Q1.挿入式孔内傾斜計の測定原理は?
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A1.挿入式孔内傾斜計は、ボーリング孔にグラウト材などで間詰めをして設置したガイド管(測定管)に、測定者がプローブ(測定器)を挿入して、ガイド管
の傾斜角を測定する計測器です。
測定は、ガイド管に挿入したプローブを孔底から50cmごとに引き上げて行われます。区間ごとに得られる傾斜角が水平方向
の変位量に換算されます。この変位量を、最深部から地表部まで累加することでガイド管全体の形状が分かります。
地中の変位量は、最初に埋設した際のガイド管の形状(初期値)とその後のガイド管の形状との差から求めます。
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Q2.マニュアルで最も重要な事項は?
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A2.
ガイド管の設置と位置づけています。ガイド管と地盤が十分に密着していないために不良データが発生した場合は、その後に正常な計測器で正しい測定作業を
行った場合においても、データを改善することはできないと考えられるためです。したがって、本研究では正しい観測データを得るためには「設置」が最も重要
な課題と位置づけています。
マニュアル(案)では、亀裂が多い地盤でガイド管を設置する場合は、パッカーの使用を推奨
しています。
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Q3.パッカーはどのように入手できますか?
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A3.マニュアルに は連絡先を記載していませんので、webで会社名や製品名にて検索して頂くようお願いします。
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Q4.計測器の取り扱いで注意することは?
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A4.プローブ(計器)は精密機器です。強い衝撃が加わると、内部のセンサを破損する場合がありますので、衝撃を与えないように注意してお取り扱い下さ
い。基本的な計測器の取り扱いについては、各メーカーの取り扱い説明書を参照してください。
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Q5.解析支援ソフトでは何ができるのですか?
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A5.解析支援ソフトでは、
挿入式孔内傾斜計の0点ドリフト補正やガイド管のねじれ補正、および観測結果の立体表示ができます。なお、0点ドリフト補正
は、計測器メーカーの補償する基準内である場合のみに適用されます。倒れ込みの量が基準を超える場合は、本ソフトで補正するのではなく、再測定や計器の検
定を推奨しています。
また、本ソフトは測定データの検定や0点補正に機能を絞ったものです(データ整理やグラフ表示ソフトではありません)。お
手持ちのソフトで、解析支援ソフトの機能で出力したデータにてグラフなどを作成頂くようお願いします。
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Q6.このデータは地すべりの動きでしょうか?
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A6.累積変位図のみでは、地盤の動きをとらえたものか、設置不良によるものか、あるいは測定・計器誤差によるものかが区別できない場合があります。
そこでマニュアルでは、累積変位図と測定データの数表を利用した検定方法(固有誤差検定)を紹介しています。累積変位図で
見られる、地盤の動きと誤認しやすい事例を右図に示します。
検
定・補正方法についてはマニュアルの第3章を、解析方法はマニュアルの第4章を参照下さい。なお、測定データからすべり面の位置を判定する際は、変位の累
積傾向、ボーリングコアとの対応、および考えられる地盤の運動様式との対応などをあわせて総合的に検討することが大切です。
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Q7.マニュアルに準拠して設置や解析を行ったら、すべり面の位置
が変わって問題になる場合は?
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A7.
マニュアルで紹介している設置・観測・解析は、既存技術の見直しによりさらに正確な地中変位のデータを取得できるようになった新たな技術と言えま
す。既存技術による観測データから設定したすべり面の解釈が異なっていた場合は、それは既存技術の限界であり責任を問うものではありません。
既存データの見直しを行うこと、および正確なすべり面位置を把握することは望ましいことで、状況に応じて既往の機構解析や
設計の見直しを検討しましょう。機構解析や設計上問題が生じる場合は、(独)土木研究所地すべりチームまでご一報下さい。
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Q8.ホームページにリンクを貼りたいのですが。
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A8.リンクはフリーです。ホームページなどにリンクを貼る場合は、事前に(独)土木研究所 地すべりチームまでご一報頂ければ幸いです。
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Q9.正しく計測しても固有誤差の標準偏差が基準を超えるのです
が。
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A9.固有誤差が3m間隔で変わっていないでしょうか。その場合は、ガイド管の継ぎ目とプローブの車輪が重なっているため、正しく計測しても常に3m間隔
で固有誤差が変わってしまいます。マニュアルに従ってガイド管の残尺を調整します。
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Q10.正しく計測しても解析支援ソフトの0°180°別算グラ
フが左右対称形にならないのですが。
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A10.0°
180°別算グラフは、測定値を別々に初期値を比較し、それぞれの区間変位を累積した累積変位グラフです。正常な測定で測定間の0点ドリフト
がない場合は、ほぼ左右対称となります。しかし、測定間で0点ドリフトが発生すると両方向のグラフが同じ方向に傾動するため、傾斜軸での対称形となりま
す。
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Q11.測定器(OYO製)からの出力値は小数点以下4桁です
が、マニュアルや 支援ソフトでは4桁の整数です。支援 ソフトへの入力は、どのようにすればよろしいのでしょうか?
