研究成果の紹介

コスト縮減と工期短縮を目指した低改良率な地盤改良工法の開発
-ALiCC工法-



(a)従来の地盤改良方法

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(b)コスト縮減を図った従来方法

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(c)ALiCC工法

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図1 従来の固結工法と
ALiCC工法の比較


1 軟弱地盤の改良


  近年、我が国の道路をはじめとする構造物は、非常に軟弱な地盤上に計画されていることが増えております。そのため、道路等を建設する場合でも軟弱地盤の上に建設しなくてはなりません。

  軟弱地盤上に道路を建設すると、盛土の重さにより軟弱地盤が沈み込んだり、横にすべったりする他、周りの建物にまで悪影響を及ぼす場合があります。このような問題が起こらないようにするため、軟弱地盤を固め、地盤改良を行います。


2 従来の固結工法とALiCC工法


  地盤改良の1方法としてセメントのような材料を土の中に入れて固め、構造物の荷重を下方の支持層に伝える固結工法があります。この工法ではドリルのように垂直に穴を掘り、セメントを入れ、円い柱(改良体)を造ります。

  固結工法を用いて軟弱地盤上に盛土を造る場合、従来は図-1(a)のように盛土の直下に全面的に改良体をつくりました。このような全面改良では盛土の下が完全に固くなるために沈みやすべりといった問題は起こりにくくなりますが、大量のセメントや多くの作業が必要になります。そこでできるだけ少ない改良体で盛土を支えるための技術開発が行われてきました。その一つの方法が、図-1(b)のように盛土の端部だけに改良体を入れる配置法です。この工法では、コストは安くなりますが、盛土の中央付近に大きな沈下が発生してしまいます。

  そこで、コストの縮減と沈下の集中発生をなくすため、図-1(c)のように盛土の直下にまばらに改良体を配置する方法を考えました。そのための計算方法を「ALiCC工法」と呼んでいます。ALiCC工法では、盛土の直下にまばらに配置した改良体と改良体の間に土のアーチができるという特徴です。全面改良よりも作業も材料も少ないためにコストが安くなります。全面改良に比べると軟らかい地盤が残っている分、沈下が起こってしまいますが、どこかに集中して発生するわけではないので、路面上には大きな凸凹は発生せず、盛土の上を走るような場合でも問題が少なくなります。

  ALiCC工法は平成25年度第15回国土技術開発賞を受賞し、平成25年度末までに国土交通省や地方自治体等で83件の使用実績があります。今年度も、国土交通省九州地方整備局長崎河川国道事務所をはじめとする多くの工事で使用される予定となっており、長崎河川国道事務所の協力を得て、ALiCC工法説明会及び現場見学会を開催し、より一層の本工法の普及を図る予定にしています。



(問い合わせ先:施工技術チーム)


吹雪による視界不良の予測と情報提供「吹雪の視界情報」



パソコン:

http://www.northern-road.jp/navi/touge/fubuki.htm

スマートフォン:

http://www.northern-road.jp/navi/touge/sp/fubuki.htm

携帯電話:

http://n-rd.jp/

図-1 吹雪の視界情報の提供

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図-2 事前に注意を喚起するメールの

自動配信サービス

(メール配信登録はこちら)

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図-3 吹雪の視界情報 アクセス数の推移

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吹雪災害のリスク軽減のために


  北海道をはじめとする雪国では、吹雪時の視界不良など非常に厳しい運転環境にあるため、防雪林や防雪柵等の吹雪対策整備が進められています。しかし近年、急激に発達した低気圧の影響により、これまで吹雪が滅多に起きなかった場所でも、吹雪による交通障害が発生する等、これまでの施設による吹雪対策だけでは、対応が難しい状況が見られるようになってきています。

  こうした状況には、刻々と変化する吹雪について最新の情報を伝えることにより、吹雪時の道路管理者や道路利用者の適切な行動判断を支援することが、極めて重要と考えられます。


「吹雪の視界情報」とは?


  寒地土木研究所雪氷チームでは、気象データから吹雪時の視界不良の程度を開発し、平成20(2008)年度にインターネットサイト「吹雪の視界情報」で視界不良(現況値)の情報提供を開始し、平成24(2012)年度からは予測情報の提供も行っています。現在の「吹雪の視界情報」では、北海道を基本的に市町村単位の203のエリアに分割し、現況は30分ごとに、予測情報は午前6時から午後9時まで3時間ごとに情報提供しています。予測情報は1〜6時間先は1時間毎の、それ以降は9、12、24時間先の予測となっています。視界不良の程度は、「良好(1000m以上)」、「やや不良(500〜1000m)」、「不良(200〜500m)」、「かなり不良(100〜200m)」、「著しい視程障害(100m未満)」の5ランクに区分し、エリアごとに色分け表示を行います(図-1)。

  また、事前に視界不良への注意を喚起するため、「メール配信サービス」を、平成25(2013)年12月に開始しました。メールアドレスと地域、視界不良の程度等の条件を登録すると、視界不良が予測された際にメールが自動的に届きます(図-2)。


暴風雪時の行動判断を支援


  「吹雪の視界情報」の日平均アクセス数は、年々増加の傾向にあり、予測情報の提供を開始した平成24(2012)年度には1,119件、マスコミ等で紹介された平成25(2013)年度には2,416件と大幅な伸びが見られました(12〜3月)。図-3は平成25(2013)年度の1日ごとのアクセス数で、北海道東部を中心に吹雪による通行止めが多発した2月17日には、過去最多の約11,000件のアクセス数があり、こうした天候悪化時のアクセス数の急増から、利用者が「吹雪の視界情報」を行動判断に活用している様子が伺われました。

  前がよく見えない雪道ドライブは心細いものですが、吹雪による視界不良が、いつどこでどの程度発生するかを知っておけば、安心感がグッと高まることでしょう。最近流行のスマホ版もご用意しましたので、雪道ドライブのお供に「吹雪の視界情報」をぜひご活用下さい。


(問い合わせ先:寒地土木研究所 雪氷チーム)