研究成果の紹介

既設コンクリート舗装路面へのダイヤモンドカッタによる表面研削工法施工マニュアル(案)の紹介


1. ダイヤモンドカッタによる表面研削工法とは

  ダイヤモンドカッタによる表面研削工法とは、数mmピッチで組み合わせたダイヤモンドブレードの集合体により、コンクリート舗装表面を3mm程度の薄層で縦断方向に研削し、表面にできる凹凸によってコンクリート舗装のすべり抵抗などの表面性状を改善する工法です。図-1はダイヤモンドカッタによる表面研削工法に用いるブレードおよび研削形状の例です。コンクリート舗装表面のすべりやすい層を除去するとともに、路面付近の粗骨材およびセメントモルタルに写真-1に示すようなフィン(背びれ)状の凹凸をつけ、その凹凸によってすべり抵抗性などの機能を発揮させるものです。


図-1 ダイヤモンドカッタによる表面研削工法に用いるブレードおよび研削形状
図-1 ダイヤモンドカッタによる表面研削工法に用いるブレードおよび研削形状
写真-1 ダイヤモンドカッタによる表面研削の仕上がり路面とフィン(背びれ)状の凹凸の例
写真-1 ダイヤモンドカッタによる表面研削の仕上がり路面とフィン(背びれ)状の凹凸の例


  コンクリート舗装の表面は、粗面化によるすべり防止を主な目的としてほうき目仕上げが実施されています。しかし、ほうき目部はコンクリート面のモルタルの凹凸のみで構成されるため耐摩耗性は低く、供用に伴いタイヤによるすり磨き等により消失していきます。その結果、供用に伴い平滑で光沢を帯びたすべりやすい路面が形成される場合がありますので、このような場合の対策工法の一つとして、本工法の適用をご検討ください。



2. 既設コンクリート舗装路面へのダイヤモンドカッタによる表面研削工法施工マニュアル(案)


図-2 マニュアル(案)
図-2 マニュアル(案)

  寒地土木研究所では、主にトンネル内コンクリート舗装の「すべり抵抗性改善」を目的に実施する、ダイヤモンドカッタによる表面研削工法の標準的な施工における留意点や推奨事項を示した技術資料として、「既設コンクリート舗装路面へのダイヤモンドカッタによる表面研削工法施工マニュアル(案)」(図-2)を作成しました。寒地土木研究所寒地道路保全チームのホームページより無料でダウンロードができますので、ご活用いただければ幸いです。



(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地道路保全チーム)



地震で発生する農業用管水路内の水圧変化の観測 ~地震時動水圧~


研究背景

写真-1 農業用管水路の例(管の埋設工事中)
写真-1 農業用管水路の例(管の埋設工事中)

  稲作や畑作に必要な農業用水は、主に河川から取水し用水路を通じて農地へ運ばれていきます。用水路の構造は、コンクリートの開水路であったり大規模な管水路(写真-1)であったりしますが、最近では、効率的な送水や取水管理の容易さなどから管水路構造とする場合が増えています。

  管水路の多くは地中に埋設され、管の中は水が充満し水圧がかかっていますので、水が噴き出す事故が発生することがあります。そうならないよう、土圧で管が潰れたりしない、水圧で管が破損したり管と管の継ぎ目のところで抜けたりしない構造になっています。しかし、大きな地震が発生すると、管の中に大きな水圧変化が発生することが指摘され、これが地震時に管の破損・離脱などを引き起こす原因の一つになっているのではないかと考えられます。しかしこの現象についてこれまで十分に調べられてきませんでした。

  このため、地震時に管の内部に発生するこの水圧変化(「地震時動水圧」と言う)について、現在、発生メカニズムを解明するための調査研究を行っているところです。



地震時動水圧の観測

  地震時動水圧は、水が閉じ込められた管水路の変化点(閉端部、曲がり部、T字部、片落部など)に発生します。特に曲がり部は、水圧により管自体が曲がりとは反対の外向きに移動しようとする力が働くので、水圧の上昇とともに管が抜けやすくなります。また地震時動水圧は、管水路の変化点それぞれの場所で発生し、その水圧の波が上下流方向に伝播して重なり合い増幅しますので、時間が経過した後でも思いがけない場所で高い水圧を発生させ管が破損・離脱する可能性もあります。

図-1 地震時動水圧の観測施設
図-1 地震時動水圧の観測施設


  当チームでは、国営かんがい排水事業で整備され現在使用されている北海道十勝地方の管水路施設2箇所に観測点を設け、地震発生時の揺れ方と管内部の水圧変化が同時に詳細に観測できる設備を設置し(図-1)、観測を継続しています。これまでに震度4(2回)、震度3(4回)、震度2(11回)の地震時に動水圧を観測し、データの解析を行ってきました。






観測結果

図-2 地震動速度と地震時動水圧の関係(観測結果)
図-2 地震動速度と地震時動水圧の関係(観測結果)

  観測結果から、地震の水平方向の最大速度と、地震時動水圧の最大値の間に正の相関関係があることがわかりました(図-2)。つまり、「観測地点では、こんな大きさの揺れが生じたときには、これくらいの大きさの地震時動水圧が発生するということが予測できる」という結果です。これは地震にも強い安全な管水路施設の設計等に反映できると考えられます。しかし、管水路全体では、至る所で圧力波が発生・増幅し、どの箇所にどれだけの大きさの地震時動水圧が発生しているかわかりません。圧力波の発生メカニズムと現地の実測データを突き合わせながら分析を重ねることが引き続き必要です。



(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 水利基盤チーム)