研究成果の紹介

石礫処理工法による土壌改良の効果に関する研究 ~石礫破砕工法による土壌物理性の検証~


写真-1 石礫施工前の圃場地表状況

写真-1 石礫施工前の圃場地表状況


写真-2 石礫除去工

写真-2 石礫除去工
(表土内の石礫をバケットでふるい、
バケットに蓄積された石を圃場外へ搬出、
除礫後の山積み表土を整地します。)


写真-3 石礫破砕工

写真-3 石礫破砕工
(表土内の石礫をクラッシャーで
破砕します。)

  農地では、しばしば石礫が出現し、営農作業の支障となっています(写真-1)。このため、農業を支援する国や道府県が実施している圃場を整備する工事により、石礫処理を実施し、土壌の粒度分布等の改善を図っています。北海道内での石礫処理工法は、表土をふるいに掛けて石礫を採取し、圃場外へ搬出処理する石礫除去工(写真-2)が施工されていますが、近年は表土の石礫を機械的に破壊し、施工費が安価で経済性に優れている石礫破砕工(写真-3)の施工もされてきています。

  石礫破砕工は、砕いた石礫を表土に戻すことから、施工後の表土の物理性(排水性、保水性)に変化があるのかどうかを、石礫処理施工前、施工直後および施工後1年目から3年目までの経年調査を行うことで検証しました。

  その結果、石礫破砕工の施工に伴い、石礫破砕直後は表土が膨軟なることから、営農機械の走行性を確保するため、石礫破砕後の整地工による締め固めが有効であることを確認しました。

  石礫除去工と石礫破砕工の両工法とも、施工後3年目まで表土の石礫含有率(容積比)が施工管理基準の2%以下に保たれていることを確認しました。また、工法による土壌の物理性の変化を確認したところ、土壌硬度は両工法とも適切な硬さで、土壌の透水性も良好を確保しており、施工後3年目までに営農作業に支障がある耕盤層(耕起や農作業機械の踏み固めよりできる堅密な土層)の形成はありませんでした。併せて調査した表土の全炭素、全窒素、保肥力の化学性調査でも石礫処理工法による経年的な変化に違いは認められず、表土の物理性、化学性の経年的な悪化は認められませんでした。

  石礫の最大粒径、圧縮強度、含有率などが石礫破砕工法適用可能な条件の圃場について、石礫破砕工で石礫処理を実施することでコスト縮減が可能となります。安価で適切な土壌改良効果が確保できる石礫破砕工採用に向けて農家への説明に調査内容が利用されており、効率的な圃場の整備工事の推進に活用されています。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 資源保全チーム)

街路樹の景観機能に資する樹形管理方法について


図-1 樹形タイプ別望ましい樹高・枝張り比(目安)

図-1 樹形タイプ別望ましい樹高・枝張り比(目安)


図-2 樹高・樹高・枝張り比の算出方法

図-2 樹高・樹高・枝張り比の算出方法


図-3 印象評価実験に用いたフォトモンタージュの構図例

図-3 印象評価実験に用いたフォトモンタージュの構図例


図-4 印象評価と緑視率の関係

図-4 印象評価と緑視率の関係

はじめに

  街路樹は、沿道環境や景観の向上をはじめ、遮光や視線誘導による交通安全機能、緑陰の創出による寒暖や乾湿等の緩和など多くの機能を有しています。しかし近年、せん定頻度を減らすことによるコスト縮減、落ち葉に対する沿道住民からの苦情への対応などのため、枝を短く切り詰める過度なせん定が行われる事例が見られます。これは、街路樹の機能を喪失してしまうだけでなく、街路樹の健康を損ねたり、枯死を招く原因ともなっています。

  そこで本研究所では、街路樹の主要な機能のひとつである景観機能を維持できる、適切なせん定方法について研究を行いました。


研究成果の概要

  街路樹せん定ハンドブック((社)日本造園建設業協会,2011)では、現在街路樹として利用されている樹種について、「樹形タイプ別望ましい樹高・枝張り比(目安)」(図-1)と「樹形タイプにおける望ましい樹高・枝張り比の算出方法」(図-2)が示されています。図-1の表の値を図-2の式に代入することで“望ましい樹高”を求めることができますが、“望ましい樹高・枝張り比”は一部を除き幅を持った値であるため、計算から求められる“望ましい樹高”も幅のある値となり、これをせん定を行うための基準として利用することはできませんでした。

  そこで、景観機能が最も高まる“望ましい樹高・枝張り比”を求めるため、樹高と枝張りの状態が景観にどのような影響を与えるかを調査しました。様々な構図や樹種について樹高や枝張りを改変したフォトモンタージュ(図-3)を作成し、それに対する印象(好き/嫌いの程度)を被験者に評価してもらうとともに、緑視率(画像に対して幹、枝などを含む樹木等が占める割合)を算出しました。印象評価と緑視率の関係(図-4)を見ると、緑視率が高くなるほど「好き」の評価が高くなっていることが分かります。しかし、緑視率15~20%でピークを示し、それを越えると逆に低下する傾向があることが分かりました。

  緑視率がピーク付近のフォトモンタージュを見てみると、樹高・枝張り比が“望ましい樹高・枝張り比”として示された幅の中間値付近となっていることが明らかになりました。このことから、“望ましい樹高・枝張り比”の中間値と、それから求められる“望ましい樹高”を、景観機能を維持できる樹形として街路樹を管理することを提案しました。

  この成果は、平成28年の「北海道の道路緑化指針(案)」の改訂にあたり、「第5章施工・管理」に反映されました。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 地域景観ユニット)