土研ニュース

世界で注目される土研の河川再生研究!
〜 河川再生に関する国際水管理フォーラム(スイス)に出席 〜

会場となったカルタウゼ(Kartause) 中世の修道院を修復したものです
会場となったカルタウゼ(Kartause)
中世の修道院を修復したものです
トゥール川の河原再生現場を視察
トゥール川の河原再生現場を視察
再生した河原に160年ぶりにコチドリが戻ってきました
再生した河原に160年ぶりに
コチドリが戻ってきました!

 自然環境への関心が高まるなか、河川再生が世界中で盛んになっています。スイスの研究所エアワーグは9月4日から3日間、「河川再生:意思決定と事業評価」をテーマに国際水管理フォーラム2007を開催しました。このフォーラムには、40名のヨーロッパからの参加者のほか、講演者として世界中から河川再生に関わる研究者、政府関係者、NPO代表など11人が招かれました。

 土木研究所からは河川生態チーム中村圭吾主任研究員が「日本の河川再生」について40分ほど講演を行いました。日本では多くの河川再生が実施されていますが、世界ではあまり知られていません。そのため、講演に対する関心は高く、なかでも土研が誇る世界最大級の河川環境実験施設、「自然共生研究センター」に注目が集まり、エアワーグのホームページやドイツの国営放送(dradio)で紹介されました。人口が多い上に、雨が多く、地形も変化しやすい日本のような国で河川再生が行われていることは、世界の参加者を勇気づけたようです。
 今回のフォーラムでは、自然科学の研究者だけでなく、河川再生プロジェクトの進め方について経済学の研究者からの発表もありました。日本では、まだ少ないですが、海外では自然再生の分野に経済学や社会学など、いわゆる文系の研究者が参加することが増えてきました。
 河川再生の情報を共有する動きも活発になっています。イギリスは河川再生センターが、ヨーロッパでは欧州河川再生センターが中心となって、河川再生のデータベース化を検討しています。さらに、アメリカではパルマー教授らを中心としてすでに河川再生データベースが作成されました。アジアでは(財)リバーフロント整備センターを中心としたアジア河川・流域再生ネットワーク(ARRN)があります。これらのネットワークをうまくつなげれば世界的なデータベースが出来るのではないかという議論も出ました。

 今後、これらの情報が共有されることによって、河川再生のレベルアップが期待されています。


(問い合わせ先 : 河川生態チーム)

ICHARMシンポジウム
「ICHARM Quick Report on Floods 2007」 実施報告

     
会場の様子 ICHARM棟1階講堂にて
会場の様子 in ICHARM棟1階講堂
フロアとのパネルディスカッション
フロアとのパネルディスカッション
集合写真
集合写真

 土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、去る11月6日(火)にICHARM棟内1階講堂において「ICHARM Quick Report on Floods 2007」と題するシンポジウムを開催しました。当日は、土研・国総研をはじめ、大学教授や水災害の専門家及び現在ICHARMで研修中の海外からの研修生29名を含め、約60人入る会場は満席の状態でした。
 最初に、土木研究所坂本理事長が開会挨拶を行い、続いて、ICHARM竹内センター長が、将来予測される気候変化への適応はICHARMが水災害の防止・軽減に向けた諸活動を展開する上で大きなキーワードの一つであることを述べるとともに、今後とも今回のシンポジウムのような情報発信の場を定期的に開催していく予定である旨を紹介しました。
 続いて、海外招待講演者2名のうちの一人、中国水利水電科学研究院のDr. KUANG ShangFu院長の講演が行われました。氏は、「中国における洪水とその対策」と題して、中国における水害損失は1990年代と2000年代を比較すると減少傾向ではあるが、未だにGNPの1.8%を占めていること、洪水による死者は1950年代以降一貫して減少傾向にあるが、単位面積あたりの洪水損失は増加していることなどを紹介しました。洪水対策として、三峡ダムや遊水池、堤防の建設などの構造物対策、また「中華人民共和国水法」や関連法の改正、上海における洪水災害リスクマップの作成などの非構造物対策を組み合わせて行っていることを実際の災害事例とともに話されました。
 二人目は、イギリス ブリストル大学水環境管理研究センターのDr. Ian Cluckieセンター長です。氏は、「イギリスの洪水関連災害」と題して、2007年にイギリス南部で発生した洪水災害の状況とそれから得られた教訓について報告しました。降雨発生確率が200年に1回の規模を越えた地点もあったことに触れつつ、これが気候変動によるものであるなら、もはや過去のデータの統計処理に基づく計画手法は使えなくなること及びイギリスにおける地球温暖化による影響としては洪水よりも高潮が大きな問題であることなどを紹介し、今後は気象分野と環境分野の連携が必要であることを力説されました。
 続いて、日本における最近の洪水災害発生状況と、近年の豪雨発生頻度の増加傾向を踏まえた今後の対応策について、国土交通省河川局防災課災害対策室の森範行 企画専門官が報告しました。
 3名の招待講演者の講演を受け、竹内センター長を司会役としてフロアとのパネルディスカッションが行われ、将来ほぼ確実に発生すると予想される地球の気候変化がもたらす洪水被害への対応戦略等について積極的に意見が交わされました。

