土研ニュース

「第4回 CAESAR講演会」が開催されました


 第4回CAESAR講演会の様子



 基調講演の藤井聡教授



       

 2011年8月24日に、都内の一橋記念講堂において「第4回CAESAR講演会-直面する危機への対応-」を、構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)の主催により開催しました。本講演会では、道路橋の維持管理と、東日本大震災への対応について、幅広い視点で話題提供するプログラムとしました。
 基調講演として京都大学の藤井聡教授から、インフラの維持・更新の意義や東日本大震災からの復興計画について、「列島強靭化論(文春新書、2011.5)」を軸として、社会経済から技術的な話まで、1時間にわたって講演していただきました。
 国土交通省北陸地方整備局の平賀和文氏からは、塩害橋の損傷事例をはじめ、北陸地方で直面している道路橋の現状と維持管理の課題を紹介していただきました。また、道路橋の劣化に対する課題解決を含めて、CAESARで取り組んでいる研究や最近の成果について、桑原橋梁構造研究グループ長が紹介しました。
 後半は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に関する講演として、応急復旧への対応、橋梁の被害状況、今後の課題の3題を挙げました。国土交通省東北地方整備局の赤川正一氏は、震災当時、同整備局の道路保全企画官として、震災後の道路復興に大きく貢献されました。震災直後における道路橋の被災状況の把握や応急復旧対策等に関しては、国土技術政策総合研究所や土木研究所との連携を図りながら、中心的な役割を果たされました。その赤川氏を迎えて、当時の状況を津波の動画や多くの写真を交えて、詳細に説明していただきました。続いて、コンクリート構造物の耐震技術、耐久性、信頼設計等をご専門とされている早稲田大学の秋山充良教授(震災当時、東北大学に勤務)から、主に鉄道橋を例に、同地震による橋梁の被害状況と今後の課題を紹介していただきました。最後に、CAESARの星隈上席研究員より、震災経験を踏まえた今後の研究の取り組みについて紹介しました。
 講演会には、橋梁や震災復興に携わる道路管理者や民間の方など、さまざまな分野から多くの方々にお越しいただき、満席になりました(参加者496名)。聴講された方のアンケート調査では、藤井教授の講演をもっと聴きたかった、時宜を得たかつ内容の濃いプログラムであった、今後のCAESARの活動に期待する、今後もCAESAR講演会を続けてほしい、などのご意見が寄せられました。
 講演会の配布資料はホームページに公開中です。http://www.pwri.go.jp/caesar/lecture/lecture04.html


(問い合わせ先:CAESAR)

寒地土木研究所一般公開 「北の安心 土木が守るみんなの暮らし」


講堂でのパネル展示



堤防から水が溢れる様子を再現



クイズラリーの答え合わせにやってくる子供達

 寒地土木研究所は一体何を研究しているところなのかを広く地域住民の方々に知っていただこうと、毎年国土交通Dayのある7月に研究所の施設を公開しています。当研究所で行っている研究内容を分かりやすく紹介するほか、寒冷地の土木技術に関して興味をもってもらおうと様々な工夫を凝らしています。29回目となる今年の一般公開は「北の安心 土木が守るみんなの暮らし」をキャッチフレーズに7月1日(金)、2日(土)の2日間開催しました。両日とも晴天に恵まれた上、FM放送や新聞等に取り上げられたこともあって、1,081名の来場者がありました。

○研究所をまるごと展示
 講堂では、防災に関するものを中心に、寒地土木研究所の全チームの代表的な研究を紹介するパネルを展示し、各チームの研究員が研究内容や技術開発を説明して、来場者の様々な質問や技術相談に応えました。併せて展示した東日本大震災の甚大な被災状況を示すパネルには、多くの方が足を止めていました。また、土木の専門的な技術者の質問に詳しく答える「技術者のための研究説明コーナー」を設け、土木技術者向けの取組みを充実させました。来訪者からは「先進技術が分かりやすく説明された」という感想をいただきました。   

