土研ニュース

「構造物メンテナンス研究センター設立記念講演会」開催される


講演の様子

プログラム

アンケート結果の例

 2008年8月6日に、東京都の発明会館ホールにて「構造物メンテナンス研究センター設立記念講演会」を開催しました。本講演会では、2008年4月の構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)の設立を記念し、国内外から4名の講師を招き、社会資本の維持管理の現状や課題について講演いただきました。
 本講演会では、主催者挨拶の後に、4名の講師による講演、CAESARの活動方針の紹介を行いました。
 講演では、まず、元本州四国連絡橋公団総裁の萩原浩氏に基調講演を行っていただきました。本四架橋をはじめとする豊富な経験談をもとに、規準類に依存しすぎず現場で対象を良く見ることの大切さを強調され、来場者からは、特に若い技術者に聴いて欲しかった、との感想が多く寄せられました。ドイツ連邦道路研究所のPeter Haardt氏からは、ドイツでも橋梁の維持管理が重要な課題として認識されており、非破壊検査技術の開発を重点的に進めていることを紹介いただきました。「道路橋の予防保全に向けた有識者会議」の座長を務められた田ア忠行氏からは、有識者会議でまとめられた提言を具体化するために必要な方策について説明いただきました。東日本旅客鉄道株式会社の石橋忠良氏からは、豊富な現場指導経験をもとに、社会資本の効率的な維持管理体制を実現するにあたっての課題を講演いただきました。
 講演会当日は、猛暑の中にもかかわらず約300名の来場者を迎え、立ち見の聴講者が出るなど、盛況の内に講演会を終了することができました。また、会場で記入いただいたアンケートでは、今後のCAESARの活動に強い期待を寄せるご意見を数多くいただきました。CAESARは、橋梁の維持管理に関する研究や現場への技術指導、専門家の育成等を通じて、安全かつ効率的な社会資本整備に貢献できるよう精力的に活動を展開していく予定です。今後も読者の皆様の温かいご支援をいただければ幸いです。なお、本講演会の概要はホームページでも公開する予定です。



問い合わせ先 : CAESAR

土木研究所施設の貸付

     

貸付手続きのフロー図

三次元大型振動台

輪荷重走行試験機

凍結路面室内走行試験機

 土木研究所は、独立行政法人となった平成13年度に貸付規定を制定して、「外部機関が当所の施設・設備を使用できる環境」して、業務に支障のない範囲で土木研究所が保有する施設・設備を民間を含む外部の研究機関等が利用することができるよう、施設・設備の効率的運用を図ってきました。
 今年で貸出をはじめて8年目になります。この間に多くの外部機関利用がありましたので、その概況を紹介します。
 延べ貸出件数は、361件(H20年3月末現在)です。利用目的の多くは土木技術関係の実験ですが、建築関係・造船関係・原子力関係・車両関係・電気機器関係など、異分野の実験に使用されるケースも少なくありません。最も特徴的な貸出は、三次元大型振動台貸出で、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の再現実験ができる加振能力があり施設規模が大きいことなどから、借受け希望が他の施設より群を抜いて多いものとなっています。その他、輪荷重走行試験機・凍結路面室内走行試験機・30MN大型構造部材万能試験機など、大規模で国内に類似品が希少なものがあり、それぞれ外部機関が利用しました。また、大規模施設だけでなく、万能試験機のような汎用型試験機や埋設管実験用圧力装置のように小型の特殊試験機及び実験フィールドの利用など、多種の施設利用がありました。こうした中で、遠心力載荷試験装置・輪荷重走行試験機及び三次元大型振動台のように、当所試験での稼働率が高く、借受け要望を十分に満たすことができない場合もありますが、要望(実験内容・時期・期間など)を伺って、調整を図っています。
 土木研究所は、今後も利用環境の向上に努めながら施設貸出を展開しています。お気楽にお問い合わせ下さい。

(参考) 土木研究所ホームページのトップページ左側(寒地土木研究所ホームページのトップページ上方)「施設貸付」から、貸付規程や動画を含む保有実験施設の例などを見ることができます。