(問い合わせ先 : ICHARM 国際普及チーム)

   

第1回アジア・太平洋水サミットに参加しました

「総合的水災害防止に関するシンポジウム」 スピーチを行う谷口国土交通省技監
「総合的水災害防止に関するシンポジウム」
スピーチを行う 谷口国土交通省技監
説明する 竹内ICHARMセンター長
説明する 竹内ICHARMセンター長
国際機関、学識界、行政から代表者が集まりました
国際機関、学識界、行政から
代表者が集まりました

 第1回アジア・太平洋水サミット(APWS)が、12月3日〜4日、大分県別府市で開催されました。このサミットは、アジア太平洋諸国における気候変動による水災害への影響等水に関する様々な問題をテーマに開催されたものであります。
 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、APWSの主要な3つの議論のテーマの一つである「水関連災害管理」についてその先導役として、サミットの主要な提言を盛り込んだ提言書(ポリシーブリーフ)作成過程に関わり、以下の活動を行いました。

【オープンイベントの開催】
 サミット前の12月2日、オープンイベントとして、国土交通省河川局との共催で「総合的水災害防止に関するシンポジウム」を開催しました。
 ここでは、懸念される気候変動など水関連災害について幅広い議論が行われました。気候変動への対応において、現在は二酸化炭素等の排出量抑制に重点が置かれた論議がなされていますが、その努力を行っても洪水や渇水などの状況にある程度の影響が出ることが確実視されています。この状況のもとで、今後の水関連の災害への対応に関して、洪水と渇水の一体管理など水災害に関する統合的な取り組みの必要性、また気候変動に対応するために、少しずつ新しい試みを行いながら進める必要があること(順応的な水管理)などについて合意がなされました。
【サミットにおける分科会の開催】
 12月4日、「水関連災害管理」と題して各国の行政の指導者等を交え、水災害管理の具体事例や、災害管理の枠組み・理念等、多様な視点で議論を行いました。
 この結果、気候変動の影響を見越して、必要な施設整備(ハード)や、避難を効果的に行うための警報システムなど(ソフト)を効果的に組み合わせ、早急に対策を始める必要があること等について、共通の合意が得られました。
 なお、サミット全体の情報については、 →こちらへ 

※ APWS : Asia-Pacific Water Summit

(問い合わせ先 : ICHARM)

   

LCPC(フランス中央土木研究所)との研究協力ワークショップ実施報告

 海外の多くの国にも、土木研究所と同様にその国に必要な土木技術に関する研究機関があります。この様な外国の研究機関との研究交流(最新の研究課題や成果、研究施設に関する情報交換など)は、自分の国の土木技術研究をより良くするのにとても役に立ちます。
 LCPCとの研究協力協定は、その代表的なものの一つです。LCPCは、フランスの道路や橋に関する研究を行っている国立の研究機関で、日本における土木研究所とよく似ています。LCPCとの研究協力ワークショップは1995年11月にパリで初めて開催され、その後3年毎に日本とフランスで交互に開かれてきました。今回、第5回の研究協力ワークショップが2007年9月24日から27日まで、フランスで開かれました。

 フランスの西部にナントという町がありますが、ここにはLCPCの大型実験施設を主体とした研究センターがあります。この研究センターにて、最新研究の概要や新しいプロジェクト等について講演があり、研究施設の見学を行いました。特に独自の研究に基づく世界的にも希少な研究施設や実験機械の開発が行われていました。
 また、2日目からは、道路構造物や地盤、舗装など、専門分野の幾つかのグループに分かれて、最近の研究内容について紹介しあうと共に、フランスの新技術を応用した建設現場を見学しました。
 最終日には、LCPCパリ本部にて今後の研究協力に関する打ち合わせが行われ、3年後に日本にて次回のワークショップを行うことを約束する「覚え書き」が調印されました。

 LCPCと土木研究所の研究協力は、3年毎のワークショップだけでなく、様々な分野でより頻繁に研究者が行き来して情報交換を行っています。

※LCPC : Laboratoire Central des Ponts et Chaussees


(問い合わせ先 : 新材料チーム)

