研究成果の紹介

コスト縮減のためのロックフィルダムの材料強度評価に関する研究


ロックフィルダムの位置の違いによる
拘束圧の大きさの違い

表層すべり試験(左)
一面せん断試験(右)の試験状況


   ダム建設現場での表層すべり試験実施状況

 水を堰き止めるコアは粘土質で、コアが崩れないように砂や砂利のフィルタで固め、その外側を岩石のロック材が全体を支える超大型土構造物であるロックフィルダムの建設では、設計施工の合理化やコスト縮減が強く求められています。周りの土から受ける圧力を拘束圧と呼びますが、周辺土から受ける圧力が小さい低拘束圧状態でのロック材料の強度を適切に評価することができれば、ロックフィルダムの設計合理化を図ることが可能になり、安全性を損なわないという前提でのコスト縮減に寄与することができます。
 これまで、実際のダムに使用されるロック材料を用いた室内試験として、締固め度を変化させて、低拘束圧条件下における試験を実施したところ、破断せずに耐えられるせん断強度が、通常の拘束圧状態の時より大きくなることが確認できました。
 また、建設中のダムにおいて、低拘束圧条件下におけるせん断強度を評価するのに必要な、崩れることなく安定を保つ角度である静的安息角を得るために、実物大で試験を実施しました。この結果、締め固めた状態での実際のロック材料は、室内表層すべり試験と同等以上の強度を有していることがわかりました。
 このような研究を進めることにより、ダム建設のコスト縮減を図ることができるように、日々研究を進めています。



(問い合わせ先:ダム構造物チーム)

斜面の動きを安全に監視する!
〜RE・MO・TE2(リモート2:Remote Monitoring Technology2)の紹介〜


人が立ち入れない危険な斜面に標的を
設置し、その動きを計測します

クロスボーを用いて矢を射出する

標的の設置・観測方法

矢の先端に取り付けたペイントカプセル

 斜面崩壊や岩盤崩壊、地すべり末端部の崩落は、その下で作業をする人や人家、施設などに被害を与えます。これら崩壊・崩落を事前に予測するためには、斜面や岩盤に動きがあるかどうか、またその動きはどの程度かを監視することが大切です。そのためには、伸縮計を斜面に設置して直接斜面の動きを計る、あるいは標的を斜面に直接設置して測量機器で計測するなどが有効ですが、崩壊・崩落が懸念される斜面へ直接立ち入って計器や標的を設置することは非常に危険です。そのため私たちは、民間企業との共同研究により、測量のための標的を直接斜面へ立ち入ることなく、遠隔より精度よく設置し、レーザー光による測量機器により監視する技術を開発しましたので、これの概要を紹介します。
 皆さんはクロスボーをご存じですか? クロスボーとは弓(洋弓)のことであり、近年はスポーツとしての射撃用具として用いられています。今回紹介する技術は、このクロスボーを用いることにより、標的を精度良く監視対象とする斜面へ打ち込むというものです。
 標的は塗料とし、矢の先端にこの塗料入りのガラスカプセルを取り付け、これをクロスボーによって斜面にぶつけてカプセルを割ることにより標的を形成します。塗料の中には、測量機器から出るレーザー光の反射率を高くするため50μmという非常に細かなガラスビーズを混ぜています。(μ:100万分の1)
 また、標的を狙った位置に打ち込むために、屋外において矢の射出実験を行い、塗料入りのガラスカプセルを取り付けた矢がどういう軌道で飛ぶのかを確認しました。
 この技術は、昨年3月の能登半島地震で不安定化した岩盤斜面や工事現場の崩壊斜面などで実際に活用されています。




(問い合わせ先 : 地すべりチーム)