(問い合わせ先)
・つくば中央研究所 業務課 029-879-6754
・ICHARM      同上
・CAESAR      同上
・寒地土木研究所  企画室 011-841-1636

   

平成20年度土木研究所防災訓練を実施しました


防災訓練のイメージ図

札幌と連携した災害対策本部の模様

施設点検の様子

 9月1日(月)に寒地土木研究所で、9月2日(火)につくば中央研究所等で防災訓練が実施されました。この防災訓練は、指定公共機関として災害対策基本法や土木研究所防災業務計画などに基づき、その実施が義務付けられているものです。災害が発生した際は、連絡網により伝達された情報に基づき、土木研究所職員が参集し、災害等に対応します。

(1)寒地土木研究所での防災訓練
 寒地土木研究所での訓練は、午前9:00に北海道空知支庁南部を震源とする強い地震が発生し、震源近傍で震度6強、札幌市豊平区で震度5強の揺れを観測したという想定のもと行われました。訓練は北海道開発局と合同で実施し、訓練の主な項目は、1)情報伝達訓練、2)災害対策支援本部設置・運営訓練、3)北海道開発局からの職員派遣要請訓練、4)構外施設防災訓練等です。
 情報伝達訓練においては、北海道開発局からの震災情報の受信、震災情報や職員への行動指示に関する所内の連絡、報道機関情報等の収集などを行いました。
 災害対策本部設置・運営訓練においては、北海道開発局長からの支援要請を受けて、災害対策支援本部の設置を行い、被災状況や応急対策状況について報告を行うとともに、ヘリコプターからの被災情報の受信等を行いました。
 北海道開発局からの職員派遣要請訓練においては、北海道開発局からの派遣要請を受け、災害対策支援本部会議において職員の派遣を決定し、派遣準備を行うまでの一連の流れについての訓練を行いました。
 構外施設防災訓練においては、資源循環プラントおよび水素プラントが震度5以上の地震を受けたことを想定し、施設や場内の安全点検を行うとともに、災害対策本部への情報伝達訓練を行いました。

(2)つくば中央研究所等での防災訓練
 つくば中央研究所等での訓練は、午前7:00に茨城県南部を震源とする強い地震が発生し、つくば市で震度6強、東京都心、妙高市、各務原市で震度6弱の揺れを観測したという想定のもと行われました。訓練の主な内容は、1)情報伝達訓練、2)参集訓練、3)施設点検訓練、4)災害対策本部の設置・運営訓練等です。
 情報伝達訓練においては、全職員を対象に災害連絡網(電話連絡)に従い職員の参集を呼びかけるとともに、各課長、各上席研究員以上を対象に、電子メールを使った情報伝達を実施しました。
 参集訓練においては、訓練参加者が土木研究所に参集した時刻、被災状況等を参集者名簿に記入することで職員やその家族の安否等について確認を行いました。
 施設点検訓練においては、施設点検訓練計画に基づき、参集した職員による庁舎および実験棟の緊急点検訓練を行いました。
 対策本部設置運営訓練においては、つくば市にある土木研究所と札幌市にある寒地土木研究所の両庁舎において対策本部を設置し、テレビ会議を用いて実施しました。災害時における報告事項(災害状況、施設点検状況、備蓄物の状況等)について報告を行い、国土技術政策総合研究所との情報のやりとりを行いました。つくばと札幌でも情報共有・連携に関する訓練を実施しました。その他、岩手・宮城内陸地震(平成20年6月)での反省点や今後の対応策等についても話し合いました。

 これまで土木研究所では、2004年新潟県中越地震、2007年能登半島地震、2008年岩手・宮城内陸地震など頻発する大規模地震に対し、道路、河川、砂防などの各分野の専門家を被災地へ派遣し、応急対策や本復旧に関する技術的支援を行うなど、被災地の復興に大きく貢献してきました。
 今後数十年の間での発生が懸念されている東海地震、東南海・南海地震などの大規模地震に対しても、適切な対応を実施いたします。



(問い合わせ先:企画部研究企画課(つくば)
           寒地土木研究所企画室(札幌)

   

