雪崩・地すべり研究センターたより

【研究ノート】

新潟試験所における、道路雪害研究の軌跡(前号からの続き)

4.吹雪・吹溜りに関する研究

@吹雪、吹溜り対策および視程に関する験調査(1981年〜1991年)

 研究成果として、(1)3次元吹溜りシュミレーションを開発しました。直角以外の風向でも、柵前後の吹溜り形状は現地計測結果と整合した結果が得られました。これまで開発した2次元シュミレーションと併せて現地への応用が可能となりました。(2)吹雪発生限界条件をもとに北陸地整管内をモデルに吹雪危険度分布図を作成しました。この結果は現地での発生頻度調査とほぼ整合するものとなっています。この手法によって小地域の分布図作成も可能とであることが分かりました。


吹雪危険度分布図(日数/年からみた場合)

 

5.総合的道路管理に関する研究

@積雪寒冷地道路の交通障害危険度に関する試験調査(1994年〜1997年)
A冬期道路管理水準策定に関する試験調査(1999年〜2002年)

 @では、一般国道18号において定点自動観測及び現地詳細観測を行い冬期道路における道路機能低下要因について試験調査しました。その結果、路面状態(乾燥、湿潤、凍結、積雪の4分類)と通過交通の平均速度の関係を見ると、乾燥状態を基準とした場合に凍結路面で約1割、積雪路面で約3割程度の速度低下が見られました。また、走行速度が路面管理水準の指標と成りうる可能性が見い出されました。Aでは、雪氷路面のすべり摩擦係数に着目し路面性状や気象状況等と雪氷路面のすべり摩擦係数の計測結果から冬期道路管理を行う上で観測が必要な要因やすべり摩擦係数の推定手法の検討を行ないました。その結果、すべり摩擦係数は、路面分類により大まかに把握出来ることが分かりました。また、路面分類毎にすべり摩擦係数に影響をおよぼす要因が異なることが分かりました。重回帰分析により、つぶ雪下層氷板、こな雪下層氷板では、用いたデータが良く再現されました。


路面すべり測定車によるすべり摩擦係数の測定と定点観測施設


路面状況の計測

 

6.道路安全施設の基準化に関する実験

@積雪地用防護柵の開発研究(1979年〜1986年)
A案内標識の着雪防止に関する調査(1979年〜1983年)
B標識柱に作用する圧雪調査(1984年〜1989年)
C雪中構造物に作用する雪圧調査(1985年〜1989年)

 @では、積雪地における安全でかつ経済的な防護柵の設置が可能となり、防護柵設置要綱の資料集に取り入れられました。Aでは北陸のような湿雪の場合、気温が平均-0.8℃程度、風速が2m/s程度の微風状態で着雪が生じることが判明しました。また、傾斜角0° の標識板における着雪率がほぼ100%を示す気象条件のもとで着雪率と傾斜角の関係を表す式を得ることができました。

 

7.機器の開発に関する試験研究

@積雪検知器の開発実験(1976年〜1979年)

 研究成果として、簡易型で安価かつ耐久性のある積雪深計を開発しました。

 

8.大学との共同研究

@雪氷路面の組成と摩擦係数(μ)に関する研究(2001年〜2003年)
Aシャーベット路面における摩擦係数 (μ)特性の研究(2003〜2004)

前号3.凍結・圧雪に関する研究のI課題に引き続き上記@、Aの研究を実施し路面状態予測モデル改良を、福井大学との共同研究で行いました。@では、圧雪路面における通過車両台数とμ計測から圧雪密度とμの関係を把握し路面状態予測モデル式の改良を行いました。Aでは、最新鋭の路面すべりセンサーを搭載した車両をもちいて、シャーベット路面におけるμ計測からシャーベットの質量含水率とμとの間に密接な関係が明らかになりました。

 

9.建設省(国土交通省)の依頼に関する調査研究

@国道17号道路気象特性調査(北陸)(1977年〜1981年)
A国道19号道路気象特性調査(中部)(1977年〜1984年)
B一般国道18号降雪・凍結・圧雪予測システム調査(1981年〜1985年)
C斜面における土工と積雪の移動に関する調査(東北) (1992年〜1994年)
D排水性舗装の冬期路面すべり摩擦に関する調査(関東)(2000年〜2001年)

 以上、前回と合わせて研究課題を9つに分類し研究成果をまとめました。これらの成果が各種学会や報文等として発表されていますので、詳細なことが知りたい方は、土木研究所へお問い合わせ下さい。
 なお、道路雪害の研究は、まだまだ不明なことが多い分野であり、さらなる研究が発展することを期待しております。

 

(文責:前道路雪害部門研究員 小林一治)

平成16年(2004年)新潟県中越地震による雪崩対策施設の被災状況について

 中越地震により被災した中越地方は、我が国有数の豪雪地帯であり、数多くの雪崩対策施設が設置されています。従来地震による被災事例のない雪崩対策施設も被災したため、当センターでは実態把握と被災地を豪雪による災害から守るために、地震直後の11月1日から12月中旬にかけて現地調査を行いました。調査箇所数は雪崩対策施設が設置されている213箇所(うち防護工6箇所)です。
 その結果、集落雪崩対策の被害はわずかでしたが、治山や道路防災の予防工の64箇所では何らかの影響を受けていました。その状況は施設が位置する斜面上の落石や斜面崩壊に伴って生じたものが主であり、地震動が直接的に影響を与えたものではありませんでした。それらは、斜面の崩壊に伴い@予防工の基礎が露出している、同じくA予防工が下部へ移動・落下している(写真−2)、B予防工に上部から落下してきた土石・樹木が堆積している(写真−1)の3つに大きく区分できました。今後、豪雪や融雪による影響を含め、より適正な雪崩対策施設の計画手法について検討してまいります。

写真−1 予防柵への土石の堆積状況 写真−2 斜面崩壊に伴う予防柵の移動・落下状況

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