土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

鋼部材の疲労亀裂について

全国の道路に多数設置されている横断歩道橋において道路橋と同様に、経年劣化事例が報告されています。
大型車交通量の多い路線の床版として鋼床版が用いられている橋において、溶接部に疲労損傷が報告されています。特に、U型の縦リブ(以下、「Uリブ」)を使用した鋼床版では、Uリブの溶接部からデッキプレートやUリブ内に進展し、供用性に影響を与えるおそれのある亀裂が発見されており、その対応について技術支援を行いました。
鋼床版の場合、輪荷重位置に対して橋軸方向の同一の構造部位に同種の亀裂が発生する可能性が高いと考えられるため、橋全体の疲労に着目した磁粉探傷試験や溶接状況等による調査が行われました。さらに、路面損傷のおそれのある亀裂も確認されたことから、舗装の変状等が発生している箇所を対象に、舗装を除去した上で亀裂の有無の調査が行われました。
既設の鋼床版については、疲労への配慮が必ずしも適切でない構造や溶接が存在する場合があり、今回対象の鋼床版についてもこのような部位での局部変形・応力集中により疲労耐久性が著しく低下したものと考えられ、既に亀裂が多数発生しており、他の同様の部位から今後亀裂が発生する可能性が高いことから、鋼床版全体の応力軽減を図る必要があると判断されました。そこで、応力軽減の措置として、既存の舗装を剛性の高い鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装に置き換え、鋼床版と一体化を図る対策が行われ、一体化されている前提であれば、載荷試験により応力低減効果があることが確認されました。

鋼床版の疲労亀裂の発生部位 図-1 鋼床版の疲労亀裂の発生部位
鋼床版上のSFRC舗装 図-2 鋼床版上のSFRC舗装

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鋼部材の疲労き裂について(その3)-鋼床版-、土木技術資料、Vol.53、No.8、pp.54-55、2011.