研究の紹介

河川模型を用いた河道計画の検討


橋脚周りの河床洗掘はどこまで進むのでしょうか?
洗掘から橋を護るためには何をしたらよいのでしょうか?
            (左:現地  右:実験)

水流の作用で川底には波(河床波)ができます。
代表的な河床波である「砂堆」の消長は、水流に大きな影響を与え、現象の再現性を考える上での大事なポイントになります。
           (左:現地  右:実験)

河川模型の俯瞰図

 “河川模型を用いた実験をなぜ行う?”については、一言で申しますと、現地で計画されている事業等が妥当なものであるかどうかを確認するためです。計算などの机上検討や現地観測なども重要な検討手段で、現在ではそれだけでかなりのことがわかるようになっています。ただこれらの効用には限界がありまして、これらの検討だけでは充分ではありません。例えば、橋脚周りが水流で洗掘されたり、川底が波状になったりする状況を計算することは困難です。よって、河川模型を用いた実験を行うことになります。以下に河川模型の縮尺の考え方及び河道計画の検討の際に注意する点などについてご紹介します。
 河川模型を用いた実験で大切なことは、現地で生じた現象を再現するだけでなく、今後起こるであろう現象を予知することです。しかし、あくまでも模型ですので、単純に縮小(または拡大)した河川の模型に水を流せば忠実に実現象を再現できるというものではなくて、それには自ずと限界があります。この大きな理由の一つとして、水には粘り気があって、あまり小さな模型にするとその粘り気の影響が効いてくるため、流れの速さ、水かさ、川底の砂の動き等が現地と同じになりません。ですから、何に注目し、どの程度の精度を求めるのか等によって、模型の縮尺やタイプを選んで検討することになります。
 以上のように、河川模型では実際の現象をなるべく忠実に再現することが先ず何より重要であり、そのためには検証となる現地洪水データの質が実験の精度を大きく左右する。
 河道計画においては滅多に遭遇することのない大きな洪水規模(100年に1回程度)を対象に検討されますが、検証となる現地洪水規模があまり大きくない場合には、現地観測・調査を追加するとともに水理計算による検討と補い合うことによって、より高度な検討結果を得るようにします。



問い合わせ先:河川・ダム水理チーム

山岳トンネルの振動実験 〜地震被害のメカニズムを解明する〜

     

和南津トンネルの被害

国道17号川口町和南津トンネルコンクリートの剥落
国土交通省北陸地方整備局道路部提供
(H16.10.24 撮影)


トンネル内の位置を表す記号

縦軸の上が引張りの力、下が圧縮の力
横軸はトンネル内の位置を表す

 主として岩盤中に建設される山岳トンネルは、断層破砕帯等の特に地山の悪い区間や坑口部を除いて、これまでの地震では大きな被害が発生しなかったことから、経験的に地震に強い構造物と言われてきました。しかし平成16年の新潟県中越地震では、数は限られるものの、これまでに地震の被害を受けにくいとされてきた区間においても覆工の崩落等を伴うような比較的規模の大きい被害が発生しました。トンネルを数多く抱える我が国でこのような被害を最小限に抑えるためには、地震被害の発生メカニズムを解明し、合理的な耐震対策技術を確立することが求められており、本研究では数値解析や模型振動実験を通じて検討を行っています。

 新潟県中越地震では、これまでの地震で大きな被害が確認されなかった比較的土被りの大きい軟質地山中のトンネルでも規模の大きな被害が発生しました。その一つである和南津トンネルでは、天端に圧縮破壊が発生し、数m幅の覆工コンクリートが崩落しました。現在、このような被害を防ぐために様々な研究が進められていますが、被害発生メカニズムは解明されていません。そこで本研究では、軟質地山中のトンネルの地震時挙動を検討するため、模型による振動実験を行いました。
 実験は、乾燥砂でできた直方体の地山の中に、1mm厚のアルミニウム板でできた直径15cmのトンネル覆工模型を埋設し、下面から加振することで行いました。その結果、振幅が小さい場合や加速度が小さい場合は、トンネルは斜め方向の伸縮が卓越し、ひずみも肩部に集中して発生しましたが、振幅・加速度ともに大きくなると、斜め方向の伸縮に加え水平・鉛直方向の伸縮も発生するとともに、グラフに示すように天端部に大きな圧縮ひずみが発生しました。このことは、軟質地山中のトンネルに強い地震動が作用した場合は天端部にも大きな圧縮力が発生する可能性があることを示唆しており、地震発生前の覆工の応力状態によっては天端部が圧縮により破壊する場合もあると考えられます。

 山岳トンネルの地震被害メカニズムについてはまだ解明されていない部分が多いのが現状です。本研究では、今後も実験手法や解析手法に改良を加え、より実現象に即した検討を進めていく予定です。



問い合わせ先:トンネルチーム