○遊んで学ぶ、学んで遊ぶ
 今年の一般公開では、防災をテーマにした展示や体験・実演コーナーを設けました。耐寒材料チームでは、コンクリートの強度を測定する圧縮試験機の実演を行ったほか、「川と災害」をテーマにした寒地河川チームと水環境保全チームでは、破堤模型を使って堤防から水が溢れる様子をリアルに再現し、人々の生活に必要な土木技術への理解を深めてもらいました。また、「冬将軍からみんなを守る技術」をテーマにした雪氷チームでは、防雪柵や防雪林の吹雪の時の効果わかる可視化実験や雪崩ビーコンを使って宝物を探す体験を行いました。アンケートでは「防雪林の説明が大変興味深いものでした」、「子供にも分かりやすい模型の設置が素晴らしい」と評価されました。
 来場者には随所に回答が潜むクイズラリーに挑戦してもらうことで、実験施設やパネル展示をくまなくご覧いただきました。行く先々で研究員のわかりやすい説明を受けて、より身近に研究所を感じていただけたと思います。子供達の好奇心一杯のまなざしや笑顔は、研究所職員の励みになりました。来年もより充実した展示内容になるよう努めたいと思います。


(お問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地技術推進室)

ICHARM 修士コース学生が「土木学会第13回国際サマーシンポジウム」へ参加


ZHOU氏による発表



Rodrigo氏による発表



会場の様子

 土木学会第13回国際サマーシンポジウムが、8月26日(金)、京都大学防災研究所にて行われました。これは、土木学会の国際活動のうち海外からの留学生支援活動の一環として行われるもので、英語での研究成果の発表の機会を設けることにより、日本に滞在中の留学生・エンジニアを中心に、国際交流と相互理解を深める目的で企画されたものです。
 ICHARMでは、(独)国際協力機構(JICA)と政策研究大学院大学と連携して、1年間の修士コース「防災政策プログラム 水災害リスクマネジメントコース」を2007年10月から実施しており、昨年度は2009年10月から12名が在籍していました。彼らには、コースの仕上げとして修士論文の一部を発表するように取り組ませていましたが、結果的にZHOU Huaqiang氏(中国)とRodrigo Fernandez氏(グアテマラ)の2名が発表することが出来ました。彼らが発表するセッションには、多くの留学生や研究者の参加があり、熱心な質疑応答が行われていました。
 ZHOU氏は、「Changes of Water Resources of Jiangsu Province Indicated by MRI-AGCM3.2S Projection」と題し、長江の河口域に位置して経済発展が著しい江蘇省における水関連問題の解決のために、現在から21世紀末の降水量を推定した高解像度大気循環モデルMRI-AGCM3.2Sを用いて、江蘇省の将来の水資源の変化について考察を行いました。
 Rodrigo氏は、「Assessment of Future Changes in Precipitation and Discharge in Motagua River Basin Using High Resolution Climate Model」と題し、グアテマラの大都市の多くが位置する最重要流域であるMotagua川流域において、現在から21世紀末の降水量を推定した高解像度大気循環モデルMRI-AGCM3.1Sと、流出解析モデルであるBTOPモデルにより計算された河川流量を用いて、気候変化によるMotagua川流域への影響について考察を行いました。
 また、このシンポジウムでは、土木学会のスタディーツアーグラントで来日していた4名からの発表もありました。彼らは1週間弱日本に滞在し、土木研究所をはじめ、千葉県の道路建設現場、人と防災未来センター、明石海峡大橋などを視察し、その結果を報告していましたが、土木研究所で視察した各種実験施設には大いに興味を持った様子でした。
ICHARMは10月から次年度の修士コースを開始する予定であり、次年度もこのような発表の機会を捉えて、積極的に修士論文の成果を公表するよう努める所存です。


(問い合わせ先:ICHARM)

土木学会全国大会・海外参加者向け見学会の開催


視察ルートの説明を受ける参加者



多々羅大橋の視察



来島海峡展望館にて来島海峡大橋の説明を受ける



大山祗(おおやまずみ)神社を参拝する参加者


          