韓国地質資源研究院にて技術発表・現地視察報告


モデルの概念図

土砂災害が多発した現場

災害発生現場で食事

 韓国は近年、地球規模の気候変動の影響か、規模の大きい台風の上陸などによる豪雨災害が続いているようです。そのため、土砂災害に関する関心も急に高くなっているようです。そこで、私は8月2日〜4日に、2005年に豪雨による土砂災害が多発した地域を訪ねたのち、大田(テジョン)にある韓国地質資源研究院において、これまで実施してきた土砂災害の発生予測に関する技術をセミナーで紹介し、共同研究の可能性について相談してきました。セミナーでは、気候変動と土砂災害に関する質問や意見が多く寄せられ、気候変動の影響を理解することが世界共通の課題になりつつあることを痛感しました。
 また、土砂災害の現場の印象ですが、日本と気候的にも近く、植生も似ており、山の雰囲気は日本とぱっと見あまり変わりませんでした。特に,地質も同じ広島県の山地にいるような錯覚に陥りそうになりました。ただ、狭い範囲でとても多い数の山崩れがおきていて、台風の襲来も日本より少なく、地質的に安定した大陸に位置する韓国では山崩れが少ないと聞いていたので少し驚きました。
 ところで,私は約10年ぶりに、韓国を訪れたのですが、韓国の高速道路網の整備は目を見張るものがありました。ただ、週末に訪ねたこともあり、日本と同じように海水浴や山へ行楽に行く人が多く、高速道路はどこもすごい渋滞でした。また、運転のマナーも格段に良くなっていました。今や日本よりマナーは良いように思いました。また、災害発生現場の山中での昼食は、チャンポンによく似た感じでした。日本から韓国へ行ったのか、チャンポンが韓国から来たのか、それぞれ独自のものなのか分かりませんでしたが、日韓の「近さ」を感じました。



問い合わせ先:火山・土石流チーム

   

JICA技術協力プロジェクト
 〜「シリア国全国下水道人材育成プロジェクト」の事前調査の報告〜

  

街中の様子(ダマスカス旧市街)

ダマスカス市のアドラ下水処理場の最終沈殿池と
越流する下水処理水

清掃員が閉塞物除去のため下水管上部に
穴を開ける様子

 独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)は、平成21年度より技術協力プロジェクト「シリア国全国下水道人材育成プロジェクト(以下、人材育成プロジェクト)」の実施を予定しています。技術協力プロジェクトとは、現場の状況に応じたオーダーメイドの協力計画を相手国と共同で作りあげ、日本と途上国の知識・経験・技術を活かして、一定の期間内でともに問題を解決していく取り組みです(http://www.jica.
go.jp/infosite/schemes/ techpro/index.html (2008/08/28時点))。JICAでは、その事前調査を行うこととし、土木研究所のリサイクルチームの桜井健介研究員が調査団員として平成20年8月2日から13日まで、シリア国へ派遣されました。
 外務省「政府開発援助(ODA)国別データブック2007」によると、シリア国は中東和平実現の鍵を握る重要な国であること、及び日本がシリア国と良好な関係を維持していることを踏まえ、中東和平プロセス支援の一環として地域の平和と安定に向けたシリア国の積極的な参加を促すため、日本はシリア国に対するODAを実施してきているとのことです。また、シリア国が国内安定化、市場経済化を志向する現在の改革路線をさらに推進していくためには、同国に対して国民生活の向上に資する援助を実施していくことが重要となっているとのことです(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/
07databook/pdfs/04-09.pdf(2008/08/28時点))。
 JICAの「シリア・アラブ共和国全国下水道整備計画策定調査、2008」によると、シリア国は、第10次5ヵ年計画(2006年〜2010年)において、下水管渠整備率81%、下水処理率46%を目標としています。下水道施設の整備は進みつつありますが、下水道施設の維持管理を行う人材が十分でなく、その育成が急務となっています。
 事前調査団は、シリア国住宅建設省や下水道施設を維持管理する下水道公社などからシリア国の下水道の現況について聴取し、また、下水処理場の運転や下水管渠の清掃の様子などの現地視察を行いました。現地視察では、閉塞した下水管の閉塞物を除去するために、下水管が現れるまでショベルカーで道路を掘削し、下水管の上部に開けた穴から、ホースで給水し、閉塞物を押し流すなどの荒っぽい清掃の様子も見られました。事前調査団は、既存の報告や今回の事前調査結果を踏まえシリア国住宅建設省等と協議し、シリア国住宅建設省が下水道の関係者への研修を企画・実施し、JICAが日本人専門家を派遣し支援していくこととする人材育成プロジェクト実施の覚書を締結しました。



