編集委員

独立行政法人 土木研究所 Webマガジン 編集委員
広報幹事会 (つくば) ; 幹事長 : 和田 一範  代表幹事 : 秋田 富夫
         森木 晴美 鑓溝 敏雄 近藤 益央 菊地 稔 木村 慎  
         幹事 : 佐藤 仁昭 瀬戸下 伸介 鎌倉 亮 野々村 佳哲 長屋 優子
         加藤 祐哉 諏訪 守 岡安 祐司 海野 仁 石田 孝司 砂金 伸治
         野呂 智之 上仙 靖
         (寒地土研) ; 小町谷 信彦 和田 忠幸  代表幹事 : 畠山 乃  柴田正洋
         幹事 : 木津田 博文 酒井友里 川中麻衣子

編集後記

 ノーベル経済学賞のミルトン・フリードマンは、一般向けに書いた著書「選択の自由」の冒頭で、誰もが知っている鉛筆がいかに複雑な過程を経て完成するかを紹介し、市場の威力を説明しました。それらの過程に関わるものは、木材の搬出に使うトラック、ロープ、エンジン、麻、のこぎり、鉄鉱石、黒鉛、真鍮の精錬、労働者が飲むコーヒー・・・。それらに携わる何千もの労働者の多様な技術、異なる宗教と言語。彼は、これら複雑なものが鉛筆の製造のために協同する源が、自分自身の利益を追求する自発的取引であると、アダム・スミスの「諸国民の富」から答えを導きました。しかも、労働者たちは自分たちが製造した製品が鉛筆のために使われるということを知らずに取引をしている可能性が大いにあります。また、取引はゼロサムゲームではなく、自分にとって利益になるとお互いが信じないと成立しません。日本人の福沢諭吉も「学問のすすめ」の中で、学問の差が貧富の差に繋がるようなことを言っています。
 しかし、経済的動機に基づく市場原理だけに任せていると、公害や品質の低下などの問題が発生することがあり、それを「市場の失敗」と言います。工事で生態系の維持に配慮したり、外から見えないコンクリートの中を検査したりするのは必要なことですが、市場原理に任せていても実行されにくいものです。
 大昔の中国人の孔子は「論語」の中で、政治にとって必要なものは武器、食、民の信であるが、では、どうしても捨てなければならない時は何を捨てるかとの質問に、最初は武器、次は食と答え、民の信なくば立たずと述べました。土木研究所は重点的・集中的に実施する重点プロジェクト研究の1つとして、安全・安心な社会に向けて、災害等による被害を防止・軽減するために必要な研究開発を行っています。
(佐藤 仁昭)