など、行政機関の連携や官学民の連携により、新たな技術・調査体系や新たな事業の枠組みを創出していくことが必要です。

 このような課題に対応するには、土木地質学(主に学)や地質調査技術(主に民)の発展が重要な役割を果たすことはいうまでもありませんが、技術行政(官)的視点から、技術の発展を促し、また指針等により体系化し、さらにその成果を行政や技術者を通じて市民に還元できるように、技術開発から活用までの全体の枠組みを計画・管理していく必要があります。

 土木研究所地質チームは、このような総合的な立場から、土木地質学の有るべき姿と役割について長期的視点で研究等を進めています。

−お問い合わせ−
国立研究開発法人 土木研究所 地質・地盤研究グループ地質チーム
〒305-8516 茨城県つくば市南原1-6 TEL: 029-879-6769 FAX: 029-879-6734

Copyright (C) 2005-2016 国立研究開発法人土木研究所