問い合わせ先:リサイクルチーム

   

自然共生研究センター「夏休み親子教室」〜のぞいてみよう!川の中 ワンド探検隊〜


川とワンドの環境の違いを調べました

実験河川のワンドに生息する二枚貝を採りました

洪水で川とワンドがつながる様子を観察しました

ワンドで調査をしている研究員にも登場してもらいました

 自然共生研究センターにおいて、地域住民を対象とした「夏休み親子教室」を8月23日(土)に開催し、小学生と保護者ら約50名が参加しました。
 夏休み親子教室は、同センターで得られた研究成果の地元への還元と環境教育活動の技術向上を目的として恒例行事として毎年行っています。今回のテーマは「のぞいてみよう!川の中〜ワンド探検隊〜」です。ワンドにすむ生き物たちは洪水をうまく利用しながら、お互いに支え合って生きています。今回は、同センターの実験河川にある「ワンド」を利用して、ワンドの環境調査と生き物探しを行い、ワンドと生き物の関係について学びました。また、人工洪水を起こし川とワンドがつながる様子を観察しました。 
 まず、大きな航空写真を使ってワンドが下流にできやすいということを学びました。その後、同センターの実験河川にあるワンドへ行き、ワンドの深さや水の流れを川と比べ、川とワンドで水の色や河床の様子が違うということを理解しました。また、ワンドと川でそれぞれ生き物探しを行い、捕れた生き物を観察して、川とワンドにいる生き物の違いを学びました。
 最後に、人工洪水を起こし、ワンドと川がつながる様子を観察しました。洪水によって水が増加し、徐々にワンドと川が繋がっていく様子を子どもたちは興味深く観察していました。
 ワンド探検隊を終えた後、パネルを使って川とワンドの違いをおさらいしました。また、タナゴは二枚貝に卵を産み、二枚貝はヨシノボリなどの魚のひれに幼生を付着させ他の場所へ移動するということを説明し、お互いになくてはならない存在であること、生き物たちがつながっていることを学びました。また、研究者の方々にふだん行っている調査のお話を聞きました。最後にワンド探検隊を元気に参加した証に「修了証」を手渡しました。
 今回のワンド探検隊では、ふだん研究者が行っている環境調査や生物採捕を体験することができ、日ごろ意識することのない水の中の生き物たちに目を向けることができたと思います。



問い合わせ先:自然共生研究センター

   

修士課程『防災政策プログラム 水災害リスクマネジメントコース』実施報告


防災政策プログラム学生 集合写真
(平成20年9月17日)

「洪水ハザードマップ作成」コースとの合同授業

磐井川河道閉塞現場見学(岩手県)

政策研究大学院大学で学位を授与する
竹内センター長

 ICHARMは、平成19年9月30日から平成20年9月19日まで約1年間、(独)国際協力機構(JICA)および政策研究大学大学院大学(GRIPS)と連携し、標記修士課程コースを実施しました。
 当初11名の学生でスタートしましたが、最終的に、学生10人(中国3名、バングラデシュ2名、ネパール1名、インド1名、日本3名)全員が無事に『修士(防災政策)』の学位を授与され、めでたく本コースの第1期生として本国へ帰国しました。
 本コースではまずコース前半で「防災政策」・「災害リスクマネジメント」・「水文学」・「水理学」などの基礎理論の講義・演習や、「統合洪水リスクマネジメント」・「ハザードマップ作成及び避難計画」・「ダム工学」・「砂防工学」・「国際協力」などの実務的な講義・演習を実施しました。また、コース後半では各学生がそれぞれの国での水災害に関する課題解決に資するための修士論文作成に十分に取り組めるよう配慮するとともに、日本の治水対策についてより深く学ぶために、各地の現地見学を実施しました。
 本研修を通じて、学生の知識が豊富になるばかりでなく、ICHARMにとっても学生との関係が緊密になり、学生を通じたこのような国際的なネットワーク形成は、今後のICHARMの活動にも大いに役立つものと思われます。
 本コースの実施報告の詳細については、ICHARMホームページ(http://www.icharm.pwri.go.jp)をご覧下さい。



