研究の紹介

高頻度河口地形測量による土砂移動メカニズム解明への取り組み

図-1 調査位置図

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図-2 2013年4月12日〜6月6日の融雪期に

おける地形変化量(コンター線は4月12日

測量時の標高)(クリックすると拡大します)


図-3 2013年9月7日〜9月20日までの

地形変化量(コンター線は9月7日測量時

の標高)9月16日に台風18号が通過。

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1.複雑な土砂動態を示す河口域での高頻度地形測量の重要性について

  河口周辺で生じている海岸侵食の対策を検討する場合、河川から海域へ流出する土砂の量や移動機構を明らかにする必要があります。河川から流出する土砂、とくに、海浜地形を形成する比較的粒径の大きい土砂は河口付近に堆積します。堆積した土砂の量は土砂が堆積する前後に測量を行うことによって求めることができます。また、河口付近に堆積した土砂は時間の経過とともに波や流れの影響を受けて広範囲に移動するため、土砂の移動機構を把握する際には高頻度で測量を行う必要があります。しかしながら、通常、河口域での測量が高頻度で行われることはほとんどありません。多くとも年に1、2回程度です。この程度の頻度では、次の測量が行われるまでに土砂が大きく移動していることがあるため、土砂の流出量や移動機構を正確に把握することはできません。


2.高頻度地形測量による河口域の土砂動態の把握

  寒冷沿岸域チームでは、過去数十年間で汀線が300m以上も後退した北海道南部の鵡川河口域を対象として(図−1)、月に1、2回程度の頻度で河口域の測量を行うことにより、鵡川から流出する土砂の量と移動機構の解明を試みております。測量は2013年4月から2014年3月までの間に17回実施しました。積雪寒冷地である北海道では、おもに融雪期と台風来襲時に河川流量が増加して多くの土砂が海域に流出します。2013年の融雪期では、最大で200〜400 m³/s程度の出水が断続的に生じた結果、河口近くに約4.6万m³の土砂が堆積しました(図−2)。堆積した土砂の一部は左岸側の砂州の形成に寄与していることが確認されました。また、2013年9月の台風18号来襲時に生じた約900 m³/sの出水では、河口から約300m沖まで4.0万m³程度の土砂が運ばれました(図−3)。沖に堆積した土砂はその後、波の作用によって岸側へ移動して、河口地形の形成に寄与することがわかりました。


3.今後の予定

  現在、より詳細な解析を進めているところです。今後は河川流量と流出土砂量との関係、さらに、波浪と土砂の移動量・移動機構などの関係を明らかにする予定です。


(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒冷沿岸域チーム)

縮尺模型を用いた風洞実験による防雪施設の検討

図-1 風洞実験装置

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写真-1 模型吹き払い柵

(左から閉塞率0,50,100%)

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図-2 吹きだまり高さ

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図-3 流速(水平方向成分、H=5mm)

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1.風洞実験の目的

  北海道のような積雪寒冷地の道路には、吹きだまりや視程障害などの吹雪対策のため、防雪林、防雪柵といった防雪施設が数多く設置されています。

  寒地土木研究所では雪氷チームが中心となって、これら防雪施設の機能強化や機能維持のための管理方法などに関する研究を行っていますが、寒地機械技術チームでは、これらの検討の基礎資料とするため、縮尺模型を用いた風洞実験を行っています(図−1)。


2.吹き払い柵の機能維持に関する研究

  風洞研究の一例について紹介します。

  防雪柵の一種に吹き払い柵があります。これは、複数の防雪板によって、道路側方からの風を運転視界より低い道路表面付近に収束させることにより、道路上の視程障害や吹きだまりを軽減するための施設で、路側に設置可能であることから、広く普及しています。

  この吹き払い柵の下の隙間(以下、「下部間隙」という)が積雪や吹きだまりによって閉塞していくと、防雪機能が低下することが指摘されていますが、この機能低下は定量的には把握されていないため、下部間隙の除雪の時期や方法については明確になっていません。

  そこで、下部間隙の閉塞が防雪機能に与える影響を風洞実験によって検証しました。

  実験は、1/100模型を用いて、模型雪として活性白土を230g/minで風洞内に供給、風速は地面からの高さ400mmで7m/sに設定し、0%、30%、50%、80%、100%の5段階の閉塞率で(写真-1)、吹きだまり高さおよび流速について計測を行いました。その結果、閉塞率が50%までは大きな変化はないものの、閉塞率が80%以上になると、吹きだまり形成や流速低下が顕著になり、防雪機能が大きく低下することが分かりました(図-2、3)。


3.おわりに  

  以上のように、風洞実験は防雪施設の基本検討に有効であり、吹雪による災害を防止するため、今後も雪氷チームとともに研究を継続していきます。


(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地機械技術チーム)