研究成果の紹介

周氷河性斜面における表面水流量推定の研究について


写真-1 周氷河性斜面の露頭

写真-1 周氷河性斜面の露頭



図-1 豪雨最大時における土中の飽和度分布

図-1 豪雨最大時における土中の飽和度分布



図-2 谷沿いの地中における水圧分布と浸透水の向きの解析断面

図-2 谷沿いの地中における水圧分布と浸透水の向きの解析断面



研究の必要性

  北海道の日高山脈や宗谷地方等では氷河期に形成された「周氷河性斜面」と呼ばれる平滑な斜面が広く分布しています。これらの斜面は、岩石が氷河期に凍結破砕や凍結融解の繰り返しと重力作用によって下方へ移動することにより形成されました。平成28年台風10号に伴う大雨では、日高山脈北部に位置する国道274号日勝峠で、約400mmを超える連続雨量があり、周氷河性斜面を含む多くの斜面やのり面が崩れ、長期間の通行止めを余儀なくされました。この一因として周氷河性斜面において、降水が斜面表面を流下し、表層に浸透したことによりパイピング現象(写真-1)が生じ、斜面末端部の崩壊を発生させた可能性があります。そこで防災地質チームでは、周氷河性斜面の被害を回避・低減するため、崩壊メカニズムの解明と、新たに表面水流量推定手法の提案を目標として、周氷河性斜面における表面水と浸透水の挙動を解析しています。




研究成果の紹介

  日高山脈北部の地域をモデルとして「三次元水循環モデル」を作成し、表面水と浸透水の挙動を解析しました。雨量等の気象条件のほか、地表の土地利用や植生、深さ方向の地質構造を現地調査した上で、これら諸条件をモデルに入力しました。図-1に土中の飽和度分布を示します。暖色系の色ほど飽和度が高く、特に赤色部は土が限界まで水分を含んだ状態を表現しています。谷部分では、水分が多いことを示しています。一方、図-2は、谷沿いの地中における水圧分布と浸透水の向きを解析した断面です。図中の矢印は浸透水の向きを示しています。また、青色から赤色の表示は、地中における水圧の大きさを表現しています。解析の結果から水圧の勾配が大きい箇所では、水の流れが速くなり、地表面方向に向けて流れることが分かりました。解析結果から「パイピング現象」の発生がモデル上で示唆され、実際の崩壊箇所とも一致しました。
























(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 防災地質チーム)