雪崩・地すべり研究センターたより

雪崩常時現地観測システムの概要 − 目的,観測システム,解析手法
 雪崩対策の検討上、雪崩の発生と動態の実態把握が不可欠ですが、雪崩発生後の実態調査は現地踏査は容易でなく、雪崩再発の危険もあり、降雪や風による雪面形状の変化や融雪による雪質の変化などもあり、現状は精度の良い調査結果は多くありません。そのため雪崩の発生条件及び動態解析はまだまだ十分進んだとはいえません。
 このため、新潟試験所(当時)では、1995年から北陸及び東北地方の雪崩の頻発する斜面において、雪崩の発生と挙動記録を得るための雪崩映像観測と気象データの収集を11箇所で開始し、現在は4箇所(表参照)で実施しています。特に柵口地区、白馬八方地区においては、発生域を含む観測地点における日射量を含む気象、雪崩による地震動、雪崩衝撃圧などの計測、積雪断面観測等の総合的な雪崩観測を実施しています

雪崩総合観測による雪崩警戒システムの構築

雪崩現地観測概要
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白馬八方地区 現地観測地の概要
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LP計測データを用いた雪崩映像解析手法の模式図
LP計測データを用いた雪崩映像解析手法の模式図
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 雪崩現地常時観測により得られた雪崩動態映像からは、(1)雪崩の発生時刻,(2)雪崩の発生形態(形状,雪質,全層・表層),(3)雪崩の流下経路と流下幅、高さなどの規模について判読・計測を行っています。
 従来は、雪崩の先端位置を短時間毎に判読し、地形図やオルソフォト上にトレースし、雪崩経路及び速度等を算出してきました。最近では、航空レーザー計測による高密度空間情報を用いて、雪崩映像と同じ視点の鳥瞰図を作成し、雪崩の速度,幅,高さなどの諸元を定量的に算定する手法を試みており、従来困難であった雪崩の幅及び面的な流下範囲の判読と雪崩の高さの精度良い推定が可能となりました。さらに、雪崩斜面内の任意の地点における縦断及び横断地形を用いた雪崩の動態解析が可能となりました。
 今後は、さらに今まで不明な点が多かった雪崩の層厚及び外力などを解明し、雪崩対策指針へ反映させていく予定です。


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