研究の紹介

大型化した積みブロックの使用によるブロック積擁壁の生産性向上


図-1 ブロック積擁壁の一般的な構造

図-1 ブロック積擁壁の一般的な構造



(a)谷積(間知ブロックの場合)
(a)谷積(間知ブロックの場合)

(b)布積(控長を35㎝のまま大型化したブロックの場合)
(b)布積(控長を35㎝のまま大型化したブロックの場合)

写真-1ブロック積擁壁(例)

  ブロック積擁壁(図-1)は、盛土や切土ののり面の保護のために道路工事や災害復旧工事で使われる場合があります。施工の容易さからその歴史は古く、昭和30年代から使用されています。一般に、道路ブロック積擁壁には控長(擁壁の厚さ)が35cm以上の積みブロック(一般に間知ブロック)が使用されています。さらに、既往の被災事例等の経験を考慮して、積みブロックと積みブロックの間の胴込めに現場打ちコンクリートを使用し(以下このことを「練積」という)、積みブロックは目地がそろわない谷積とすることとされています(写真-1(a))。ブロックどうしの一体性を確保するためにこのような構造とされてきていますが、その施工には熟練した技術が必要です。

  そのため、主に省力化を目的として、控長はそのままで正面から見たときの寸法をより大型化した積みブロック製品も開発され普及が進んでいます。しかしながら、製品1つ1つが大きいため、従来の経験に基づいた積み方である谷積とすることが困難であり、目地がそろう積み方である布積とする製品がほとんどです(写真-1(b))

  施工技術チームと公益社団法人全国土木コンクリートブロック協会は、「大型ブロック積擁壁の設計・施工・維持管理の高度化に関する共同研究(平成30年8月~令和3年3月)」において、既往の地震被害事例を収集し、統計的に分析しました。その結果、適切に練積としておけば間知ブロックを谷積とした場合と、控長を35cmのまま大型化したブロックを布積とした場合の被害に有意な差が無いことを確認しました。さらに、市場にある製品の実態を調査してその構造等を考慮したうえで、胴込めコンクリートの施工品質の確保が容易となるようなブロックの形状やコンクリートの打設方法を整理し、谷積よりも施工が容易な布積のブロック積擁壁でも同等の性能を確保できる手法を提案しました。これにより、大型化した積みブロックの適正な普及促進へ繋がり、施工性が大きく改善されることで生産性向上が期待されます。




















(問い合わせ先 : 地質・地盤研究グループ 施工技術チーム)

河床を管理して、橋が傾くのを未然に防ぐ


1.はじめに

  近年各地で発生している豪雨で、河川の増水により橋が傾くなどの被害が生じ、道路の通行止めやそれに伴う集落の孤立などが発生しています(写真1)。また、傾いた橋を直して、道路が通れるようになるまでには長い期間が必要となります。したがって、洪水後でも道路の通行止めが生じないように橋を管理することが求められています。土木研究所では、河川の増水により橋が傾くのを未然に防ぐこと(予防保全)ができる管理方法の開発に取り組んでいます。


2.河川の増水で橋が傾くメカニズム

  河川の水が激しく流れると川底(河床)の砂や石などが移動して、河床が削られることがあります(河床低下)。また、河川の中に橋の柱(橋脚)があると、水が橋脚前面側にあたり下降する流れ(下降流)が生じます。下降流は橋脚周りの河床の砂や石を巻きあげ、河床が深く削られることがあります(局所洗掘)。河床低下や局所洗掘が進むと、橋を支えている地面(支持地盤)が削られることがあります。支持地盤が削られると地面の橋を支える能力(支持力)が落ち、最終的には橋を支えられなくなって橋が傾きます(図1)


3.どのように河床を管理して橋が傾くのを防ぐのか?

  図2のような新技術を活用すれば、広い範囲の河床の高さを効率的に測ることができるようになってきています。異なる時期で測った河床の高さを比べれば、河床低下や局所洗堀をみつけることができます。また、河床低下を将来予測するうえで重要と考える、河川の最も深い部分の平面位置が変わったこと(澪筋(みおすじ)の変化)や河川内に砂や石が細長く堆積して水面上に現れたこと(砂洲(さす)の形成)などもみつけることができます。このような、これまでは橋の管理で十分に把握してこなかった河川の情報を活用して、将来の河床低下や局所洗掘を予測して対応することで橋が傾くのを未然に防ごうとしています。



写真1 河川の増水により橋が傾いた例

        写真1 河川の増水により橋が傾いた例



図1 橋が傾くメカニズム(河床低下と局所洗掘)
        図1 橋が傾くメカニズム(河床低下と局所洗掘)






図2 活躍が期待される新技術の例(グリーンレーザ&ドローン)
図2 活躍が期待される新技術の例        
(グリーンレーザ&ドローン)        




































(問い合わせ先 : 構造物メンテナンス研究センター 橋梁構造研究グループ)