   

一般公開(土木の日)を開催しました

橋コンテスト表彰式
橋コンテスト表彰式
砂防えん堤がある場合とない場合の比較 土石流発生装置
砂防えん堤がある場合とない場合の比較
砂防えん堤がないと、土石流により大災害 土石流発生装置
砂防えん堤がないと、土石流により大災害
「土石流発生装置」
排水性舗装って、何だろう? 舗装走行実験場
排水性舗装って、何だろう?
「舗装走行実験場」
石にもいろんな種類があるよ! 石の博士になろう!
石にもいろんな種類があるよ!
「石の博士になろう!」
水は、きれいになったかな? 水がきれいになる仕組みを知ろう!
水は、きれいになったかな?
「水がきれいになる仕組みを知ろう!」

 毎年恒例となりました「土木の日一般公開」を、11月10日(土)に土木研究所(以下、土研)と国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の共催で実施しました。この行事は、広く皆様に、両研究所が行っている研究や土木事業を理解していただくことを目的として実施しています。今年も、「ボール紙でつくる橋コンテスト」や実験施設公開、土木体験教室等、各種イベントを行いました。あいにくの空模様の中でしたが、1,032名の来場がありました。

【ボール紙でつくる橋コンテスト】
 「ボール紙でつくる橋コンテスト」は、将来を担う子供たちに土木事業におけるものづくりの楽しさを体験してもらうことを目的として、平成6年度から実施しております。橋コンテストの対象者はつくば市内の小学5年生で、工作用ボール紙を用いて“ぼくのはし、わたしのはし”をテーマに、独創的、夢のある橋を作ってもらいました。
 今年は、30の小学校から214点の作品を応募いただきました。応募いただいた橋は、形も色も様々でしたが、どれも夢があり、大人にはない柔軟なアイディアにあふれていました。
 一般公開に先立って行われた橋コンテストの審査会では、美術・橋梁の専門家・教育関係者が、それぞれの専門の観点から審査を行い、制作条件を満たす作品の中から最優秀賞3作品、美術デザイン賞5作品、構造デザイン賞5作品、努力賞5作品を選出しました。
【実験施設公開】
 今年は、試験走路、高度道路交通システム(ITS)、舗装走行実験場、ダム水理実験施設、土石流発生装置、輪荷重走行試験機、騒音実験施設、ロボット建設機械の8つの実験施設に加え、関東地方整備局の「働く自動車」を見学施設としました。施設見学は、クイズ&スタンプラリー方式としています。見学者の皆さんには、クイズが印刷されたスタンプ用台紙を持って各実験施設を見学、クイズに答え、スタンプを集めていただきました。クイズは実験施設に関連した内容で、担当者の説明がヒントとなっています。
【土木体験教室】
 土木体験教室では、「石の博士になろう!」、「トンネルの博士になろう!」、「水がきれいになる仕組みを知ろう!」、「景観シミュレーション」、「身近な動物や木を知ろう!」を実施し、遊びながら、土木技術が日常生活の中のどこに、どのように役立てられているのか、理解いただきました。
【その他の催し物】
<実験模型展示>
 土研ICHARM棟1F廊下に、大型風洞実験施設(明石海峡大橋等について実験を行った施設で、風洞実験施設としては世界最大規模)での実験に用いた橋の模型を展示しました。
 展示した模型は、明石海峡大橋よりも1,000m程度長い、全長5,000mの橋を想定、縮尺1/125で作られたもので、長さが40mあります。この橋について風洞試験を行った結果、風速が80m/sの場合を想定しても、崩壊につながる有害な振動が生じないことを確認しています。
<ゾウさんと記念撮影>
 マスコットの“ゾウさん”と記念写真を撮り、土木構造物等の背景写真と合成、来年2008年のカレンダーを作って、後日郵送する予定でおります。皆さん、ご家族、ご友人等と、思い思いのポーズで記念撮影をされました。
 オリジナルカレンダー、来年も楽しく使っていただけると幸いです。


(問い合わせ先 : 研究企画課)

   

「つくば科学フェスティバル2007」に出展しました

会場の様子 中央付近が土木研究所ブース
会場の様子
(中央付近が、土木研究所ブース)
「橋のペーパークラフトをつくってみよう!」 さあ完成!手を離しても壊れません
「橋のペーパークラフトをつくってみよう!」
さあ完成! 手を離しても壊れません

