研究成果の紹介

ワイヤロープ式防護柵の普及拡大


写真-1  ワイヤロープ式防護柵
写真-1  ワイヤロープ式防護柵

写真-2  スリーブ打ち込み、支柱建て込み、ワイヤ設置
写真-2  スリーブ打ち込み、支柱建て込み、ワイヤ設置

写真-3  既設橋梁用支柱
写真-3  既設橋梁用支柱

  正面衝突事故は死亡事故になりやすい事故形態であることから、これを防止するため、設置に必要な幅員が狭く設置コストも低い新たな正面衝突対策としてワイヤロープ式防護柵(以下、ワイヤロープ)を開発しました(写真-1)。

  ワイヤロープは、道路に打ち込んだ鋼管(スリーブ)に支柱を差し込み、支柱上部のスリットに通したワイヤを端末で固定し緊張するという構造で(写真-2)、その特徴は以下のとおりです。

・車両衝突時に支柱が折れてワイヤが衝撃を緩和。乗員が受ける衝撃が従来の防護柵よりも小さい。

・支柱が細く裏表がないため設置幅が少ない。

・事故等の緊急時にはワイヤを人力のみで取り外すことができ、どこにでも開口部を設けることが可能。

・事故等で破損した場合、折れた支柱を差し替えてワイヤを再緊張すれば復旧完了。これらの作業を人力により短時間で実施可能。

  ワイヤロープが注目されたきっかけは、平成26年度に会計検査院が国土交通省等に出した勧告でした。その内容は、暫定2車線の高規格幹線道路において対向車線への逸脱事故が多く発生していることから、安全性、機能性等の向上を図ることが望まれる、というものでした。この勧告により、国土交通省は平成28年12月にワイヤロープをラバーポールの代わりにレーンディバイダーとして試行設置することを発表しました。これを受けて平成29年度には、NEXCO3社の暫定2車線区間のうち約113km(土工部)に試行設置され、国土交通省「高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会」において、前年に対向車線への飛び出し事故が45件あったものが1件、死亡事故7件・負傷事故6件がいずれも0件となったことが報告され、正面衝突事故防止効果が確認されました。

  土工部での試行設置・効果検証が進むなか、既設橋梁の床板に影響を与えない設置方法が求められたことから、舗装の厚さ内に収まる基礎と、支柱よりも強度の低い支柱基部プレートを備えた既設橋梁用支柱を開発しました(写真-3)。この技術は同委員会で効果が認められ、既設中小橋梁へ試行範囲が拡大しました。

  平成30年6月には国土交通省から、四車線化や付加車線の事業実施個所を除く土工区間では、暫定2車線で開通する区間には標準設置、供用済区間は概ね5年(高速道路会社管理区間は概ね3年)の設置を目指すことが発表されました。

  今後、試行により明らかとなった課題を解決するための技術開発を進めていきます。



(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地交通チーム)