雪崩・地すべり研究センターたより

【トピックス】
富士山スラッシュ雪崩フォーラム
フォーラム会場
フォーラム会場
  10月11日に防災科学技術研究所雪氷防災研究センター,安間荘氏らが中心となり、山梨県富士河口湖町で、国交省富士砂防など国や山梨県・静岡県,山梨大学・新潟大学などの研究者及び担当者約40名が参加し、「富士山スラッシュ雪崩に関するフォーラム」が開催されました。
富士山では今年3月25日に、多量の水分を含んだ積雪が流出する「スラッシュ雪崩」が発生し、様々な手法により特異的な現象のメカニズム及び対策等について報告と意見交換が行われました。花岡所長も3月25日スラッシュ雪崩の実態・特性とその研究意義及び課題、さらに今後の対策への提案を報告しました。
本フォーラムのとりまとめとして、 (1)関係する機関が協力して観測・研究を推進し、情報を共有するため参加者によるメーリングリストの開設 (2)発生直後の総合的な調査の実施の必要性が示されました。
なお、同日午前には富士山山梨県側の御中道(5合目〜御庭区間)を、翌12日には同静岡県側の御殿場口と新5合目の現地調査も行われました。また10日にも御庭〜大沢川源頭部工事現場までの御中道を痕跡状況など踏査しました。
現地調査 白草流しにて
現地調査 白草流しにて
スラッシュ雪崩による根がえり
スラッシュ雪崩による根がえり

【研究ノート】
ボアホールカメラによる能登半島地震で被災した地すべり施設の調査
ボアホールカメラの先端部
ボアホールカメラの先端部
ボーリング孔内の状況撮影写真
ボーリング孔内の状況撮影写真
 ボアホールカメラは、ボーリング孔内の状況を観察するためのカメラです。3月25日に発生した能登半島地震時の石川県輪島市(旧門前町)小山地内に位置する坂尻地すべりにおけるボアホールカメラによる地すべり施設の調査について紹介します。
 地震直後の緊急調査により、一部のボーリング孔でのすべり面付近で孔内傾斜計の挿入不能が生じ、破断したのではとの報告がありました。そこで、当センターでは、これを確認するため、ボーリング孔内の状況を直接確認できるボアホールカメラを用いて孔内を観察しました。
 ボアホールカメラと作業状況、ボーリング孔内の写真を示しました。ボアホールカメラによる孔内傾斜計ガイドパイプ内の観察では、孔内傾斜計が挿入不能と報告された深度でガイド管の破断・曲がりが確認されず、カメラ本体を孔底まで挿入できました。このことから、地すべりブロックが地震時にすべり面付近で大きく変位しなかったことが明らかになりました。
 ボアホールカメラは、操作性が良く、モニターで観察しながらカメラを移動でき、適宜ビデオ撮影が可能で、表示された孔口からの距離をリード線で確認しながら観察しました。孔内傾斜計などによる計測では捉えられないボーリング孔内の変状を、直接観察できる非常に有効な方法です。

学会等における研究発表

○雪氷研究富山大会(9/25-28,富山大)
統計的雪崩発生予測手法における気象要因の標高補正の効果に関する研究 (伊藤,花岡)
平成19年3月25日 富士山で発生したスラッシュ雪崩 (花岡,中野,岩崎)
高密度空間情報を用いた雪崩映像の解析手法について (中野,花岡,伊藤)

○全国地すべりがけ崩れ対策協議会研究発表大会(11/15-16,盛岡市)
雪崩対策検討のための雪崩に関する調査観測手法の高度化 (花岡)

○第22回北陸雪氷技術シンポジウム(11/21,新潟市)
雪崩現地観測および雪崩映像解析手法の高度化に関する研究 (花岡,伊藤,中野,岩崎)
豪雪時の雪崩危険箇所点検および応急対策手法に関する研究 (中野,花岡,岩崎)

○第23回寒地技術シンポジウム(12/12-14,札幌市)
雪崩現地観測および雪崩映像解析手法の高度化に関する研究 (花岡,伊藤,中野,岩崎)
レーザー計測を用いた雪崩斜面の積雪分布及び雪崩実態の解析 (花岡,伊藤,中野,岩崎)
2007.3.25富士山南西山麓で発生したスラッシュ雪崩 (花岡,中野,岩崎)
豪雪時の雪崩危険箇所点検および応急対策手法に関する研究 (花岡,中野,岩崎)



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