 11月17日(土)・18日(日)に、つくばカピオで “つくば科学フェスティバル2007 「好奇心 科学のとびら 開くカギ」” が開催されました。これは、つくば市教育委員会が中心となって行っている催しで、つくば市内の小中学校や研究所などの機関が参加、58のブースの出展がありました。それぞれのブースでは、実験や工作などを通じて、科学に親しめる体験型のイベント等が実施されました。

 土木研究所は、17日(土)に「橋のペーパークラフトをつくってみよう!」と題して出展、来場者の皆さんにアーチ橋のペーパークラフトを作っていただきました。これは、土台と7つの台形ブロックを作り、アーチ橋の形に組んでいくと、ブロック同士をのりやテープで固定しなくても安定するものです。
 完成後のアーチ橋を前に、なぜ、のりやテープで固定せずに安定するのか説明しながら、同じような原理で実際のアーチ橋や丸いトンネルの入り口が成り立っていることを伝え、身近な土木構造物に親しみを持っていただきました。
 その他、ブース内には、土木研究所の研究や活動について紹介するパネルやパンフレットも設置しました。こちらも興味を示してくださる方がたくさんいらっしゃいました。
 会場には、開始時間早々から、子供から大人まで多くの皆さんが訪れ、賑わっておりました。土木研究所のブースでも、アーチ橋の仕組みを知って知識が増えたと喜ばれる方、作ったペーパークラフトを持ち帰ってもう一度組み立ててみたいとおっしゃる方など、多くの皆さんに楽しんでいただきました。この催しは、土木研究所をより知ってもらういい機会となりました。


( 問い合わせ先 : 研究企画課)

   

寒地土木研究所講演会を開催しました

会場の様子
会場の様子
木雄次氏による特別講演
木雄次氏による特別講演
一般講演の様子
一般講演の様子

  平成19年12月5日(水)、第21回寒地土木研究所講演会を札幌市教育文化会館にて開催いたしました。当日は、平日にも関わらず500名を超える皆様にご来場いただきました。

 今回の講演会の特別講演では、外部講師として三井物産株式会社理事北海道支社長木雄次様をお招きし、「グローバルな視点でみた北海道:七つの宝に期待」と題してご講演いただきました。日本をリードするトップビジネスマンとしてご活躍し、豊富な海外経験もお持ちになる木様のグローバルな視点から見た北海道の現在と未来を、具体的かつわかりやすい言葉でご説明いただくご講演となりました。
 北海道の七つの宝
  ・「広い土地資源」      ・「日本一の自然環境」
  ・「戦略的な立地条件」   ・「豊富な水資源」
  ・「札幌の都市機能」     ・「北海道の人の魅力」
  ・「北海道ブランドの魅力」
と、北海道経済の今後への期待、道産子が伺っても新しい発見があり、また北海道の未来について希望の持てる力強く、勇気づけられる内容でした。
 今回の講演会は、木様の特別講演の他、寒地土木研究所から4件、つくば中央研究所から1件の一般講演も行い盛況の内に閉会いたしました。この講演会の様子は、20年3月に「寒地土木研究所月報講演会特集号」として発行される予定です(月報の内容は寒地土木研究所HP上でもご覧いただけます)。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 企画室)

   

研究施設の見学会について

      
2007.11.2 筑波施設見学会
2007.11.2 筑波施設見学会
ハンドルを切らずに曲がる! 試験走路
ハンドルを切らずにカーブを曲がる!
試験走路
大水深平面水槽 寒地土木研究所港湾実験棟
大水深平面水槽
寒地土木研究所 港湾実験棟

 土木研究所では、土木分野の技術者以外の皆様にも広く活動内容を理解していただくため、一般公開やイベント時以外にも、年間を通し随時、施設の案内を行っています。来場者数は、平成13年度の762人から増え続け、昨年度の実績は2倍近い127件1481人もの方が見学に訪れています。

 また、去る平成19年11月2日(金)、筑波研究学園都市交流協議会が開催した「筑波施設見学会」の第1回目として、産学官連携委員会委員や各機関の企画管理者を中心に17名の方が、土木研究所大型施設の見学を行いました。
 小雨の降るあいにくの天候のなか、水中環境実験施設や大型動的遠心力載荷試験装置など8施設を周り、チームの担当者から施設についての説明を受けました。見学者には、施設の写真を撮る方や、施設の性能や施設の貸し出し等について熱心に質問をする方などがおられました。

 土木研究所の活動について理解を深めていただくため、随時施設見学等を行っています。施設見学等を希望される方は下記までお問い合わせください。


( 問い合わせ先 : <つくば> 土木研究所 総務課
             <札 幌> 寒地土木研究所 企画室)

橋桁の下に貼り付けている炭素繊維