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A11.
出力値は使用するソフトにより種類あり、どちらも正しい表示です(例;0.2624 or
2624)。マニュアルでは、固有誤差の表示などを見やすくするために後者で表現しています。前者の場合は1万倍して(=小数点以下の部分を)支援ソフト
に入力します。
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Q12.充填不良によるS字状データはどのように発生するのです
か?
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A12.アクリルパイプに水道管用断熱材を入れて上から押すと、上から見るとパイプ内で断熱材がらせん状に、横方向からはS字状に曲がって見えます。挿入
式孔内傾斜計の累積変位図ではA軸とB軸に分けて表現するためグラフがS字状になります。
な
お、実験の写真ではガイド管に見立てた断熱材にねじれが発生しているように見えます。しかし、実際の地盤ではらせんが1巻き発生しても1〜2°程度と小さ
いため、ガイド管の方位計測による追加の補正は必要ありません(ねじれはガイド管の弾性で吸収されます)。
【参考】延長10mで直径25mmの螺旋が1回では約1°、延長5mでは約2°である
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S字状データの再現実験
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Q13.ガイド管の方位をなぜ測定しなければいけないのですか?
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A13.ガイド管の設置深度が深い場合、ガイド管がねじれていることがあり、測定結果による地中変位の方向が実際の変位方向と異なっていることがありま
す。したがって、ガイド管の方位測定を行い、変位方向を補正しましょう。
マニュアルでは、10°以上のねじれが生じる割合が多くなる、深度30m以上の場合に方位測定を推奨しています。
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Q14.解析支援ソフトはどのメーカーの傾斜計に対応しているの
ですか?
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A14.
解析支援ソフトの0点ドリフト補正機能は、共同研究に参画しているOYO製とSAKATA製計測器での各種実験を通じて理論を確立したものであ
り、観測値の検定基準もOYO製とSAKATA製にのみ対応したものです。その他のメーカーについては、検定基準や0点ドリフト補正の有無などについて取
扱説明書で確認するようお願いします。
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Q15.ガイド管の方位測定がバラつく場合のねじれ補正は?
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A15.磁石を使用した方位測定器では次の理由から測定値にバラツキや異常値が生じることがあります。
1)地山が有する磁性(蛇紋岩、鉱物を多く含む地質)、2)ガイド管設置時に使用することがある吊り下げ用のワイヤ、3)
ボーリング作業時に孔内に残置したケーシングやツールス、4)方位磁石タイプは人的な読み取り誤差や磁石の差動不良(孔内水の濁りも含まれる)
この場合は、異常値の削除やバラツキの移動平均により平滑化します。明らかな異常値の場合はその区間の補正はできません。
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Q16.マニュアルは地すべり以外にも使えるのですか?
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A16.
挿入式孔内傾斜計は、マニュアルで対象にしている道路やダム、砂防などの地すべりの他に、トンネル、開削、盛土および港湾工事など多種の用途に用いられて
います。マニュアルは、基本的にそれらの各種の用途の挿入式孔内傾斜計に適用可能と考えられますが、設置するガイド管の種類や充填材などの材料が違う場合
があること、観測される変動形態や変位量が異なる場合があること、および変位量が大きい場合は本マニュアルの判定基準は適用外であることに留意する必要が
あります(軟弱地盤などの変位計測で変位量が大きい場合は、地すべりの基準より固有誤差のバラツキや固有偏差が大きくなります)。
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Q17.長い孔内傾斜計の設置・計測は、どのよう
にしていますか?
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A17.地すべり地における長尺の挿入式孔内傾斜計設置及び計測等に関するノウハウ(土木技術
資料No.4213)に事例等が掲載されています。参考にしてください。
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Q18.孔内傾斜計の0点補正量の値が観測結
果の値にどう影響していますか?
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A18.地すべりチームHPの解析支援システム、あるいは傾斜計マニュアルで
の0点補正量の考え方では、1つの測定区間の補正量です。 例えば深度10mで0.5mごとの測定間隔で補正量が0.1とすると、全体では
0.1×20=2.0です。孔口部で2.0の補正がかかることになります。
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