 9月7日~9日、愛媛大学(松山)において、土木学会全国大会が開催されました。この一連のプログラムの中で、土木研究所では、メンバーが委員を務める土木学会国際委員会とともに、9月9日(金)、この学会に出席した海外からの参加者を対象とした現地視察を開催しました。モンゴル、韓国、フィリピン、ネパールなど6か国から合計32名の参加があり、愛媛県北端の今治市と広島県尾道市を結ぶ西瀬戸自動車道の多々羅大橋と来島海峡大橋を視察し、瀬戸内海の気象海象条件に対応した様々な土木技術について説明を受けました。
 多々羅大橋は、平成11年に世界最長の斜張橋として完成しました。当初は吊橋で計画されていましたが、斜張橋技術の進歩を背景に、景観性、経済性を考慮し、斜張橋に変更されました。来島海峡大橋は、幅約4kmの来島海峡に架かる世界初の三連吊橋として完成しました。来島海峡は海上交通の要衝であるため、船舶航行の安全性も考慮され、計画、建設されました。
 また、視察の道中、大三島にある大山祗(おおやまずみ)神社を訪れ、境内にある施設を見学し、瀬戸内海地域の歴史、文化にふれる機会もありました。
 本州と四国を結ぶ重要な幹線道路の建設に用いられた最新の技術や工夫の解説に海外からの参加者は熱心に聞き入り、関心を寄せていました。また、この見学会を通じて、土木技術に係る国際交流の進展が一層図られるものと期待しています。


(問い合わせ先:研究評価・国際室)

平成23年度「つくばちびっ子博士」施設公開
~ 高速走行体験とダム水理実験施設・振動実験施設の公開 ~


急傾斜のバンクを高速走行



迫力のダム模型実験



叩いて液状化を再現


 今年度の「つくばちびっ子博士」には、34の機関が参加協力し、土木研究所においても、例年と同様、国土技術政策総合研究所と共同で、7月29日に施設公開を実施しました。当日は曇りでしたが気温は高く、時々雨の降る蒸し暑い中、296名の見学者に来場していただきました。
 今年度の施設公開は、国総研の「試験走路」と土研の「ダム水理実験施設」または「振動実験施設」を組み合わせた2コースを用意し、2代の大型バスに分乗しての見学としました。
 試験走路では、最初にゆっくりと走りながら、試験走路内から見える様々な実験施設の概要紹介と南ループでの傾斜を体験しました。
 その後の試験走路でのメインイベントである「高速走行体験」では、最初のバンクに入る前は、「え~、本当に上るの?」と不安の混じった声も出ましたが、実際にバンクに入ると子供たちから「すごい。ジェットコースターみたい」と歓声があがり、きらきらと輝いている子供たちの目が非常に印象的でした。
ダム水理実験施設では、パネルでの説明を受けた後、実際に使われているダムの縮尺模型を間近に見ながら、子供たちは担当者の説明に聞き入っていました。
 振動実験施設では、担当者が施設の概要やこれまで行った実験の話などを、ビデオでの紹介を交えて説明しました。子供たちは熱心に聞き入り、3次元大型振動台の大きさに驚いていました。
その後、液状化再現装置による「液状化現象」を見学しました。
 「液状化現象」の再現では、3月の大地震により身近で大きな液状化被害が出ていることもあり、大人も子供も非常に関心が高く、装置の中で液状化が起こり、建物のような重いものは沈み、埋設管などの軽いものは浮いてしまうというメカニズムを目の前で見て、「なるほど!」といった声が聞こえてきました。
 当日は、たまに小雨が降り、試験走路の高速走行体験が実施できるか心配でしたが、全コースとも無事に実施することができ、来場者の皆さまには喜んでいただけたと思っております。
 これからも、未来を担う子供たちがこのような体験をすることで、将来、様々な分野で活躍してくれることを期待し、「ちびっ子博士」への参加を続けていきたいと思います。


(問い合わせ先:総務課)

