研究の紹介

ダムを守る! 〜 GPSでフィルダムをリアルタイム管理 〜

GPSを利用したフィルダム外部変形量計測 クリックすると拡大します
GPSを利用したフィルダム外部変形量計測
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外部可動標的基礎に設置したGPSセンサー
外部可動標的基礎に設置したGPSセンサー
マンホール内に設置したGPSセンサー
マンホール内に設置したGPSセンサー

 フィルダムの安全管理のための計測の中で、外部変形量の計測は、堤体全体の状態を評価する最も重要な計測項目の一つです。フィルダムの外部変形量の測定は、堤体上に設置された測量用の標的の水平及び鉛直方向の変位量を測量することにより行われています。しかし、従来の測量では、
   ・測定や結果の整理に時間を長く要する
   ・地震時などの非常時における臨時点検において
    必ずしも迅速な計測ができない
などの課題があります。
  これらの課題を解決する手法として、土木研究所ダム構造物チームでは、GPS(Global Positioning System)によるフィルダム外部変形量計測の導入についての検討を進めています。

 本研究では、電源・通信装置、メモリーなどの装置を通信集約機に集約し、各計測地点にはGPSセンサーのみを設置する機器構成とすることで、計測精度を低下させずに小型・軽量化させたものを使用しました。計測精度は、従来の測量と同等ないしはそれ以上の精度が確保できています。
 現在、研究しているGPSによるフィルダム外部変形量計測は、次のとおりです。
  @GPSセンサーを外部可動標的基礎に設置
    GPSセンサーは、フィルダム堤体法面に設置されている
   測量用標的基礎などに設置します。測量用標的基礎に設
   置することで、GPSの計測結果と従来の測量結果のクロス
   チェックを行うことができます。
  A天端埋設型GPSの開発
     (GPSセンサーを堤体天端のマンホール内に埋設)
    天端埋設型GPSは、センサーを小型化するとともに、マン
   ホールの蓋は、電波が透過しやすいFRP(繊維強化プラス
   チック)製を使用しています。天端埋設型GPSは、埋設時の
   計測精度について検証を行い、外部設置した場合と同等に
   計測できることを確認しています。

 ダム構造物チームでは、外部変形計測を従来の測量からGPS計測主体ないしは完全移行に向けた検討を行い、フィルダムの安全管理のさらなる高度化に取り組んでいます。

※フィルダム : コンクリートではなく、岩石や土砂を用いて築堤
           したダムの総称を言います。

( 問い合わせ先 : ダム構造物チーム)

橋を守る! 〜 地震による橋の被害の早期発見と迅速な補修技術の開発 〜

     
橋梁の被災度測定システム
   橋梁の被災度測定システム
鉄筋コンクリート橋脚(損傷状況)
鉄筋コンクリート橋脚(損傷状況)
鉄筋コンクリート橋脚(断面補修)
鉄筋コンクリート橋脚(断面補修)
鉄筋コンクリート橋脚(シート巻立て)
鉄筋コンクリート橋脚(シート巻立て)

 社会基盤施設の1つとして生活を支える道路、橋などの構造物は、将来起こる可能性がある地震を考慮して造られています。しかしながら、将来起こる地震の大きさやそれによる揺れの強さを正確に予測することは非常に難しく、また、耐震性能が相対的に低い古い時代の構造物もあることから、地震による被害を完全に防止することは困難です。このため、地震により何らかの被害が生じることに対して準備をしておくことも重要です。

 大規模な地震が発生した場合には、道路は災害時の救援や物資の輸送、復旧活動に重要な役割を果たします。このため、もし橋が地震により壊れた場合にも、出来る限り早く損傷を見つけて、これを迅速に修復することが重要です。このため、本研究では、地震による橋の損傷の発見及び被災した橋脚の迅速な補修に関する技術開発を行っています。
 地震における橋の被災度(損傷度)を判定する技術としては、「被災度判定センサ」を開発し、実験によりその精度を検証しています。このシステムは、橋の揺れの変化から損傷度を推定するセンサであり、橋の被害に関する情報を緊急点検中のパトロールカーに無線で送信できるため、被災の状況を迅速に把握することができます。
 続いて、被災した橋脚の迅速な補修に関してですが、従来では、補修に5日程度を要していましたが、本研究では、同様の工法でも
   ・ 速乾性の材料や接着剤の活用
   ・ 簡易な補修デバイスの活用
により、1日程度で補修を完了できる工法の提案を行っています。なお、この工法を用いた場合においても、地震前と補修後の性能がほぼ同等であることを実験により証明済みです。

 今後は、被災度判定センサの精度の向上を図るとともに、より効率的な復旧技術の開発を行う予定です。



(問い合わせ先 : 耐震チーム)