研究成果の紹介

土層強度検査棒を用いた表層崩壊危険箇所の把握

1.はじめに

  斜面災害の多くが 斜面の表層数メートルが薄く崩れる「表層崩壊」という現象により生じています。かつて表層崩壊はどこでも起こる災害と考えられてきました。しかし、これまでの研究で表土の深さや強度、勾配といった要素を詳しく調査すれば、危険箇所を絞り込めることがわかってきました。

  実際の斜面では、これらの分布は不均質性が強いため、絞り込みには多点での調査が必要です。しかし、ボーリング調査は多額の費用を要するため調査地点が限られる傾向があり、簡易動的貫入試験など、一般的に実施されている簡易的な地盤調査手法でも、得られる物性値が限られている、地盤を構成する材料の把握が困難である、などの課題がありました。

  そこで、土木研究所では従来手法に比べて表土の深さや強度を安価かつ迅速に調査できる「土層強度検査棒」(土検棒:どけんぼう)を開発しました(写真-1)。

写真-1 土層強度検査棒(左写真:全体構成 右写真上:ベーンコーン 右写真下:円錐コーン)
写真-1 土層強度検査棒
(左写真:全体構成 右写真上:ベーンコーン 右写真下:円錐コーン)


2.土層強度検査棒の概要

  土層強度検査棒は、5mまでの深さを対象に、表土の深さや貫入強度やせん断強度を測定することができる装置で、重さが5kg程度と従来の簡易動的貫入試験器の4分の1程度と軽く、これまで困難であった山地斜面での調査を容易にしました(写真-2)。

  ロッドの先端に円錐コーンを取り付けて人力で押し込むことにより、崩壊の要因となる表土の深さを数分で測定できます。また荷重計を用いて押し込むことにより、計測される表土の貫入強度から、スウェーデン式サウンディング試験機の換算N値や簡易動的貫入試験のNd値への変換も可能です(図-1)。さらに、ベーンコーン(円錐コーンに羽根状の板を取り付けたもの) をロッドの先端に取り付け、トルクレンチで回転させることで土をせん断して、その測定値から土のせん断強度(粘着力C、内部摩擦角φ)を簡易に推定することができます。

写真-2 試験実施状況と各測定時における装置の組み合わせ
写真-2 試験実施状況と各測定時における装置の組み合わせ

図-1 土層強度検査棒と既往試験との比較例
図-1 土層強度検査棒と既往試験との比較例

  地質チームのホームページ(https://www.pwri.go.jp/team/tishitsu/topics_dokenbo.htm)に詳細な使用方法や使用にあたっての留意点を記したマニュアル(土木研究所資料第4176号「土層強度検査棒による斜面の土層調査マニュアル(案)」)や関連する動画などを公開しています。また、土木研究所では民間企業等とともに研究コンソーシアム「土層強度検査棒研究会」を構成し、土層強度検査棒の普及や精度向上等の技術開発に向けた取り組みを進めています。



(問い合わせ先 : 地質チーム)

積雪寒冷地におけるコンクリート舗装の設計・施工  ~手引き(案)の紹介~


図-1 凍上によるひび割れ発生のメカニズム
図-1 凍上によるひび割れ発生のメカニズム

図-2 FEM解析結果
図-2 FEM解析結果
図-3 手引き(案)
図-3 手引き(案)


1. 積雪寒冷地におけるコンクリート舗装の課題

  近年、社会資本整備・維持管理面のコスト縮減に対する社会的要請から、道路舗装においても高耐久化・長寿命化によるライフサイクルコストの縮減が求められており、アスファルト舗装よりも耐久性が高く長寿命化が期待できるコンクリート舗装への関心が高まっています。しかし、積雪寒冷地である北海道においては、凍上や融解期の路床の支持力低下によるコンクリート舗装の構造的な破損が懸念されており、国道延長に占めるコンクリート舗装の割合は全国平均の5%よりも低い3%程度となっています。

  そこで、積雪寒冷地におけるコンクリート舗装の課題を整理し、凍上による破損に対する対策法の提案を行いました。図-1にコンクリート舗装の凍上による破損のメカニズムを示します。舗装の下に凍上する土が存在し、その深さまで寒さが到達すると、土中の水分が凍結してアイスレンズ(氷の層)が発生し、このときコンクリート舗装版の下に不陸が生じることがあります。そこに車両の荷重が加わると、不陸がない場合と比較して大きな負荷が舗装版にかかり、早期にひび割れが発生してしまいます。当チームでは、現地調査、解析結果(図-2)をとりまとめ、わずかな不陸であってもコンクリート舗装の寿命を低下させることが確認されたことから、「路床設計においては凍結深さまで非凍上性材料で構成させる」ことを提案しました。


2. 設計・施工に関する手引き(案)

  当研究所を含む産・学・官から構成された北海道土木技術会舗装研究委員会において、コンクリート舗装に関する検討が行われ、積雪寒冷地において設計・施工する上で留意しなければならないことを集約した「積雪寒冷地におけるコンクリート舗装の設計・施工に関する手引き(案)」が平成29年9月にとりまとめられました。本手引き(案)では、当チームの凍上に関する研究成果も反映されております。 手引き(案)は北海道土木技術会舗装研究委員会または、当チームのHPより無料でダウンロードができますので、ご活用いただければ幸いです。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地道路保全チーム)