新潟試験所ニュース

【研究ノート】

冬期路面管理水準策定に関する研究

1 はじめに
 脱スパイクタイヤ後、道路利用者のニーズや交通事故防止の観点から冬期における路面管理水準の高度化が求められ、道路管理者は冬期においても安全で円滑な道路交通を確保するため、除雪や凍結防止剤散布などの雪氷路面対策を行っています。
 しかし、現在のところ統一的な路面管理水準が策定されていないため、国道や県道では同一規格の道路においても道路管理者毎に管理水準が異なっているのが現状です。

図−1 路面状態別発生頻度
図−1 路面状態別発生頻度
 
図-1(b) 集水井工
図−2 すべり摩擦係数別発生頻度

 本研究では道路規格別、地域別に統一的な路面管理水準を策定し、路線重要度別に最適な路面を道路利用者に提供するための、適切な除雪体制や凍結防止剤散布手法を確立することを目的としています。
 本研究ノートでは、冬期路面管理の実態を把握するため平成10年度に一般国道18号において実施した雪氷路面の現地詳細観測結果から得られたデータを用いて、雪氷路面対策で確保されている路面縦すべり摩擦係数(以下すべり摩擦係数という)の現状と凍結防止剤の散布効果について取りまとめたものです。

2 観測施設
 観測施設については下記に示す【実験施設紹介シリーズ二俣定点観測施設】をご参照ください。

3 観測結果と考察
(1) 現地詳細観測時の気象交通状況
 現地詳細観測は降雪時を主体として実施しました。観測期間中の時間降雪量は0p〜19p、気温は-10℃〜1.2℃、路面温度は-7.6℃〜8.9℃、平均風速は0m/s〜4.8m/sで推移しました。1時間あたりの交通量は最も多い時間帯で 554台/h、最も少ない時間帯で26台/hでした。車両走行部の路面雪氷厚は通過交通や除雪効果の影響により、2p以下の場合が多く見られました。
(2) 路面状態とすべり摩擦係数
 図−1、図−2は現地詳細観測期間中の路面状態別、すべり摩擦係数別発生頻度を示したものです。路面状態は圧雪状態が最も多く発生しているのに対して非常にすべりやすい圧雪や氷板などの発生頻度が少ないことが読み取れます。また全観測数のうち8割以上において0.2以上のすべり摩擦係数が確保されていることがわかります。

 一方、車両が発進駆動するのに必要なすべり摩擦係数は式(1)より求められ、縦断勾配1.5%〜2.0%の本観測地点においては0.17〜0.20のすべり摩擦係数が必要です。

f (ifr )/β (1)
(0.02+0.04〜0.05)/0.35
0.17〜0.20
( f :すべり摩擦係数 i :縦断勾配
fr :転がり抵抗係数 β :荷重配分係数
)
図−3 すべり摩擦係数の実測値の範囲
図−3 すべり摩擦係数の実測値の範囲

 以上のことから、当該観測地点では発進不能となる路面状態の発生頻度が少なく、全体的には良好な路面管理が行われていることが伺えます。
 図−3は路面状態別に分類したすべり摩擦係数の実測値の範囲(平均値±標準偏差)を表してします。湿潤と雪氷路面の間にはすべり摩擦係数の範囲に明確な違いが見られますが、本観測地点においては、北海道開発局が提案した12分類毎の雪氷路面状態とすべり摩擦係数の間には定性的な関係が見られませんでした。またシャーベット状態におけるすべり摩擦係数の実測値は標準偏差が大きく、時間帯によっては氷板、氷膜といった凍結路面以上に危険な路面状態が発生していました。
(3)凍結防止剤の散布効果
 図−4、5は現地詳細観測を実施した2月20日18時から23時までの走行部における凍結防止剤の路面残留量及びすべり摩擦係数の経時変化です。なお図中にMS車両通過時間とあるのは凍結防止剤散布車両(NaCl,30g/m2散布)が観測地点を通過した時間(18時57分及び22時43分)を示します。

図−4 路面残留量の経時変化(2月20日) 図−5 すべり摩擦係数の経時変化(2月20日)
図−4 路面残留量の経時変化(2月20日) 図−5 すべり摩擦係数の経時変化(2月20日)

 図−4に示すとおり散布直後(19時)は、ほぼ全量の凍結防止剤が路面に残留していますが、時間の経過とともに道路勾配に伴う流出や通過交通の攪拌・運び出し、車両走行風による飛散によって3時間後(22時)には路面から凍結防止剤が消失しているのがわかります。また図−5より、路面状況によっては凍結防止剤散布後に、より一層すべりやすい状態が発生することが確認されました。

(文責:荒川)

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