土木学会Study Tour Grantの学生が研修に訪れました


土木研究所研究本館前で記念撮影


大型遠心力載荷試験装置を見学


RC橋脚載荷実験の様子を視聴

-部材耐震強度実験施設-



ダム模型を間近に見学



舗装の説明を受ける学生

-舗装走行実験場-

 土木学会がStudy Tour Grant事業で招へいしたアジアからの学生4名が、平成23年8月22日及び30日に土木研究所に研修に来ました。
この事業による土研の訪問は3回目になります。
 学生は、マレーシア、フィリピン、ネパール、バングラデシュから日本に招待され、それぞれが土木分野を専門的に研究しており、日本で約1週間かけて講義を受け、研究所、建設会社、建設現場を見学します。
土研では、全て英語で説明や質疑応答が行われ、土研の紹介や研究成果の説明を受けた後、実験施設を見学しました。
 まず講堂において、ICHARMが実施している研修・教育プログラムの、博士課程・修士課程の説明があり、また、鍋坂研究員からは、発展途上国のような水文観測が十分に行われていない地域において、人工衛星によって観測された雨量情報を用いて流出解析および洪水予測を行うシステム(Integrated Flood Analysis System,IFAS)の説明がありました。
 大型遠心力載荷試験施設では、装置を実際に見学した後、河川堤防などの液状化対策や擁壁の耐震対策の実験模様を見て説明を受けました。部材耐震強度実験施設では、大変位加振機・軸力載荷装置を実際に見ながら、直近に行われたRC橋脚載荷実験の様子を見て説明を受けました。ダム水理実験施設では、施設で行っている実験の内容やダムの形式の違いの説明を受けた後、実際に日本で供用中又は建設中のダム模型を間近で見学しました。舗装走行実験場では、日本の舗装事情の説明やヒートアイランド対策の遮熱性舗装と保水性舗装について説明を受け、実際に手を触れて温度の違いを体験しました。
 学生たちは、Study Tour Grantの最後に京都大学で行われる土木学会サマーシンポジウムでの発表のために、最新の情報や成果について熱心に質問していました。

※Study Tour Grantとは、日本の土木分野の実情と活動を理解してもらうために、土木学会と協力協定を締結している海外の学会に所属する土木技術者を招待し、日本への旅費、滞在費を助成し、土木関連の施設、研究所で研修するものです。このプログラム終了後、学生は日本と母国の2つの学会に報告書を提出することとなっています。


(問い合わせ先:総務課)

「土木の日2011一般公開」のお知らせ ~平成23年11月19日(土)~


実験施設公開(試験走路)



体験教室(水がきれいになる仕組みを知ろう!)



働く自動車の展示「道路パトロールカー」



橋コンテスト「表彰式」

 来る11月19日(土)9:30~15:00(受付は14:00まで)、土木研究所と国土技術政策総合研究所の共催で「土木の日2011一般公開」を開催します。このイベントは、「土木の日」にちなんで広く一般の方に、両研究所と土木事業についての理解を深めてもらうことを目的として毎年行っており、今年で18回目を数えます。
今年も毎年恒例の実験施設の公開や土木体験教室等を開催する予定です。

○実験施設公開
実験施設公開は、来場者に構内循環バスで見たい施設を自由に回ってもらいます。今年は「海洋沿岸実験施設(津波発生装置)」、「試験走路」、「舗装走行実験場」、「ダム水理実験施設」、「土石流発生装置」、「橋梁撤去部材」を公開する予定です。各施設では子供から大人まで楽しめるように詳しい解説を交えながら実験や実演を行います。
○土木体験教室
土木を身近に感じてもらうための体験教室では、「アーチ橋の模型を作ろう!」、「液状化を再現してみよう!」、「水がきれいになる仕組みを知ろう!」、「 景観シミュレーション」、「トンネルの掘削実験」等の教室を設置する予定です。
○東日本大震災パネル展示
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、地震および津波により、大きな被害が発生しました。土木研究所では、地震発生直後から専門家を被災地へ派遣し、技術的な支援を実施してきました。今年の土木の日では、これまで活動をパネル展示にてご紹介する予定です。
○その他
 関東地方整備局の協力による「働く自動車」の展示や、つくば市内の小学校5年生が作成した「ボール紙でつくる橋コンテスト」の作品展示とその表彰、吾妻小学校マーチングバンドなどなど幅広い年齢層に楽しんでもらえるイベントも開催する予定です。

 土木の日一般公開は、研究所の研究内容や土木事業の重要性をアピールする数少ない機会の一つです。今年度もよりよいイベントにしたいと思っていますので、ご期待下さい。

土木の日一般公開の詳細については、土木研究所ホームページをご覧下さい。


(問い合わせ先:研究企画課)