研究成果の紹介

ALICC工法-軟弱地盤の長期沈下抑制工法-の紹介


深層混合処理工法の様子



従来の地盤



改良ALICC工法による地盤改良 (改良面積と体積を低減可能)


アーチ効果の概念 (適切な杭の間隔を設計可能)

1:ALICC(Arch action Low improvement ratio Cement Column)工法
 日本で道路を建設する場合、非常に深い軟弱層がある地盤上に高い盛土を構築する場合が多く、大きな沈下が発生し、周辺の家屋や田畑に影響及ぼすことが懸念されます。
 そこで、地中にセメント噴出しながら、攪拌することで、セメントの杭を作成し、盛土の基礎とする深層混合処理工法と呼ばれる地盤を改良する工法が広く用いられています。
 しかしながら、盛土の斜面部を中心にセメントの杭を作成する従来のやり方では、改良面積や体積が大きくなってしまい、大きなコストが発生してしまいます。
 そのため、当チームでは、少ない改良面積や体積で施工が可能となる様に、アーチ効果を活用した低改良率地盤改良工法「ALICC工法」を開発しました。アーチ効果を設計に活用することで、盛土の下を等間隔で全面的に改良することが可能となり、改良面積や体積を減らすによるコスト縮減、工期短縮が可能となりました。

2:アーチ効果
 盛土が立ち上がるにつれて、セメントの杭に盛土荷重が作用していく応力の集中現象を、盛土荷重がアーチ状に作用するものとして仮定した設計理論です。この理論を用いることで、地盤や盛土の強さに対して、適切な間隔を決めることが出来るようになり、より経済的な設計が可能となりました。
 現在、日本各地で使用されており、今後も技術の普及に努めていきたいと考えています。


(お問い合わせ先:施工技術チーム)

泥炭性軟弱地盤に道路などを建設・管理するための技術者向けのマニュアルを発刊
〜泥炭性軟弱地盤対策工マニュアルを平成23年3月に改訂〜


北海道の典型的な繊維質の多い泥炭



泥炭地盤上の道路の長期にわたる沈下による段差


泥炭性軟弱地盤とは?
 寒冷な地域には、「泥炭(でいたん)」と呼ばれる土が広く分布しています。泥炭は、沼とか湖などの湿地に生えているヨシ、スゲなどの植物が、枯れて倒れて積もってできたものです。温度が低い、湿度が高いといった環境のもと地形的条件によっては、枯れた植物が十分に分解されないまま、自然に積もって厚みを増していきます。わが国では北海道や東北地方にまとまった泥炭地が見られます。規模の小さい泥炭地は、全国各地に散在しています。北海道でよく見られる泥炭層の厚さは3〜5m程度ですが、通常、その下に軟らかい粘土層が堆積しています。この粘土層の厚さは20mを超えることも珍しくありません。このように表層部に泥炭が堆積し、その下に軟弱な粘土が厚く堆積した地盤のことを「泥炭性軟弱地盤」と呼んでいます。泥炭の特殊性に加えて、厚い軟弱粘土層の存在が、泥炭性軟弱地盤の扱いをより難しくしています。

泥炭の特徴
 泥炭は、植物繊維が互いに絡み合いながら、ヘチマのような海綿状の組織を形成しています。一般的な土からはおよそかけ離れた特殊な土といえます。泥炭にはすき間がたくさんあって、そのすき間にはたっぷりと水が含まれています。このため、わずかな荷重が載っただけでも大きな沈下を生じます。さらに、沈下が長期間にわたって続くという問題があります。また、泥炭は強度が極めて小さいため、土を盛り上げたりするとその重さに耐えられなくなって壊れてしまうこともあります。

マニュアルの改訂のポイント
 このように泥炭は、極めて特殊な性質を持っているので、試験調査や解析に通常の方法が使えません。そこで、これまでに得られた多くの経験と研究成果を整理し、調査・設計・施工の標準的な考え方をとりまとめ、「泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル」として平成14年3月に発刊しました。
 平成23年3月の改訂では、泥炭性軟弱地盤上の盛土について、建設費と維持管理費を含めたライフサイクルコストを小さくすることに着目しました。泥炭性軟弱地盤に安全で快適に車が走れる道路を造るためには、あらかじめどれくらい沈下するのか、いつまで沈下を続けるのか、それらを予測して適切な対処をしなければなりません。そこで、予測が難しいといわれている長期にわたる泥炭性軟弱地盤の沈下を精度よく求める方法を開発しました。このほかに、設計法・施工管理法に進展があった対策工法に関する知見を取り入れたり、地震時の検討法など新たな調査・設計技術を盛り込むなど、内容の充実を図りました。
 寒地地盤チームでは、引き続き泥炭性軟弱地盤に関する研究を実施し、その都度、現場に活用できる技術を情報発信していく予定です。本マニュアルが、現場技術者に有益な技術マニュアルとして役立ち、ますます活用されることを期待しています。



(お問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地地盤チーム)