研究の紹介

除雪車オペレータなどへの視線誘導装置の開発

 除雪車での走行や除雪作業では、吹雪による視界不良や、積雪・堆雪によって路側線や中央線、ガードレールなどが見えなくなる場合があります。このような状況では、道路からの逸脱や対向車線へのはみ出し、ガードレールなどとの衝突などが発生する危険性が高まります。このため、路側線やガードレールなどの位置を除雪車のオペレータなどが認識しやすくする目的で、矢羽根やスノーポール(写真-1)などの視線誘導施設が設置されています。しかし、これらの効果は設置されている場所に限られ、道路全線にわたって設置することは、費用や作業の面からも容易ではありません。そこで、走行中でも連続的に視線誘導を行うことができる技術として、自車両から路側線などの位置を光で示す「視線誘導装置」(写真-2)の開発を進めています。


写真-1

写真-1
矢羽根およびスノーポール
写真-2

写真-2
除雪車に取り付けた視線誘導装置の
動作イメージ

 この装置は、指向性の高い光を照射する照明装置、その光を任意の方向へ向ける電動雲台、雲台の動きを計算する制御用コンピュータ、そして自車両の位置を正確に把握するためのGNSSシステムなどで構成されています。あらかじめGNSSなどで計測しておいた路側線などの目標位置に向けて照明を照射するため、自車両の現在位置から必要な照射方向を計算し、その結果に基づいて電動雲台を動かして照明装置の向きを制御しています。本装置は、GNSSによる位置情報と指向性の高い照明を組み合わせることで、道路上に新たな設備を設置することなく視線誘導を行える点が特徴です。 現在は試験機(写真-3)の段階ですが、照射目標位置を検出すると自動的に照明が点灯して目標を追従し、目標が照射範囲から外れると自動的に消灯するなど、基本的な動作は実現できています。一方で、照射位置の精度については、目標位置から数十センチ程度ずれることが多く、場合によっては1m以上ずれることもあります。実用化に向けてはまだ課題が残っているため、今後は精度や動作の安定性の向上を図り、冬期道路における除雪作業の安全性向上へ寄与する技術の確立を目指して開発を進めていく予定です。


写真-3

写真-3
視線誘導装置(試験機)と試験状況






(問い合わせ先 : 寒地土木研究所  寒地機械技術チーム)

捨てられている漁網を、コンクリートを強くする材料として再利用



写真-1

写真-1 廃棄漁網


写真-2

写真-2 コンクリート供試体の破断面


 写真-3

写真-3 裁断した漁網繊維


写真-4

写真-4 コンクリート練り混ぜ状況


写真-5

写真-5 天端面の状況




 本研究は、北海道で多く捨てられ、再利用が進んでいない使用済の廃棄漁網(写真-1)を、コンクリートを強くする繊維として活用する技術の確立を目指すものです1)。SDGsの環境保全や、北海道の港湾・漁港技術開発ビジョン2)では、「北海道沿岸域のカーボン・ニュートラルの推進と海域環境の保全」が重点課題として掲げられています。その中で、漁網を混入してコンクリートを強化する技術が、具体的に開発すべき項目として示されています。

 

 この課題に対応するため、まずは漁網繊維の形状をどのように整えるかを検討し、裁断やふるい分けによって品質を安定させられるかを室内試験で確認しました。さらに、漁網繊維を混ぜたコンクリートを試作(写真-2)し、練りやすさや強度、耐久性といった基本的な性能を評価することで、廃棄漁網の有効利用と環境負荷の低減につながる技術としての可能性の把握することを目指しています。

 
 

 漁網を細かく切って繊維(写真-3)として混ぜ込むと、コンクリートはどんな性質になるのか(写真-4)。そんな疑問に答えるため、さまざまな試験を行いました。繊維は長さも太さもバラバラですが、裁断方法を工夫することである程度の繊維長さをコントロールできることが分かっています。試験の結果、スランプ(硬化前のやわかさの特性)が少し下がるなどの変化はあるものの、ひび割れに強くなったり、凍結融解に対しても十分な性能を保つことが確認できました。


 施工時には繊維が表面に出やすいなどの課題もありますが、形状管理の大切さが改めて見えてきました(写真-5)

 実際の現場で使える技術に育てていくためには、繊維の長さや形をしっかり整えることが欠かせません。長すぎる繊維は混ざりにくく、作業性にも影響してしまうため、事前の選別が大切です。試験では、ひび割れを抑える効果や粘り強さの向上が確認され、補修までの時間を稼げる可能性も見えてきました。一方で、強度や空気量への影響は繊維の条件によって変わるため、今後もデータを積み重ね、最適な繊維条件を明確にしていく必要があります。ひび割れ抑制効果の定量化も、これからの大事なテーマとなっています。











 [参考文献]

 1) 杉森信博、長谷一矢、石澤健志:廃棄漁網を再利用した繊維補強コンクリートの特性と 品質管理に向けた課題の抽出、寒地土木研究所月報、No873、pp.35-41、2025.9

 2) 北海道開発局港湾建設課・水産課:北海道の港湾・漁港の技術開発ビジョン 持続可能な北のみなとづくり技術開発宣言、2021.
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kk/kou_ken/ud49g7000000jypy.html
(2026年4月24日確認)



(問い合わせ先 : 寒地土木研究所  寒冷沿岸域チーム)