研究の紹介

日本の橋を守る!! 〜 既設コンクリート構造物の診断技術に関する研究 〜

コンクリート内部の鉄筋の腐食
コンクリート内部の鉄筋の腐食
自然電位法の測定
自然電位法の測定
スウェーデン道路庁
スウェーデン道路庁

 日本国内には、既に膨大な数の土木構造物が建設されています。これらの多くは高度経済成長期に建設されたものであり、今後急速に老朽化していくことが懸念されています。これからの社会資本整備では、「構造物の維持管理をいかに効率的に行っていくか」が大変重要になってきます。
  コンクリート構造物は、コンクリートと鉄筋が共同で構造物に作用する荷重(例えば、自動車の走行や地震による荷重)に対する抵抗力を発揮します。ところが、建設から長期経過したコンクリート構造物では、コンクリート内部の鉄筋が腐食し、構造物の安全性が低下することが懸念されます。このため、コンクリート内部の鉄筋の腐食を非破壊的に検査できる診断技術を確立することが求められていました。土木研究所構造物マネジメント技術チームは、「自然電位法」という検査手法を用いてコンクリート内部の鉄筋が腐食環境にあるかどうかを検査する方法を検討してきました。自然電位法は、簡単な装置で測定を行うことができるため、実用化への期待が強く寄せられていました。今回の研究では、自然電位法を実際のコンクリート構造物で用いる場合の測定方法を提案することができました。
 また、研究成果の普及のため、スウェーデンにて「道路科学技術に関するワークショップ」で発表を行いました。このワークショップは、隔年で日本とスウェーデンの道路分野の技術開発について意見交換を行うために開催されているものです。自然電位法は海外でも研究が行われており、実用化にあたっての問題点などについて意見交換することができました。

 土木構造物も私たちの体の健康状態と同様に、健全な(健康な)状態を保つためには定期的な診断を行うことが不可欠です。今回の研究の成果が、コンクリート構造物の維持管理に役立つことができれば幸いです。

( 問い合わせ先 : 構造物マネジメント技術チーム)

日本の橋を守る!! 〜 鋼床版の疲労耐久性向上に関する研究 〜

鋼床版
内部
鋼床版疲労亀裂の種類
鋼床版疲労亀裂の種類
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鋼床版の疲労により舗装に損傷が生じた例
鋼床版の疲労により舗装に損傷が生じた例
部分構造の模型を制作して試験
部分構造の模型を製作して試験
試験の様子
鋼床版実大試験体による輪荷重走行試験
鋼床版実大試験体による輪荷重走行試験

 鋼床版とは、鋼の板を組み合わせた橋の床です。一般的にはコンクリートを鉄筋等で補強したコンクリート系床版が橋の床に使われますが、鋼床版はコンクリート系床版よりも軽いので、地形条件等によって橋が長くなってしまう場合などに、よく使われます。
 橋の床は、舗装を敷いて、その上を自動車が走ります。ダンプトラックやトレーラーなど、重い車が走ると、少しずつ疲労が蓄積していきます。もちろんこの疲労が蓄積しても、ほとんどの橋は安全性に問題はありません。しかし、重い車が極端に多く走る橋では、床の部分が疲労によって傷んでくるケースが、近年見られるようになってきました。
 鋼床版の疲労は、その前兆や進み具合が分かりにくい箇所で起こることがあります。写真は、舗装に変状が発見されて、調べてみたら鋼床版に疲労き裂が入っているのが分かった例です。知らないうちにき裂が入り、気がついたときには路面に段差ができて走行性が悪化するようなことは、避けなければなりません。
 土木研究所構造物研究グループ橋梁チームでは、鋼床版の疲労耐久性向上について研究しています。内容は、疲労き裂の検査方法の確立、疲労き裂の発生メカニズムの解明、き裂の発生した鋼床版の補修・補強方法の開発、疲労き裂を起こしにくい鋼床版の設計法の確立などです。
 対象とする疲労き裂の形態はに示すように数種類あります。このうち、デッキプレートとUリブのすみ肉溶接部に発生する疲労き裂が一番交通に影響を与えるため、まずこのき裂に対して検討を行っています。この疲労き裂の発生メカニズムを解明するために実施した、実大試験体を用いた輪荷重走行試験の様子です。この試験により、実際の橋で発生したのと同様な疲労き裂を再現することができました。また補修・補強方法としては、アスファルト舗装をより硬いコンクリート舗装に取り替えて、鋼床版に作用する局部的な力を和らげる方法などを研究しています。

 橋梁チームでは、今後も研究を積み重ねて、鋼床版の上を走る車の安全と快適な走行のために役立てていきます。

(問い合わせ先 : 橋梁チーム)