研究成果の紹介
「北海道の色彩ハンドブック」
―北海道および積雪寒冷地の道路施設の色彩検討の手引き―
平成16年の「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」を経て、平成29年には「景観に配慮した道路附属物等ガイドライン」が制定され、景観に配慮した道路附属物等の色彩の考え方と、基本となる景観4色が示されました(平成16年のガイドラインで示された景観3色(ダークグレー、ダークブラウン、グレーベージュ)+追加で示されたオフグレー)。しかし、北海道の道路環境は本州以南の地域や非積雪寒冷地とは大きく特性が異なることから、道路に設置される道路附属物等の色彩に関しても、全国標準とは異なる色彩を選定する必要があると考えられます。
このような考え方から、寒地土木研究所地域景観チームでは、「道路附属物等の色彩」に関する研究テーマを立ち上げ研究に取組むこととし、北海道における色彩の調査や、色彩サンプルを用いた被験者評価実験などを行ってきました。
平成30年6月にはこれらの研究成果を「北海道の色彩ポイントブック」として取りまとめました。将来の北海道独自の色彩ルールの制定に向けて、現状の課題を確認したうえで、考え方や論点を整理し、また、標準的な北海道の道路環境を想定した際に望ましいと考える色彩を試案として提案を行ったものです。
主な提案
1. こげ茶(ダークブラウン) は北海道の環境に必ずしも適合しない。
北海道の広大で開放的な景観、冬の雪景色を考慮すると(下写真も参照)、道路まわりの構造物は空や雪などの明るい背景を背にして眺められるケースが少なくありません。そのようなケースでは、こげ茶のような暗い色は背景から際だって見えます。また、冬の無彩色の雪景色の中では、こげ茶でさえ鮮やかさを感じる色となります。
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2. 景観3色*では無彩色のダークグレーが優位。場合によっては亜鉛めっきも。
冬の雪景色(無彩色の景色)において目立たず、景観に融和するのは無彩色であり、景観3色の中ではダークグレーが唯一となります。無彩色であれば夏の鮮やかさを取り戻した環境にも問題なく融和します。また、除雪による塗装の剥がれに起因して、地色と塗装色のまだら模様が景観を損ねる問題についても、塗装が無彩色であれば、地色の亜鉛めっき色(中明度の無彩色)との差が目立たちにくくなります。
したがって北海道の道路では、ダークブラウンよりもダークグレーを優先して検討するべきと言えます。また、明るめの無彩色が適合する環境では、亜鉛めっき仕上げも選択肢になります。
*注:現行ガイドラインの「景観4色」のうち、追加された「オフグレー」については、まだ設置事例がほとんどなく検証ができていないので、除外しています。
3. 緑系のグレーという選択肢。
空や雪、遠景の山並みなど、北海道において背景となる要素には、青みよりの色彩のものが多くなります。このことを考えると、北海道の環境には、赤みよりの茶系などの色彩よりも、青みよりや緑みよりの色彩が適合すると考えられます。
実際に、緑系のグレー(彩度1.0程度)が採用された優れた事例が道内で複数確認できています。寒地土木研究所で平成28年~29年にかけて実施した色彩の評価テストでも、道路附属物の設置環境を模した複数環境で、色彩サンプルの評価テストを行ったところ、ダークグレーがいずれの環境でも評価が高く、次いで、緑系グレー(5GY3/1)でした。
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高欄;国道453号 |
照明柱;旭川市 北彩都地区クリスタル橋 |
「北海道の色彩ポイントブック」は地域景観チームのウェブページからダウンロードできます。参考にしてください。
(http://scenic.ceri.go.jp/manual.htm)
(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 地域景観チーム)