問い合わせ先:ICHARM

   

河畔林の管理と流木に関する2008現地ワークショップ

      

河畔林の様子

現地視察の様子

「さらら」で開催された意見交換の様子

 平成20年9月24日に石狩川上流(旭川市)で『河畔林の管理と流木に関する2008現地ワークショップ』を開催しました。ワークショップには北海道工業大学岡村俊邦教授、北海道林業試験場の長坂有流域保全科長をはじめ、北海道開発局、北海道の職員や大学、民間コンサルタントなど産学官から48名が参加し、積極的な議論がなされました。

 河畔林は、多様な水辺の生態系を保全する上で重要な役割を担う一方で、出水の際に河畔林から流木が発生するのではないかと問題視されています。また、ここ数年の洪水災害事例の研究により、新しい知見が得られており、河畔林のあるべき姿の研究や、再生事例も増えてきています。
 このワークショップは、ひとつには「河畔林の維持管理として、洪水疎通能力、流木化による災害、樹木の進入と成長過程、生態系として期待する姿、現実的な維持管理方法などの問題について総合的に検討する」、また「平成4年の鵡川沙流川災害以来、北海道では洪水時の河畔林に関する研究が進んでおり、それを全国的に活かす」、さらに「河川行政と環境保全など、連携をとるべき分野を密接に結びつけ、安全で美しい河川流域を目指す」といった河畔林の管理と流木問題などを議論することを目的に開催しています。

 今回のワークショップでは石狩川上流を中心に、元々あった河畔林の姿や河畔林再生の試み、河畔林管理の難しさなどの現地視察を行いました。

 現地を視察し、石狩川上流でさまざまな河畔林の状況を見た上で、永山新川管理センター「さらら」で行われた河畔林のあるべき姿についての意見交換では、いろいろな観点からの意見が出されました。それぞれの流域や場に応じた河畔林のありかたを考えていく必要性や治水・利水も含めた維持管理について、理解と合意形成の必要性などについて活発な意見がだされました。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 水環境保全チーム
                       道北支所

   

JICAミャンマー・サイクロン被害復興プロジェクトへの技術指導について


軟弱地盤対策工事の見学の様子

左がDJMの施工機械

指導した技術のイメージ図

 平成20年6月26日に、JICAのミャンマー・サイクロン被害の復興支援担当者が寒地土木研究所を訪れ、北海道で多い泥炭地盤上の道路建設に関するノウハウについて寒地地盤チームから技術指導を受けたほか、札幌近郊の工事現場の見学をしました。
 ミャンマーでは、5月初旬にサイクロン「Nargis」がイラワジデルタ地帯を直撃し、多くの人命、施設、インフラを奪いました。JICAはその復興に協力してほしいと、ミャンマー政府建設省公共事業公社総裁から要請されたところです。内容的には、デルタの湿地帯における道路建設技術についてです。2qほどの道路を実証事業として施工することとして、そのための技術指導を要請されたそうです。そこでJICAがコンサルタントなどから話を聞いたところ、「湿地帯での道路建設は難しく、たとえば、北海道の泥炭地帯での道路施工などを勉強した方がよかろう」との示唆をもとに、北海道開発局を通じて寒地地盤チームに相談がありました。
 当日はまず、JICA経済基盤開発部の担当審議役より、ミャンマーのサイクロン被害と復旧支援要請および現時点でのJICAの復旧支援(特に道路整備)計画について説明がありました。道路整備上の主な問題点として、湿地帯に道路を建設するノウハウがない、雨期(6月〜10月)には工事が出来ない、詳しい現地情報が乏しい、とのことでした。
 それに対し当方より、コストの比較的低い工法(丸太敷設、トレンチ、サンドマット、敷設材、パイルネットなど)を中心に説明し、現地の植物を敷設する方法、サンドマット・素堀側溝の重要性などをアドバイスしました。さらに、雨期に盛土材が流出する恐れがあるため、土のうなどで路肩を保護する必要性についても助言しました。以上のアドバイスに対して、JICA側から「現地の状況に適している可能性が高いので、今後の参考にしたい」とのコメントがありました。
 その後、JICA一行は寒地地盤チームとともに札幌開発建設部が建設を進めている「道央圏連絡道路建設現場」において、泥炭地盤対策工であるDJM施工状況、素堀側溝、真空圧密などの実施箇所を見学しました。現場では、湿地帯での道路建設であることと当地の気象条件を考えると、水の処理が決め手になることを議論しました。最後に、引き続き協力することを約束して終了しました。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地地盤チーム

