研究の紹介

地震発生後の道路橋の効率的な調査を行うための新技術活用推進について


1.はじめに

  地震発生後、早急な救援・救護等を行うためには、速やかに道路橋の異常時点検を実施し、できるだけ短時間で橋が壊れていないか、安全に通行することができるかを判断する必要があります。 しかし、近年発生した大規模地震では、広い範囲で被害が発生したため、膨大な数の道路橋に対して調査が必要となり、対応に時間がかかりました。(平成28年熊本地震では、被害状況を確認するための調査に、重要度の高い橋だけでも約12日かかったという報告があります。)また、地震発生後に行う調査は、橋の各部分を人の目で見たり、必要に応じて点検ハンマーで叩いたりして損傷の有無を判断しています。地震発生直後は、調査に確保できる人員の不足や調査したい箇所に近寄る手段がないことが原因で十分な被害状況が確認できない場合があり、道路橋の通行可否の判断が遅れてしまう事態も発生しています。(図-1)そのため、道路橋の被災状況を早急かつ的確に調査することができる新たな調査手法の提案が求められています。土木研究所では、 地震発生後の道路橋の効率的な調査を行うため、新技術活用の推進に取り組んでいます。

2.新技術の活用により期待されること

  現状、人が見回り目視で行っている異常時点検をより効率的に行うためには、目視調査を代替できる技術や目視だけでは判断しづらい損傷を発見できるような技術等の導入・活用が求められています。(図-2)新技術を活用することで、安全かつ早急に道路橋の被災状況を理解し、診断が行えるようになることが期待されます。

3.3次元計測を試行

  新技術活用を推進するためには、先ずは検証試験等を行い、その技術が有している性能を知ることが大切です。ここでは、地震で被災した道路橋を対象に3次元レーザースキャナー計測を試行した例を記します。図-3では、近寄る手段がなかった箇所に対して、遠くから目視で確認した結果と橋の上から3次元計測で取得したデータを比較しています。このとおり、3次元計測では、 遠くからは分かりづらかった計測対象の形を立体的に捉えることができます。この3次元計測データからは、計測対象に変形が生じていないことが確認でき、通行することができないような大きな被害は生じていないことが判断できました。このように新技術を試行し、どのような情報が取得できるのかを確認するとともに、実際の現場に生かすためにはどの情報が、どんな精度、タイミング、 計測環境で必要とされるのかを評価することで、より実用的な新技術の活用、開発につながります。今後も、検証試験を通じて、新技術に必要とされる条件を検討、これを発信していくことで、新技術の導入や技術開発を促進していく予定です。

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(問い合わせ先 : 構造物メンテナンス研究センター  橋梁構造研究グループ)