研究成果の紹介

盛土高さ低下によるコスト縮減
    
〜土被り不要の「複合構造ボックスカルパート」を開発〜


従来構造との相違点
(左)従来、(右)縮減後

複合構造ボックスカルバート採用により期待される効果
(左:従来の盛土断面、右:縮減後の盛土断面)


輪荷重走行試験機による疲労載荷試験


完成した複合構造ボックスカルバート
(高規格幹線道路 帯広・広尾自動車道(帯広市))

 平野部に建設される高規格幹線道路(自動車専用道路)では、盛り土形式となることが多く、盛り土の高さをできるだけ低く抑えることが建設コストの縮減に繋がります。

 盛り土の高さは、高規格道路と現道との交差部に作られる鉄筋コンクリート製のボックスカルバート(箱状の構造物)等により制限を受けることから、新形式のボックスカルバートの研究・開発を進めてきました。新形式のボックスカルバートでは、屋根部分(頂版)にコンクリートを鋼板で挟み込んだサンドイッチ構造を採用しました。この構造は、橋などの床版部分にも採用されており、軽量で剛性や耐久性にも優れ、従来の鉄筋コンクリート頂版に比べて厚さを半分程度にすることができました。さらに、従来のボックスカルバートでは、頂版上に最低50cm程度の盛り土を必要としていましたが、新形式ではこの上に舗装を敷設し、直接自動車を走らせることができ、従来必要であった盛り土を不要としました。これにより、従来のボックスカルバートを採用する場合に比較して盛り土の高さを1m程度低く抑えることができ、高規格道路全体での盛り土量を減少させられ、コスト縮減が可能となりました。屋根部分にサンドイッチ頂版を採用したこの方式を「複合構造ボックスカルバート」と呼び、これを採用することにより、盛り土量や用地面積の減少に伴うコスト縮減効果とともに、盛り土高さが低くなることによる景観性の向上効果などが期待されます。
 サンドイッチ頂版の開発に際しては、様々な静的載荷試験を行うとともに、大型車両の走行による疲労損傷に対する耐久性を確認するために、輪荷重走行試験機を用いた載荷試験なども実施しています。さらに、現場に新設された複合構造ボックスカルバートを用いて、砂利満載のトラックを頂版上に乗せてたわみなどを計測し、設計方法の妥当性を検証しています。

 複合構造ボックスカルバートは、特に平野部に建設される盛り土形式の高規格幹線道路などにおいてコストの大幅な縮減効果が期待できる構造です。本構造がコスト縮減対策の一工法として役立つことができれば幸いです。



問い合わせ先:寒地土木研究所寒地構造チーム