超過外力に対する道路橋のレジリエンス技術に関する研究


図-1 危機耐性のための部材の一部が損傷した事例

図-1 危機耐性のための部材の一部が損傷した事例



図-2 下沓固定ボルト部の損傷誘導機構

図-2 下沓固定ボルト部の損傷誘導機構



図-3 損傷を誘導する部材を評価するための試験(柱部最外縁鉄筋降伏時の水平変位の2倍(2δy)の載荷時状況)

図-3 損傷を誘導する部材を評価するための試験
(柱部最外縁鉄筋降伏時の水平変位の2倍
(2δy)の載荷時状況)




  南海トラフの巨大地震、首都直下地震等、人口及び資産が集中する地域における大規模地震発生の切迫性が指摘され、これらの地震による被害の防止・軽減は、喫緊の課題となっています。また、2011年東北地方太平洋沖地震や2016年熊本地震の教訓として、従来の経験や想定を大きく超える規模の災害(図-1参照)に対する備えが不可欠となっており、道路橋に対する早期機能回復性能が求められています。



  道路橋の耐震設計では、橋梁に作用させる地震動として道路橋示方書に示されている既往最大の海溝型や直下型の地震動を用いて各部材の耐荷性能を照査し、限界状態を超えないように構造細目を決定しています。想定を超える規模の地震に対しては、作用を定義できないことから、大規模災害への対応について新たな考え方が必要となっています。



  寒地構造チームでは、道路橋の早期復旧、機能確保の観点から、設計地震動を超える作用(超過外力)に対して致命的な損傷を回避するための設計手法とそれを実現するための部材の検討をしています。具体的には、超過外力による橋梁の損傷過程を荷重漸増解析により精度良く求める方法を提案します。この方法を用いて、橋梁部材の耐力階層の考え方に基づき、損傷を誘導する部材の耐力を決定するための構造検討をしています。この損傷誘導により、RC橋脚が限界状態3(終局破壊状態)に至る前に支承部が損傷し、橋脚に過大な作用力を与えません。検討している構造では、ゴム支承の下沓プレートとベースプレートを固定するボルト部の機構を図-2のようなものにします。これにより、所定のせん断部長さが確実に確保され、安定したせん断強度と合わせて必要な靭性が得られます。橋脚模型を用いた正負交番載荷による誘導機構の評価試験(図-3参照)では、損傷誘導機能を評価することができました。今後は、他の橋梁形式において検討を行い、レジリエンス技術の開発を行う予定です。













(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地構造チーム)

アスファルト再生骨材の歩道路盤材料への有効利用について



図-1 稚内地域のAs発生材の使用状況

図-1 稚内地域のAs発生材の使用状況



図-2 歩道路盤材としての支持力評価

図-2 歩道路盤材としての支持力評価



図-3 再生骨材工区の施工後の路面の高さ推移

図-3 再生骨材工区の施工後の路面の高さ推移







1.はじめに

  アスファルト舗装発生材(以下、発生材)は、平成3年に「資源の有効な利用の促進に関する法律」が制定され、さらに平成12年に「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」の制定により、主に再生加熱アスファルト混合物用骨材として再生利用されています。一方で、一部の地域では受入量に対し利用量が少ないことにより余剰が生じている事例も見られます。稚内地域の中間処理施設における発生材の現状を図-1に示しますが、発生材の堆積量が2020年度において約10万トンとなっています。本来であれば貴重なアスファルト資源は再生加熱アスファルト混合物用骨材として再利用することが望ましいですが、これらの地域では発生材を余剰なく活用することも大切となります。そこで、当チームでは発生材を車道の凍上抑制層に用いる技術や、歩道路盤材料として有効利用する技術に関する研究を行っており、ここでは、歩道路盤材料に活用する研究への取り組みについて紹介します。


2.試験施工による評価

  稚内地域において、発生材の粒度を40~0mmに調整したアスファルト再生骨材を歩道路盤に使用した試験施工と追跡調査を行い、以下のことを確認しました。

1) アスファルト再生骨材は、通常の歩道路盤材料である切込砕石40mm級と同一の施工条件で良好な転圧作業を行うことができ、所定の締固め度が得られることを確認しました。

2) 施工時におけるDCP試験による支持力評価結果を図-2に示します。アスファルト再生骨材は、切込砕石工区に用いた切込砕石40mm級と同程度以上の推定CBRを有していることを確認しました。

3) 供用後における小型FWD、および簡易支持力測定器を用いた支持力評価結果より、アスファルト再生骨材の支持力は、切込砕石40mm級と同程度以上であることを確認しました。

4) アスファルト再生工区と切込砕石工区の横断方向の路面高さを測定した結果を図-3に示します。アスファルト再生骨材工区は切込砕石工区に比べて路面高さに大きな変化はなく、凍上に起因する不陸が発生していないことが分かります。目視調査でも、路面にひび割れが生じていないことを確認しました。

  以上の結果により、試験施工を実施した稚内地域では、アスファルト再生骨材を歩道路盤として利用することに大きな問題は無く、舗装発生材の利用促進に向けた有効な手段となり得る可能性が示唆されました。引き続き追跡調査を行い、長期供用性状およびアスファルト再生を歩道路盤として用いることによる歩道舗装の耐久性向上効果について検討していく予定です。






(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地道路保全チーム)