寒地土木研究所講演会開催のお知らせ


昨年の講演会の様子

道新ホールの位置図

安田喜憲教授のご経歴

 平成20年12月5日(金)、札幌市道新ホールにおいて、第22回寒地土木研究所講演会を開催します。
 本講演会は、積雪寒冷地に関連する土木技術の研究成果等の話題についてより多くの方々にご紹介するために昭和61年に始まり、今回で22回を数えるものです。当初200名程度であった来場者数も、近年では例年500名以上の方々にお越しいただける規模となり、研究成果普及活動として着実に定着して参りました。
 今回の講演会では、湖底の地層に含まれている花粉等の分析によって過去の地球環境を探る「環境考古学」を創始された国際日本文化研究センター安田喜憲教授をお招きし、「環境考古学の観点から見た北海道の将来(仮題)」との演題で、ご講演をいただくとともに、当所の研究成果から、多くの皆様に興味を持って頂けるテーマについて内部講師がご紹介いたします。
 ご来場をお待ちしています。

日  時:平成20年12月5日(金)
      13時10分開演
      (開場:12時10分)
場  所:道新ホール
      札幌市中央区大通西3丁目

※入場無料です。
※最新の開催情報については下記にお問い合わせください。
問い合わせ先:(独)土木研究所寒地土木研究所 企画室
                   第3グループ 011-841-1636


【第22回寒地土木研究所講演会  講演内容】
 特別講演 :
 「環境考古学の観点から見た北海道の将来(仮題)」
 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国際日本文化研究センター 安田喜憲 教授

一般講演 :
1.「生き物に優しいみなとを目指して
     〜磯焼け対策・藻場造成を中心に〜」
   寒地土木研究所水産土木チーム 山本潤上席研究員
2.「地質と土木の話
     〜土木工事における地質屋の役割(あるいは愚痴)〜」
   寒地土木研究所防災地質チーム 伊東佳彦上席研究員 
3.「公共事業由来バイオマスのエネルギー利用
    〜来るべき国内排出量取扱制度への対応〜」
   つくば中央研究所リサイクルチーム 岡本誠一郎上席研究員


土木研究所講演会開催のお知らせ

 平成20年12月9日(火)、日本消防会館(ニッショウホール)において、平成20年度土木研究所講演会を開催します。
 当研究所で実施している調査研究の成果や最近の土木技術に関する話題・動向について、広く一般の方々に紹介するために、年1回東京において開催しております。
 今回の講演会では、一般講演の他に特別講演を2つ用意します。1つ目は、韓国建設技術研究院(KICT)で河川再生事業に関する研究に携わっているイー・サンミ(李 参熙)博士から、韓国における都市河川再生事業についての取組等を紹介していただきます。イー・サンミ博士の活躍については、今年8月にWebマガジン第6号土研ニュースで紹介しました。2つ目は、防災情報機構NPO法人会長を務める伊藤和明氏から、地震による災害や防災について講演していただきます。
 皆さまのご来場をお待ちしています。

日  時 : 平成20年12月9日(火)
       10時00分開演
       (開場:9時30分)
場  所 : 日本消防会館(ニッショウホール)
       東京都港区虎ノ門2−9−16

※入場無料です。
詳細につきましては、11月上旬、ホームページにてご案内します。