研究の紹介

河川流量観測の効率性と精度確保の両立のための技術開発


ADCP搭載橋上操作艇観測状況

非接触型流速計設置状況
左:超音波式、右:電波式

ADCP観測データ
(川の横断図、色は速さの違いによる)
(小貝川黒子観測所、平成19年3月15日)

 河川のある断面を単位時間に通過する流水量=流量を測ることは、河川の適切な計画・管理のための重要な業務です。土木研究所では、近年民間でその技術が発展してきている超音波技術を応用した河川流量観測センサなどについて、個別にそのセンサの観測精度を評価するとともに、それらの機器を活用することで、流量観測業務の効率化と精度確保を両立できる新しい観測手法の確立を目指しております。
 ここではその一例として、ADCP(超音波ドップラー多層流向流速計)と非接触型流速計を組み合わせた流量観測手法の開発について紹介します。
 ADCPとは超音波を川に照射して反射の状況から水の中の流れを3次元的に計算することが可能で、3次元的な流速と同時に川底のデータも計算していることから、機器を水の流れに対して横に移動させることで流量の算出も可能な機器です。土木研究所ではこのセンサの観測精度の検証を行い、安全・確実に観測出来る手法を検討しています。
 非接触型流速計とは、河川に掛かる橋などにセンサを取付け、超音波もしくは電波を川の水面に照射しその反射波の周波数変化(ドップラー効果)から表面流速を算出するもので、光ファイバ等の情報伝達装置を用いることで、無人かつリアルタイムでの観測が可能な機器です。
 ADCP観測により河川の流れの構造を把握し、洪水時などの河川の流れを数値計算で再現すること、非接触型流速計などを用いてリアルタイムかつ連続的に河川の流れを計測すること、これらの技術を組み合わせることで、低コストでより安全であり、かつ、精度が確保できる流量観測が可能となると期待されます。



(問い合わせ先 : ICHARM 水文チーム)

損傷した既設トンネルの補強技術の開発

     

トンネル補強方法の耐荷力確認試験の状況
(実物大のトンネルの内壁コンクリートの内側に
薄肉の補強をして、どれだけの耐荷力があるか
を確認します。)

鋼材と吹付繊維補強モルタルを用いた工法と破壊形態

 近年、老朽化したトンネルの増大に伴い、損傷したトンネルに対する適切な補修・補強技術が求められています。これまで、土の重さなどによる過大な圧力の作用によりトンネルが損傷した場合には、十分な補強効果が期待できる薄肉の補強方法がなかったため、内部のスペースに余裕がないトンネルではコストの高い大規模な工事で対応することもありました。
 そこで、当チームでは民間会社との共同研究により、トンネル内のスペースに余裕が無い場合でも十分な耐荷力が確保できる薄肉の内巻き補強技術を開発しました。
 新しい薄肉の内巻き補強技術の開発にあたっては、土木研究所内にある実物大のトンネルのコンクリート(大きさ:直径約10m、厚さ30cm)を設置できる実験装置を使って、どれだけの荷重に耐えられるかや、破壊形態を明らかにして、その補強効果を検証しました。
 今回開発した4種類の補強方法は、高強度コンクリートの中に短い繊維や特殊な形状の繊維等を混入させて変形性能を改善した材料を使用したものや、部分的に薄くしたPCL(プレキャストコンクリートライニング:専用工場においてあらかじめコンクリート製品を製作した後、現場へ運搬して設置を行う工法)などを使用したものです。
 いずれの補強方法も実大規模の実験によって、トンネル上方の土が緩んで、ある高さ相当の土の重量がトンネルのコンクリートの上部に荷重として作用した場合でも、損傷していないトンネルのコンクリートの耐荷力以上が得られることを確認しました。
 今後、今回開発した補強方法について過大な土の重さによる圧力の作用によって損傷したトンネルへの適用を行って、補強方法の効果を確認するとともに、耐久性についても確認していくことが重要であると考えています。



(問い合わせ先 : トンネルチーム)